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2020年05月12日

実家にあった父に関する書類、そのコピーを兄からもらった。

これは敗戦後、間もない時のこと。会社勤めの父が、どうやら中心的な役割をになって、名付けも含めて作り始めた同人誌的なものと聞いている、今でいう社内報かな、

読むと、戦後間もなくの実情が、そして国民の混乱した心理状態を含めてよくわかる。

戦争、そして敗戦とはどういうことかをあらためて考えさせられてしまう、また、そのような時代を生きてきた両親のことなども、、

以下、「大手門」創刊号から読める部分を少し参考に記載（誤変換部あるかも）してみました。

題字「大手門」は遠藤社長筆

なお、遠藤（常久）社長とは遠藤周作氏の父上

　　　「大手門」の発刊を祝して寄す
遠藤社長
私どもは、永い間、談話室を忘れていた。
気の置けない、みんなくつろいで自由に、出入の出来る、楽しく、明るい談話室のあることを、忘れていた。

過去十数年の間、街にも、ビルディングにも、住宅にも、冷たい風が、容赦なく吹きまくり、私どもの顔色を悪くし、神経の平調を失わせた。寸刻のひまもない厭迫と強制とは、人を傷つけ、自分を傷つけ、全ての日本人から人生の指標さえも奪い去った。
これが戦争であったのだ。

然しいまや、平和と共に、私どもは、談話室を思い出した。
そして過ぎ去った苦しさと、明日への新しい設計とを語りたくなっている。

私どもの雑誌「大手門」
私はこの談話室の落成を、こころから喜ぶ。

ねがわくは
清雅な情操と、高邁な精神とをもって、この部屋を立派に飾ってゆきたい。

（編集後記）

敗戦という現実は日常のみならず政治経済思想の各面に於いて未曽有の混乱を起こし自尊心を喪った。

老若を問わず微笑と礼儀とは影をひそめ巷に満ちたものは辛立った灰色の感情のみであった。斯くて一年
年々歳々花相似　萬栄の桜、？の実り、木立の蝉時雨、秋の夜の月、稲の垂穂、？間にすだく虫の聲、自然は微笑みをそそって居る、然し吾々は心にゆとりを取戻したろうか、

鈎のない釣り糸を楽しんだ太公望の境地や香を薫じ茶を嗜んだ祖先の風流を理解し得らるるゆとりを取り戻したろうか、否と言いつつ私はこれを悲しんだ。情操の滋養と趣味の陶冶の薦めに是非互いに睦み合える倶楽部を作らねばならぬと考え慈に機関雑誌の刊行を思い立った。
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大手門　第一号
昭和２１年１０月１日発行　非売品
　　　　　　　　　発行所
　　　　　　　　　東京都麹町区大手町１の６
　　　　　　　　　安田興業株式会社内　大手門同人