inti-solのブログ

inti-solのブログ

2015.04.21
XML
カテゴリ: 環境問題
いささか旧聞に属する話になりますが、4月15日に、福井地裁が高浜原発3、4号機の再稼働を認めない仮処分を決定しました。私は、素晴らしい決定だと思うのですが、高裁でこの決定が覆されてしまう可能性が高そうにも思えます。
で、案の定、この決定は原発推進派から猛反発を受けているようです。例によって産経新聞の社説です、

高浜異議申し立て 迅速に決定を覆すべきだ

当然だろう。高浜原発は今年2月、政府が「世界で最も厳しい」と強調する原子力規制委員会の審査を通り、年内の再稼働を目指していた。
判決が確定するまで法的効力を持たない本訴訟とは違い、仮処分の決定はただちに効力を持つ。このため、地裁での異議審や高裁の審理で決定が覆らなくては、再稼働はできない。
異議審や高裁には、迅速で正常な審理を求めたい。同時に政府や関電はその間も、再稼働に向けた準備を進めてほしい。この決定は速やかに見直されるべきだ。それほど特異な内容である。
決定は、高浜原発に対する規制委の審査内容をことごとく否定し、新規制基準に対しては「適合していれば万が一にも深刻な災害は起きないといえる厳格さ」を求めた。いわば、ゼロリスクの証明を迫ったものだ。
だがゼロリスクを求めては、車は走れず、航空機も飛べない。一方で決定は、再稼働を認めないことによる経済的リスクや地元への影響などには言及していない。(以下略)

---

ゼロリスクを求めるのはおかしいと、言い換えるならば「事故が起きたって仕方がない」という言い分です。3.11の事故までは、「原発は絶対安全だ」と言い、それがウソであったことが白日の下にさらされると、今度は、ゼロリスクを求めるな(事故が起きたって仕方がないだろう)という。ある種の開き直りです。

「ゼロリスクを求めては、車は走れず、航空機も飛べない。」のだと。池田信夫あたりが言っていることを、産経も言いはじめたわけです。しかし、この言い分には問題があります。
第一に、事故が起きた場合の被害の規模です。車の事故も航空事故も、確かに悲惨です。特に航空事故は一度に大勢の死者が出るだけに、避けるために既知の問題については、あらゆる対策が講じられなければなりません。
が、しかしです。原発事故においては、国土のかなり広い範囲が、長期間人が住めない土地になってしまいます。福島原発の事故は、それでもまだ、チェルノブイリに比べれば放出された放射能の量が少なかったのです(チェルノブイリのおおむね10分の1)。だから、人が住めない土地も、チェルノブイリほど広大ではありません。しかし、逆に言えば事故が最悪の経過をたどった場合、チェルノブイリ級、あるいはそれ以上の事故になることも、充分ありえました。当時の菅政権も、一時は避難者数千万、という事態の検討をした、と言います。

元々無人の土地ならばともかく、人が住んでいた土地です。それを放射能汚染により人の住めない土地にすることは、自動車や飛行機の事故とは異質、異次元の災厄であると、私は思うのです。

もう一つ重要なことは、自動車にしても飛行機にしても、非常に便利な乗り物で、それを完全に置き換える手段というものはありません。それに対して電気はどうでしょうか。電気の利用者にとって、必要なことは電気が必要なだけ供給される、ということです。原発から流れてくる電気のほうが火力発電所から流れてくる電気より便利だ、などということはまったくない。要は、途切れなく必要な電気が確保されるなら、手段は問わないわけです。


つまり、結局はコストだけの問題なのです。原発はもう建ててしまった。莫大な出費をしたから、動かさないと損だ、ということです。もちろん、その結果再び事故が起こった場合、とか高レベル廃棄物の保管・処分費用などはその計算には入っていないですが。「国富」だ何だと言っていますが、結局のところ、ゼロリスク(原発を動かさない)はコストがかかるから続けたくない、ということです。
現実には、2013年9月からはすべての原発が止まっていますし、それ以前も動いていたのは大飯原発の2基だけですから、2012年以降はずっと「ほぼすべて」の原発が止まっている状態が継続しています。もちろん、楽々できているとか、余裕があるとか言うつもりはありませんけど、とにかく今原発にまったく頼らずに電力が供給されており、消費者に特に不便を強いているわけでもないことは確かです。値上げを不便というなら、その点は不便といえなくもないかも知れませんが、原発が稼動すれば電気代が下がる、という可能性もまずないと思われます。
今できていることも、コストの問題でやりたくない、ということです。安全よりコストのほうが大事だと、そう公言しているのに等しいように思えます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2015.04.22 07:26:35
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: