歩人のたわごと

歩人のたわごと

2025/06/26
XML
カテゴリ: エッセイ
思い出という財産


 ボクの人生の94%に当たる85年間にはたくさんの思い出が詰まっている。これは言ってみればボクの貴重な財産であると考えている。その思い出の出番が最近増えている気がする。
 3カ月ほど前には知人との会話がきっかけで、50年前の初めての海外旅行のことを思い出して小文にまとめ、当ブログの記事にした(※)。
 いままた宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す(1,2,3)」を読んで似たような体験をしている。この本は作者が、鳩摩羅什という人物の足跡を訪ねる目的で、中国・西安からパキスタン・イスラマバードまでの6,700キロ、40日間のシルクロードの旅の紀行文である。
 その1は、西安から敦煌までの行程について書いているのだが、自分の旅行体験の記憶が蘇り、登場する地名を目にするだけでもう懐かしさがこみあげてくる。1冊目を読み終えるとすぐに、当時のアルバムを引っ張り出した。ボクがこの方面に出かけたのは1998年10月と11月の2度で、27年前のことになる。
「うわー、私こんなに若い、あなたはあまり今と変わらないわね」などとカミさんは勝手なことをのたまう。
「あれ、この緑と白のジャージー、このころから着てたんだ、色もあせずに27年もよくもってるなあ」とボク。
 こんなたわいもない会話から始まって、2200年も地中で眠り続けた後に発掘された兵馬俑のスケールの壮大さ、ゴビ砂漠の中をどこまでも続く一直線の道路を延々と走ったバス旅、砂漠の中のオアシスのポプラ並木、井上靖の小説で読んだ敦煌の莫高窟、といった具合に懐かしさのオンパレードである。
 読書中に、蘭州? 天水? 聞き覚えがある。たしかここにも行ったはずだぞ、でも何をしに行ったんだろう? そんな疑問も、写真を見て〈ああ、ここだったのか〉と思いだすことも多い。記憶というものは、物忘れや思い違いが多く、そのくらいあいまいなものである。

 このように思い出というものは次から次へと芋づるのように広がり、際限がない。これぞまさに思い出という財産の出番なのだ。そして日常のひとときに刺激を与え楽しませてくれる。ただ、想い出というのは当人に価値があっても他人から見れば、それは結構ですね、という程度のことでしかないだろう。
 それでよい、それでもよい、ボクの残りの人生、〈出来る時にする、行ける時に行く〉という従来の自分の生き方を続けるだけだ。思い出は勝手について来る。
(2025年6月)



エッセイ「初めての海外旅行」はこちら(→





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025/06/26 06:41:28 PM
コメント(3) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

ビッグジョン7777

ビッグジョン7777

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

かめさんランナー@ Re:ニシキギの紅葉(12/03) New! ニシキギは名前を知っているだけ。 でも見…
ふろう閑人 @ Re:アケビを食べる(12/02) New! そんなに色々活方法が有るのですね。 私も…
ふろう閑人 @ Re:ニシキギの紅葉(12/03) New! 私もひろみちゃんのブログでニシキギが世…
漫歩マン@ Re:ニシキギの紅葉(12/03) New! 「ニシキギ?知らないねえ」と言えば、 オ…
ひろみちゃん8021 @ Re:ニシキギの紅葉(12/03) New! こんばんは(^-^) うちのは 葉がまだまだ…

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: