メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Mar 28, 2006
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 私どもの飲食業界では読まれている(と、思います)「月間専門料理(柴田書店刊)」今月4月号の特集は「フランス料理のニューベーシック」です。

 「月間専門料理」は和・洋・中を網羅していますので、この本を毎月毎号買うわけではありませんが、こと特集が「フランス料理」であったりすると購入することが多いです。

 で、「フランス料理のニューべーシック」の内容なのですが、フランス料理が一時期の確固としたイメージでとらわれることなく、多様化の様子を見せているということ。

 料理を科学の視点でとらえるのか、フランス料理の王道とは、過去のエスコフィエなどとの乖離とは、、、などのテーマで日本各々のシェフの意見などで構成されています。 

 こう言った「ニューベーシック」「新しいフランス料理」。これは「フランス料理」という料理ジャンルに独特のことなのですが、フランス料理とは常に新しい「流行」を生みださないといけないといった要素があるのは確かです。

 「常に新しい流行を構築し、広めないといけない」
ということが中国料理であるとか、イタリア料理、ましてや日本料理と比較して、ことさらフランス料理に限って言われる命題であるような気がします。

 「フランス料理」とはそもそも「フランス共和国」の本来地方料理であったものををベースにしているものの、正に地方料理を抜粋しているわけではありません。そこには、例えば「太陽のごと、くまなく世界を照らさないといけない」、といった自負心から来るものがあります。

 しかし考えてみると、料理に限らず多くの芸術や文化はフランス、それもパリという街が発信の地であることが求められています。例えば、ファッションにおいても世界へ向けて「モード」、つまり流行が造られるのはやはりフランスであり、パリであることが、多くの人々の認知されるところでもあります



 さて、「ベーシック」という言葉が「普遍的」という意味合いを持つ以上、その時点ですでに「誰も見たことの無い新しいもの」では無くなっています。「新しい」と言われるものは、他の人々が追随して初めて、「アレが新しかった」という価値が見出される、ということです。

 一方、「古いフランス料理」、古典的と呼ばれるまでに格上げされなかったとしても流行遅れの料理を「新しい=良い」「古い=悪い」と見なすのも見方を変えれば弊害があるともいえます。それはお客様からの視点としてです。

 今年 2006年のミシュラン においてパリのトゥール・ダルジャンが一つ星に降格されたという話題がありました。
 今回の一つ星降格には「料理が時代遅れになりつつある。」というのもミシュラン降格の一因であったとも噂されています。

 私がこの業界に入った頃ですから、もう20年近く以前になりますが、当時、トゥール・ダルジャンのオーナー、クロード・テライユ氏が来日されていたこともあって、テライユ氏のコラムなど多く参考にしたことがあります。

 だから、トゥール・ダルジャンを弁護するということではありませんが、お客様が「トゥール・ダルジャン」を訪れる際に期待する料理とはエル・ブリのような奇抜な料理ではなく、また、科学をふんだんに応用した料理でも無いということです。

 お客様が「新しい料理」を期待するならば、パリ市内の他の店を訪れる方が賢明というものです。
 しかし、このレストランを訪れるお客様の多くが期待するのは、やはり各界有名人が食した「キャナール・ア・プレス(鴨のロースト)」と同じ鴨料理であり、何年も前に見かけたパリのガイドブックに載っているような料理を期待するのでは無いでしょうか。
 多分、一生に一度しか来店しないお客様なら尚更でしょうし、お客様の「期待」がどんなものであれ、お店の側は裏切れないのです。



 古いものが必ずしも廃れていくとは限りませんし、新しいものが必ずしも将来のベーシックになり得るというものではありません。








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Last updated  Mar 29, 2006 01:00:02 PM
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背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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