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キャリアコンサルタントひろくん

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2025.04.08
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​​【たいせつなこと】 ​​
認知行動療法(CBT)は、児童や生徒に対する心理教育でも有効です。 かつて欧米において、絵本や紙芝居などを使った認知行動療法に関する心理教育が行われ、すでにその有効性は確認されていました。
 現在は日本でも有効性が確認されており、各教育現場でも認知行動療法がすでに活用されています。たとえば合計3時間の心理教育でも、もともと抑うつ傾向が強かった生徒には効果が認められました。
 さらに充実したプログラムを中高生に提供したケースでは、抑うつの程度がはっきりと低下傾向を示したうえ、半年後にも効果が持続していました。
 このように、 認知行動療法は児童・生徒に対しても有効です。心理教育に時間をかけるほどに効果は上昇しやすく、さらに定期的に認知行動療法について学び直すによって、効果を持続したり、更に高めることができるのです。

​​ 【具体的な重要情報】 ​​
 2021年の研究によると、小学5~6年の9%、中学生の13%に、病院への相談が望ましい中等度以上の抑うつ症状が見られました。児童生徒の抑うつ症状は、自殺や不登校と関連が深くなっています。
 さらに15~24歳になると、5人に1人がしばしばゆううつな気分になったり,何かをする気が起きなくなったりすると報告されています。つまり、抑うつは学年を重ねるほど増加傾向を示しやすいと言えます。
 強いストレスを受けているなどの状況下では、児童や生徒の認知に歪みが生じます。その結果、うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が強まり、さらに認知の歪みが引き起こされるという悪循環を招きやすくなります。
認知行動療法とは、悲観的になりすぎず、楽観的にもなりすぎず、地に足のついた現実的でしなやかな考え方をして、いま現在の問題に対処していけるように手助けする方法(心理療法)なのです。

 認知行動療法のアプローチに基づく抑うつ予防プログラムは多くの学校現場で実践され、児童生徒の抑うつや不安の低減効果が報告されています。
 例えば認知行動的技法を中心に全12回で構成されたプログラムを、中学1年生の生徒に実施した結果、実施前との被験者(実験の対象になった人)内比較において,実施後における参加者全体の不安得点が下がり、部分的に自己効力感の安心感がはっきりと向上する効果が示されたそうです。
 また別の例では、中学生と高校生を対象に認知行動的アプローチに基づく抑うつ予防心理教育プログラムを全4セッションで実践し、実施前後の分散分析を行った結果、中学生と高校生の実施後に抑うつの程度が有意に低減したそうです。さらに中学生では実施6ヶ月後の時点において、プログラム実施後の抑うつの程度を維持していることから、プログラムが抑うつ予防に対して継続的な有効性を保持するものであると述べられています。

 学校における保健指導では、集団指導を通して個を育成し,個の成長が集団を発展させるという相互作用により、児童生徒の力を最大限に伸ばすことができるという基本的な指導原理が示されています。集団指導と個別指導を効果的に組み合わせることで、自殺や不登校と関連の深い児童生徒の抑うつ症状に対して早期に介入する必要があります。
 3時間心理教育を受けた例において、抑うつ傾向が強かった生徒たちの2ヶ月後の記述では、おおむね肯定的な評価がされていました。[心が暗くなった]という記述がありましたが、それ以外は[前向きな気持ちの変化][明るく元気になった][身体の変化][自己理解][自己肯定感]など全て好転している内容でした。

 認知行動療法の効果は持続的でもあります。中学1年時に介入を受けた生徒は,2年後も標準的な抑うつレベルを下回る状態を維持していました。抑うつ予防プログラムが、学年を重ねるほど増加傾向を示す抑うつに対して、抑制する効果をもつ可能性があることを示しています。(具体的には1年後の測定では中程度の効果を示していたが、2年後フォローアップ測定では小さい効果を示していることから、抑うつ予防の効果は2年を経過すると低下してしまうことを示しています。このことから、 抑うつ予防プログラムは、児童期から青年期にかけて、発達段階に合わせて定期的に実施していくことが重要と言えるでしょう。

 今回は以下の論文から学ばせて頂きました。私も欧米における児童期からのCBT活用例を学んでいましたが、日本で既にこのように効果を発揮していることを知りませんでした。今後の更なる発展が期待できますね。
『認知行動療法の考え方を用いた集団を対象とした保健指導の効果−中学生の抑うつ性の変化から−』
著者:坂元 泉氏他
福祉健康科学研究(20) 149-156, 2025





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Last updated  2025.04.08 15:53:58
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