メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Jul 24, 2005
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 昨夕、関東地方で大きな地震がありました。現時点での報道では亡くなられた方はいらっしゃらないようなのですが、怪我をされてる方も多いようで、また、新聞には建物の壊れた壁などの模様が掲載されています。

 私は1995年当時神戸で働いていました。95年といえば阪神大震災のあった年。震災当日は大阪市内に住んでいたので、怪我など無く大きな被害を被ったわけではありません。しかし、もともとその春にグランドオープンする予定であった90室ほどのシティホテルが三宮に完成し、そちらに勤める事になっていたため、震災直後の三宮に居を移しました。

 震災の直後しばらくの間は何しろ交通が不便です。あちこちに規制がかかり、大阪市内から神戸市内へ引越しの荷物を移動させるのに7時間もの時間がかかりました。朝4時にウチを出て、11時のランチの営業にやっと間に合うというところ。ホントに街中のビルはあちこちで崩れ、道路は波打っているような状態でした。開店している店が少ないので食物さえ手に入らない状態です。こんな極限の状態では、フランス料理のサーヴィスマン、メートル・ド・テルというような職業など最も必要とされていないという事実を実感した出来事でもありました。

 ところが震災から何ヶ月もすると、交通も不便なままの街にフランス料理の雰囲気を求めてわざわざ来店してくださるお客様もいらっしゃいました。服装はジャージ姿、かかえた荷物は沢山のミネラルウォーターのペットボトルです。
 お客様とは地震の話はほとんどしませんでした。レストランはハレの場であって、お客様もそれを望んでおられたからです。以前のように食前酒を伺い、料理を注文され、ワインを抜いて、一回の食事に3時間あまりを費やされました。

 人間は必要とされる「文明」だけを求めているのではなく、無駄な事のように見えることでもある「文化」をも欲して生きている事をあらためて感じます。空腹を満たすことだけがレストランの存在の意義ではありませんでした。心が満たされることも望まれるのです。
 そして、その時本来お客様を喜ばせるはずの立場の私が、多分そのお客様以上に嬉しかったのを覚えております。

 私自身は、私が喜びを感じられるように、私が楽しいように生活し働けることが目的でいます。非常に私利私欲的だと思います。ただ、その為の手段がサーヴィスを行うことであり、メートル・ド・テルとしての職業であったことだと感じています。





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Last updated  Jul 24, 2005 05:48:13 PM
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背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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