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2014.09.24
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テーマ: 鉄道(26676)
朝日、毎日はリニアもお嫌いか 論説委員・五十嵐徹

いまや東阪間は「のぞみ」なら2時間半を切る。今秋にはいよいよリニア中央新幹線が着工の予定だ。完成すれば大阪まではわずか1時間強となる。
(中略)
だが、着想から半世紀、鉄道屋ならずとも、胸がときめく夢のプロジェクトの実現だというのに、着工が近づくにつれ、新聞各紙の論調には懸念と不安ばかりが目につく。
たとえば朝日。ことしだけでも3回はリニアを社説で取り上げているが、「早めにブレーキを」(5月5日付)、「発車前に対話深めよ」(6月26日付)とプロジェクト自体に不信感を隠さない。7月28日付では「これが最良の選択か」の見出しで「そもそも必要なのか」とまで述べている。
毎日も5月12日付で「このまま突っ走るのか」と書き、今月6日付では「本当に進めて大丈夫か」と着工を牽制している。

◆「格差拡大」は短絡では
掲げる理由は大きく2つ。1つは環境への懸念だ。
可能な限り直線コースを走るため、都心部でリニアは深さ40メートル以上の大深度地下を進む。南アルプスでは過去に例のない長大トンネルの建設にも挑む。名古屋までの区間286キロの実に86%がトンネルだ。残土だけでも東京ドーム約50杯分が発生する見込みである。
国の環境影響評価を経たとはいえ、前人未到の工事には予想外の事態も起こりうる。メディアとして疑問点は指摘し、万全を期すよう求めるのは当然だろう。
気になるのは、もう1つの指摘である。
朝日は「人口が急速な減少局面」に入り、「東京一極集中と地方の疲弊が問題になっているのに、3大都市圏の合体化が最適の処方箋なのか」と疑う。いくつかの地方紙でも似たような論調が見られた。心配は理解できるが、やや短絡した議論とならないか。リニアの建設と地方の疲弊を、単純に因果関係で結ぶだけでは問題は解決しまい。
公共事業としての新幹線整備はいいが、純民間事業として行われるリニア建設は見直せという理屈も分かりにくい。求められるのは、リニア技術を日本経済の再生にどう生かすかの知恵だ。国としての成長力を失えば、地方の底上げもない。

◆悲観から夢は描けない
『八十日間世界一周』でヴェルヌは、開国間もない横浜の風景も描き、『海底二万里』ではノーチラス号の旅を日本沖から始めている。だが、当の本人は、一度たりとも日本に立ち寄った形跡はない。
それでも、描かれた世界がリアリティーをもって迫ってくるのは、科学的知識の裏付けに加え、常に未来を肯定的に捉える目があるからに違いない。
訳者の一人である江口清も「ヴェルヌは現在では架空の絵そらごとと見えることも、やがて未来にあっては実現しうるという決意の元に書いた」と解説している。過度の楽観は禁物だが、悲観ばかりが先立つようでは夢は描けない。
来年は、そのヴェルヌが77歳で世を去って110年。泉下の冒険小説家にリニアの未来はどう映っていることだろう。

---

リニア中央新幹線については、当ブログでも何回か取り上げたことがあります。「朝日、毎日はリニアもお嫌いか」だそうですが、「嫌いで何が悪いの?」と言いたくなります。
私の基本的な考えてしては、公費が一切使われず、すべてJR東海が費用を負担して建設するものなら、全面的に反対とは言わないけれど、少なくとも賛成したり手放しで喜んだりできるような計画ではない、ということです。
鉄道ファンの一人としては、全行程の大半がトンネルで、わずかな地表部分もコンクリートの壁で覆われて、車窓から何も見えないリニアモーターカーには、乗ってみたいという魅力をまったく感じません。

環境面の懸念は私も感じます。南アルプスの下をくりぬくトンネルは、南アルプスの地下水系その他環境への影響が懸念されます。
また、リニアモーターカーは消費電力が鉄輪式の鉄道に比べてはるかに多い。環境という意味では、この点も問題になます。

「東京一極集中と地方の疲弊が問題になっているのに、3大都市圏の合体化が最適の処方箋なのか」という視点は、私はちょっと思い浮かばなかったれど、採算性への疑問は強く抱いています。

新幹線は、建設当時エジプトのピラミッド、万里の長城、戦艦大和と並んで無用の長物になると、「世界の4バカ」などと非難された時代がありました。けれども、蓋を開けたら大成功で、国内長距離交通の核となりました。
だからリニアモーターカーも、ということなのでしょうが、ことはそう単純でもないのです。東海道新幹線は、他の交通手段からシェアを大きく奪ったわけでは、実はありません。当時飛行機など高嶺の花だったし、東名高速が未開通でしたから、東京大阪間の高速バスはまだなく(名神高速バスが東海道新幹線と同じ1964年開業)、自家用車での長距離移動の自動車の耐久性や道路事情などから、一般的なものではありませんでした。しかし、東海道新幹線の開業は高度経済成長期にあたります。東京-大阪間(に限らず)の交通量は、どんどん増えている時代だった。だから、シェアを奪わなくても、交通量のパイがどんどん大きくなったので、大成功を収めたわけです※。



しかし、現在は違います。経済のパイがこれからどんどん大きくなると単純に信じられるような時代ではなく、東京-大阪間の交通量も今より更に、どんどん増える、ということは想像し難い。
つまり、東京-大阪間の移動というパイの大きさは変わらず、その中でどれだけのシェアが取れるか、という話に過ぎないのです。
現状、東京-大阪間の旅客移動に占める飛行機のシェアは少ない。新幹線が圧倒的に優勢です。したがってリニアモーターカーが開通しても、JR東海の運行する東海道新幹線から、同じJR東海が運行するリニアモーターカーへの客が移動するだけで、飛行機やバス、乗用車からシェアを奪うことは困難(奪えるだけのパイが、そもそもない)ですから、収入が大幅に増える、ということは考えにくいのです。
だとすると、JR東海にとって東海道新幹線とリニアモーターカーの両方を維持し続けるのは面倒でしょう。新幹線なんかやめてしまえ、とすぐに公言はしないでしょうが、少しずつ東海道新幹線を斬り捨てる方向に動いていくんだろうなという危惧は抱きます。

更にいえば、新幹線が開通する直前、在来線の特急「こだま」は東京-大阪間を6時間50分で結んでいました。それが新幹線の開通で一挙に3時間10分に短縮され、半分以下になりました。この差は大きい。新幹線も「ひかり」から「のぞみ」へとだんだんスピードアップし、今では2時間20分です。
その2時間20分が1時間に短縮されることが、それほど大きいか、というと、いささか疑問の余地ありと感じます。少なくとも、在来線と新幹線の差ほどの決定的な時間短縮とは思えないのです。

更に、日本はリニアモーターカーの技術を米国に無償供与すると言われますが、日本以外の国でリニアモーターカーを採算に乗せるのは、日本以上に困難だろうと思われます。ということは、海外への輸出も、成立するかどうかが極めて怪しい。

それらのことを考え合わせると、どうも巨額の建設費に見合うだけのメリットがあるのか、という点に、大いに疑問を感じるのです。





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最終更新日  2016.11.19 09:29:46
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