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2013.11.09
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カテゴリ: 環境問題
ライチョウ:南アルプス30年間で半減 生息環境悪化が深刻
山梨、長野、静岡県境の南アルプス(赤石山脈)に生息する国の特別天然記念物・ライチョウが、最近30年間で半数以下に減り、極めて危機的状況にあることが、信州大の中村浩志・名誉教授(鳥類生態学)の調査で分かった。3日から山梨県南アルプス市で開かれている第14回ライチョウ会議で発表した。
ライチョウは、国内では南北アルプスなど一部の高山帯に生息。全国の生息数は約2000羽とされ、環境省は昨年、近い将来野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧1B類」に分類を引き上げた。
中村名誉教授によると、南アルプス北部の北岳〜間ノ岳で1980年代に行った調査で63あったライチョウの縄張りは今年6月の調査で9まで減少。80年代に南アルプス全体で約700羽と推計されていた生息数は約300羽まで落ち込んだとみられる。
原因は、ゴミの増加や環境破壊など人為的な要因もあり、テンやオコジョなど天敵となる肉食動物が増えているためという。また、南アルプスでは近年、シカやサルが標高3000メートル付近の高山帯にも侵出してきており、高山植物被害も深刻化。ライチョウの生息環境は悪化しているという。
中村名誉教授は「南アルプスのライチョウは近い将来、姿を消す可能性が高い。ライチョウの天敵やシカなどの駆除に官民挙げて取り組まなければならない」と話した。

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日本は、世界でも有数の、植生の豊かな土地です。雪をまとった高山から亜熱帯まで、多様な植物が生えています(降水量が多いので、乾燥地帯の植生はありませんが)。
ずっと 以前に取り上げたことがあります が、日本は、世界的に見て、特に生物多様性の豊かな地域(生物多様性ホットスポット)のひとつとされています。

全世界には約27万種の維管束植物(種子植物とシダ植物)があると言われていますが、このうち、日本には約6000種が分布しています。全世界の陸地面積に占める日本の割合はわずか0.25%に過ぎませんが、植物の種類数では2%になる。面積比の8倍の多様性があるわけです。しかも、固有種が非常に多い。本州より若干広い程度のイギリス・ブリテン島に自生する植物は1500種だそうですから、日本の自然がいかに多様性に富むか、よく分かります。
環境史的に見て、日本の生物多様性が豊富である最大の理由は、南北に細長い土地で、前述のとおり気温が北と南で大きく違うこと、どこに行っても降水量が豊富であることでしょう。

加えて、氷河時代といわれる第四紀(約200万年前以降の時代)も、日本は氷河に覆われることがなかったことが決定的な要因になったと思われます。同じ温帯に属していて、日本より何倍も広いヨーロッパは、約2万年前の最終氷期(それ以前の氷期もおそらく同様)には、北はスカンジナビア氷床がイギリス全土、北ドイツ、東欧一帯あたりまでを覆い、南はアルプス山脈がやはり氷床となって周囲一帯を氷で閉ざしていました。氷に閉ざされなかった地域も、大半がツンドラとなって、暖地性の植物は絶滅するしかなかった。
一方、日本では、氷期には日本アルプスや日高山脈にいくつかの小さな氷河はあったものの、国土の大半が氷に閉ざされることもなく、北海道の北半分を除けば、平地でもツンドラになるようなこともなかったため、暖地性の植物が生き残ることができた、この差が大きいと思われます。

その日本の中で、高山帯は、面積でいえばそう広いものではありません。1994年に環境庁(現環境省)が行った第4回自然環境保全基礎調査によれば、日本の高山帯植生は、調査対象368,610メッシュのうち、わずかに1158メッシュ(1メッシュは1キロ四方の正方形なので、1158平方キロということ)に過ぎません。日本の総面積の、たった0.3%です。

生物多様性に富む日本ですが、歴史時代以降現代に至るまで、平野部や里山の自然は、かなり破壊されてきています。前述の調査によれば、自然植生が日本の総面積に占める割合は2割に満たないのです。二次植生(人が一度伐採した後の、いわゆる里山などの植生)が27%で、あわせてやっと半分弱になります。しかし、高山帯に限定すれば、自然植生の占める割合はほぼ100%です。高山帯が奥山の奥山の、そのまた奥山に位置するため、開発の手が伸びにくかったし、伐採もされなかった(そもそも森林限界を超えているので、高木がない)ことが要因でしょう。
そしてもうひとつ、大きな要因がありました。それは(高山帯だけに限ったことではありませんが)、日本は牧畜文化の国ではなかった、ということです。現在も、歴史的にも、家畜を野山に放って放牧するという風習は日本にはない。
ヨーロッパでは牛やヤギなどを放牧する文化があります。「アルプスの少女ハイジ」などを見れば一目瞭然ですが、アルプスの高山帯などは格好の放牧地だったわけです。
人間が飼っている家畜は、自然界での大型哺乳類の許容限界を超える数ですから、それを野山に放てば、たちどころに植生は丸裸にされてしまいます。特に高山帯はそうです。だから、ヨーロッパアルプスの高山植生は一般にあまり豊富ではないのです。

