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2009年09月12日
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 学校祭が近くなると、望美の帰りはどうしても遅くなる。
 約束の「日暮れまで」に逢えない日が続いて、望美は寂しかった。
 土曜日曜も文化祭などの買い出しで友だちと約束する日が多くて、それに景時の休みとも合わない。

(逢いたいな。)

 学校祭が終わればあとは受験に向けての準備が始まるだけ。受験が終わって、卒業すれば。

 景時との約束も、期限切れになるはずだった。

(高校が終われば。)

 景時と二人暮らせるなら、高校で終わりにしてもいいと思った。就職もしなくて、近くのスーパーかコンビニでアルバイトして。

「それはだめだよ、望美ちゃん。」


 景時は今自分ができることのスキルを人材派遣会社に登録して、単発の仕事を掛け持ちしている。イベント会場でマジックを見せるとか、店頭の実演販売のマネキンとか。安定した収入など望めないが、今の景時にできることはそれくらいだった。有川家のやっかいにならない程度に生活していくにはもう少しスキルアップしたい。しかし、そのためにはこの時空では資金がいる。

「望美ちゃんはこの時空で仕事を得やすい場所にいるんだから、ちゃんと最後までしなきゃ。ご両親もがっかりしちゃうでしょ。」

 自分のために、望美の一生が中途半端になるのは嫌だと景時は言った。

「わかったよ。」

 正しいことを言われているのはわかっているから、景時の言うことに従わざるを得ない。

「慌てないで。オレはずっと、望美ちゃんの傍にいるから。」

 早く二人で暮らしたいのは景時も同じだ。あとは、そうできる条件を満たすだけ。




(でも、あの調子じゃ、高校出ても約束は約束だよね、きっと。)

 学生でいるうちはだめだよとか言って延長されそうだった。

(景時さんって、結構真面目だったんだ。)

 真面目だからこそ、大倉御所の意向と八葉の務めとの板挟みになって悩んでいたのだが。果たさねばならない任務の前で、景時は常に従順だった。きっと、今、望美と暮らすために安定した生活を得ることと、望美の両親の揺るぎない信頼を得ることが、景時には重大な任務に感じられているのだろう。

 家までの道も、住宅街が続いてかなり暗い。ちょっと嫌だなと思いながら駅舎を出ると。

 思いがけない人影に、望美の胸は躍り上がった。

「景時さん!」

 暗くなったから、もう逢えないと思っていたのに。

「迎えに来たよ。大丈夫、ご両親のお許しは得てあるよ。夜道が暗いから心配だって。オレが毎日迎えに行きますって言ったら、すごく喜んでくださったよ。」


 望美は景時の胸に飛び込んだ。人目なんか気にならなかった。景時に逢えた、ただそのことがうれしかった。
 飛び込んできた望美を両手で受け止め、景時はそっと望美の髪を撫でた。

「でもね、だからと言って、わざと遅くなるのはだめだよ。学校から帰るときはメールして。待ち合わせて、一緒に帰ろう。」
「うん、そうする。」
「家までの直行だよ。寄り道はなし。」
「ええー!?」
「但し、途中でおやつだけは許してあげようかな。」

 景時の目が悪戯っぽく微笑んだ。望美の顔がうれしそうにほころんだ。景時の仕事は鎌倉駅とか藤沢駅とか大きな駅の近くが多いから、そこで待ち合わせることになるのだろうか。

「じゃあ、帰ろっか。」
「うん。」

 景時がさしだした手に、望美は自分の手を滑り込ませた。久しぶりに包まれる温かさ。寂しかった心がすうっと溶けて、優しい温もりに満たされる。

 まるい月が蒼白く照らす道を、二人手をつないで帰る。

「十六夜の月だね。」
「うん。きれいだね。」

 これからどんどん月の出は遅くなって、夜道もどんどん暗くなるけれど、景時が迎えに来てくれると思えば平気だった。
 楽しい時間は早く過ぎる。
 もう、有川家の門が見えてきた。

 景時の足がふと止まった。

「望美ちゃん……」

 電信柱の影、街灯の光の届かない暗がりに隠れて、望美をそっと引き寄せた。
 近づく顔に目を閉じる。
 唇が触れ合う。景時の舌先が優しく望美の唇をなぞり、そっとこじ開けて中を探った。

「ん……」

 久しぶりの感覚。気が遠くなるような快感を覚えながら、望美は景時の舌を迎えにいった。絡み合い、強く吸われる。痛いほどの快さにぼうっとする。

 唇が離れ、堅く抱きしめられた。

「……これが、おやつ。」

 悪戯に囁く声。望美は景時の胸に額を擦りつけた。

「行くよ。」

 去り際に必ずという約束。望美は素直に従った。春日家の玄関で別れた。

「ありがとう、景時さん!」

 家の中に聞こえるほど大きな声で、景時にお礼を言った。送ってもらったとわかるように。
 キッチンから、「すみませんねえ」と景時をねぎらう母の声がした。





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最終更新日  2009年09月12日 21時42分28秒
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