もいっか★フィンランド

もいっか★フィンランド

2004.10.16
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16日

大分前だが、メル・ギブソン監督の「パッション・オブ・クライスト」という映画が公開された。キリストが磔になるまでの12時間を描いた作品。僕は見逃したので内容はよく知らないが、内容が興味深いのでいつかビデオで見たいと思う。

さてこの映画が全米で封切られる直前に、ちょっとした事件があった。メル・ギブソンの親父ハットン・ギブソンがラジオ番組に出演し、反ユダヤ発言をしたのだ。その内容だが、もう爆弾の連続投下だったらしい。

「ユダヤの ホロコーストはでっちあげじゃ!

「大戦前にポーランドには620万のユダヤ人がいたのに、戦後20万人しか残っていなかった。だから600万人が殺されたにちがいない・・・これがやつらユダヤ連中の主張だ。アホか。連中は単に 逃げたんじゃよ! それが証拠に全米の大都市いたるところにユダヤ人に住み着いているだろ」

「ナチスは600万人ものユダヤ人を殺すほど大量の毒ガスなど持っておらんかった。アウシュビッツは単なる労働収容所だ」

「ユダヤ人はユダヤ教を世界で唯一の宗教にし、世界を支配しようとしておるんじゃ。あいつらは今でもキリスト教徒、そして 人類の敵

「グリーンスパン(米国連邦準備制度理事会(FRB)議長、ユダヤ系)は、あれこれ指図しすぎ。 縛り首にしろ!





・・・ああっ、ギブソン・パパ、すごすぎる・・・_| ̄|○(唖然)



ギブソン・パパ自身の身の振り方はともかく、メルにしてみればもうとんでもない親父。映画の興行に影響を与えかねないし、なにしろハリウッドはユダヤ系が多いので、将来のキャリアも危うくしかねない。この問題発言、瞬間的に話題になったが、すぐに立ち消え。メルの取り巻きが上手いことマスコミ対策を講じたのだろうか。



====

前説が長い日記ですいません。ここからが本題です。



昨日のプレゼンテーションで取り上げたネタだが、↑のギブソン・パパ舌禍事件を少し彷彿させるものだ。フィンランド国内のニュースなので、あまり海外では知られていないが、当時は結構騒がれたらしい。

渦中の人となったのは、 タトゥ・バンハネン Tatu Vanhanen。名誉大学教授。政治学が専門で、ヘルシンキとタンペレの両大学で教鞭を執っていた(現在も教壇に立っているかは未確認)。さらに重要な点を付け加えると、実は彼の息子は、 フィンランド現首相のマッティ・バンハネン だ。

このバンハネン・パパ、今年の8月に全国紙のインタヴューに応じる。そこで自身の研究結果と持論をかました。これがもうすごすぎ。

アフリカ人がヨーロッパ人より頭が悪い からだ」

「長年の調査結果では、 黒人の平均IQは白人のそれより低い

「フィンランド人の平均IQは97。一方、アフリカ人の平均IQは60-70にすぎない」

「ちなみに頭がいいのはユダヤ人と 日本人

「経済発展と各国国民のIQには相関関係がある」



・・・・とまあ、すさまじい主張の数々。このインタヴュー、どうやら大した編集もされることなく掲載されたから一大事となった。非難はもとより、早速、フィンランド警察が調査に乗り出す。同国の刑法によると、特定の民族を煽る発言は軽犯罪法にあたるからだ。さらにフィンランドの地方検察も動く。

また肉親の発言ということで、バンハネン首相も釈明を求められることとなる。彼は、「(親父の)主張には同意しない」と言下に否定。ただ親父さんを直接糾弾することは微妙に避けたようだ。この辺の心境、分からんでもない。

結局、バンハネン・パパの発言に対し、警察、地方検察とも「お咎めなし」の最終判断を下した。先月末の話だ。幸いバンハネン政権に影響を与えることもなかった。

バンハネン・パパのIQと各国の経済発展というテーマ、適当にその場のノリで吼えたというのではなく、どうやら長年の主張の一部にあたるようだ。半ば 確信犯だ 。実際、彼はこれまでにも幾つかの著作を発表している。最新の出版、IQ And Weath of the Nations はアマゾンのサイトでも販売されている。しかも読者24名の評価で星が4つ(5つが最高)もついてるよ。マジですか。

幸いIQ and Weath of the Nations は大学の図書館にもあるみたいで、近いうちにチェックしてみよう。彼の他の著作もタイトルを見る限り、割と地味で真面目なものが多い。政治学でも比較政治学が専門分野なのかな。これは僕のかつての専門教科と一緒。そんなこんなで、ちょっと彼に興味を持つ。この時点でプレゼンのテーマが決定。

ところで、バンハネン・パパの科学的手法(?)を駆使した研究だが、単純に「妄言!」と叫ぶのはたやすい。少し冷静に反論を試みてみようか(といっても簡単に一点ほど。何より彼自身の著作に目を通してないので)。彼の主張はかなり古典的で、反論マニュアルが出来そうなくらいなんだが。

一番手っ取り早い突っ込みは、IQのレベルと経済発展には、おそらく相関関係はあるのだろうが、 因果関係の証明は極めて難しい 、ということ。バンハネンが主張する、

●IQレベルが高い → だから経済も発展するよ♪

●IQレベルが低い → やっぱり経済もダメダメ(沈)



の原因と結果はひょっとすると逆かもしれないのだ。つまり、



●経済発展がなぜか好調♪ → あ、国民のIQレベルも上がっているよ!(嬉)

●色々あってね、経済が駄目なんだよ→ 国民のIQもそりゃ下がるわ(泣)。


という感じ。全く荒唐無稽な話でもない。例えば、経済発展で国が豊かになる→教育への投資増加→国民が勉強に励む→IQレベルが上がる、という具合。IQの高低が遺伝だけでなく、環境にも左右されるという意見を反映してみたわけだが。

またIQもあくまで人間の知性を計る一指標に過ぎない。近年、話題になったEQ(あまりにも大衆的に広まったので、「うさん臭せ~」とか思っていたけど、意外にまともな学術研究が基礎になっているみたい)というもの無視できないと思う。



ともあれ、困った親父に息子は苦労させられる。そんなオチで終わり。





追記:ギブソン・パパの発言、孫引きなので内容が正確かどうかはちょっと分かりません。一応、いくつかのネット・ソースで確認してはみましたが。バンハネン・パパの発言も新聞記事からの孫引き、和訳なので、あまり厳密とはいえません。必要があればまた訂正します。

追記2:ちなみに日本国民のIQ平均、105だそうです。








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Last updated  2004.10.20 09:12:53
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