さて、そんな高山帯の代表的な鳥が、記事にあるライチョウです。その数が激減している、と言うのです。
以前は、日本のライチョウ生息数は、北アルプスに2000羽、南アルプス700羽、乗鞍岳と木曽御嶽山に各100羽、新潟の頸城山塊の焼山と火打山に数十羽、合計3000羽と言われていました。しかし、現在は南アルプスで300羽だそうです。半減以下です。
南アルプスに限らず、北アルプスでも、同様の傾向であることが報じられています。

世紀末、北アのライチョウ激減危機 温暖化で生息域1%以下縮小の可能性
温暖化による高山帯の植生の変化で北アルプスのライチョウの生息域が今後大幅に狭まり、2081~2100年には現在の1%以下に縮小する可能性があるとの研究を、県環境保全研究所や森林総合研究所などが1日までに共同でまとめた。営巣場所となるハイマツや餌場の雪田群落が減ることが主な要因。
(中略)
年平均気温が1・5~4・5度上昇する24パターンで分析した。このうち、ほぼ中央値を用いたケースでは、ハイマツの面積が大幅に減り、雪田は9割減少、積雪の少ない稜線(りょうせん)付近の「風衝地」は6割近く減ると予測。ライチョウの生息域は現在の1%以下しか残らないと推定した。
堀田研究員は「結果を自治体や国と共有し、保護増殖に生かしたい」と強調。中村浩志・信州大名誉教授(鳥類生態学)は「温暖化が植生に与える影響を詳しく予測できれば、優先して対策を取る場所を考えられる」としている。
国特別天然記念物のライチョウは、国内では本州中部の標高約2400メートル以上の高山帯だけに生息し、世界のライチョウ生息域の南限とされる。1980年代には約3千羽いたが、中村名誉教授によると、北ア一帯の現在の生息数は1千羽強と推定されている。

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北アルプス一帯の現在の生息数は1000羽強、ということは、以前の推計値2000羽から、やはり半減です。これらを合計すると、現在の日本のライチョウ生息数は、1500羽前後ということになりそうです。
中でもとりわけ事態が深刻なのは、おそらく南アルプスなのだろうと思います。

大きな要因は、シカの高山帯への進出だろうと思われます。もともと、ニホンジカは高山帯を住処とする動物ではありません。(カモシカは元々高山帯に住んでいましたが)しかし、この十数年、シカが急増したのに伴い、もともと住んでいなかった高山帯にまで、シカが進出するようになって来ました。


高山帯の植生は、日本全国でたった1100平方キロあまりしかないことを思い出してください。しかも、その相当部分は、ライチョウのいない北海道にありますから、ライチョウのすみかである中部山岳地帯の高山帯の面積は、その半分くらいでしょうか。食い荒らされ始めてしまえば、あっという間に食い尽くされてしまうくらいの広さしかないのです。

目下のところ、シカの食害が深刻なのは、高山帯に限れば主に南アルプスです。しかし、北海道でもシカ(エゾジカ)が増えすぎており、その食害が深刻化しています。北アルプスでも、おそらく時間の問題でしょう。
シカに食い荒らされたお花畑は、シカが食べられないマルハダケブキだけが残る状態になるようです。そういえば、バイケイソウ・コバイケイソウも有毒なのでシカは食べられないはずですが。

では何故シカがそんなに増えたのか。理由はおそらく複合的でしょう。直接の要因はハンターの減少でシカを狩る人が少なくなったことと言われますが、果たしてどうでしょうか。もともとハンターの中でも、シカ狩りはかなり難易度が高いはずです。私は、何しろ元日本野鳥の会会員ですから、狩猟には興味がなく、詳しいことは知りませんが、散弾銃でシカは撃てるんでしょうか。基本はライフル銃だと思うのですが。そして、ライフル銃は、散弾銃での狩猟歴が10年以上なければ所有許可が出ません。だから、狩猟人口の大半は鳥撃ちで、シカ狩りのハンターなんてもともとそう多くはなかったのではなでしょうか。
ま、もちろんハンターの減少もシカの増加の一因ではあるのでしょうが、だから、一因以上のものではないという気がします。もっさと古い歴史をたどると、江戸時代まで日本に分布していたオオカミが明治時代に絶滅したことが、シカ増加の大きな要因のひとつかなと思います。もちろん、それも要因のひとつです。ここ2~3年は別にして、この20年くらいずっと暖冬傾向が続いているため、冬場に死ぬシカの数が減った、ということも言われています。それも要因のひとつでしょう。






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最終更新日  2013.11.09 12:21:18
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