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2009年12月01日
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 しかし、千尋の部屋に戻ったアシュヴィンは、部屋に入ることができなかった。
 そこには風早がいて、遠夜と一緒にあれこれと千尋の世話を焼いていた。

「どうしてお前がここにいる。」
「俺は千尋の従者です。千尋が呼べばどこにでも来ますよ。」

 千尋は眠っていますから静かにしてくださいと、風早はアシュヴィンの鼻先で部屋の扉を閉めた。あまりのことに、アシュヴィンは二の句を継げなかった。禍日神との戦いを終えた後、すべてを見届けた風早は、中つ国に戻ったはずだった。千尋は風早から離れがたかったようだったが、常世の皇妃たる者が身近に男の従者を、しかも常世の国の者でない者を側近く置くというのは問題多く、千尋は泣く泣く、風早を手放して中つ国に帰らせたのだった……いや、帰らせたはずだった。

(どういうことだ?)

 すごすごと戻るのも腹立たしかったが、具合の悪い千尋の枕元で争い事を起こすのも本意ではなく、アシュヴィンはいらだちにまかせて足音高く執務室へ帰った。が、怒りに目がくらんで執務に戻るどころではない。

「リブ!」
「御前に。」

「は?」

 リブは面食らった。アシュヴィンが「あいつ」と呼ぶ千尋の従者は風早しか思いつかず、そして、風早が、柊や忍人といった常世の面々と共に黄泉比良坂を越えていくのを、確かにリブは見送っていたから。

「遠夜は何をしているんだ。巫医の力が及ばぬ病などなかろう。遠夜の力で不足ならエイカを呼べ。すぐにだ!」

 珍しく感情的なアシュヴィンの指示に従うべく、リブは執務室を出た。まずはアシュヴィンの見たものを確かめなくてはならない。いくら元従者であり、友好国の人間とはいえ、無断で入ってきているのはゆゆしいことだ。

 千尋の部屋のドアをノックした。ややあって、ドアを開けに来たのは遠夜だった。

「二ノ姫様は?」

 遠夜は無言でドアを閉めようとした。リブは食い下がった。

「や、殿下がお怒りなのです。二ノ姫様のお部屋に、無断で入った者がいると。」

 遠夜の顔が困った表情になった。中に入って確かめたいところだが、例えアシュヴィンの腹心とはいえ、無断で踏み込むことはリブにもできなかった。双方困り果てて立ちつくしていると、釆女が千尋の意思を伝えに来た。

「リブ殿に中へお入りいただきたいとのことです。」

 リブは中に入った。中には確かに、アシュヴィンの言ったとおり風早がいて、忙しそうに立ち働いていた。リブは目を疑いながらも、千尋の側へ寄った。千尋は目を覚ましていた。リブが体調を尋ねると、遠夜の薬のおかげでずいぶんよくなったと微笑んだ。


「や、二ノ姫様、彼はどうして……」
「わからない。目が覚めたら、いたの。」

 代わりに風早が返事をした。

「千尋が、喚んだんですよ。」
「え? 私、呼んでないよ。」


 あなたが喚べばどこへでも来ますよと、風早は笑ってさらりと言った。

(神子は、喚んだ。風早を喚んだ。)

 遠夜が言った。千尋にしか聞こえなかったが、千尋が驚いて遠夜を見上げるので、皆にもそれとわかった。

(神子がアシュヴィンを呼んだ。釆女が呼びに行ったが、アシュヴィンは来なかった。神子は泣きながら眠った。眠りに落ちる間際に、風早と喚んだ。)

「私……。」
「ね、だから言ったでしょう? あなたが俺を喚んだと。」

 ややこしいことになったとリブは頭を抱えた。すべては、アシュヴィンがいらぬ意地を張ったからだ。最初から素直に出かけていればいいものを、それのおかげで二ノ姫様を怒らせ、この方を、喚ばせてしまった。おそらく、今回は素直に帰るまい。他ならぬ二ノ姫が、彼を喚んだのだから。
 風早は嬉しそうに千尋の世話を焼いている。多少困惑ぎみながらも、千尋も嬉しそうだ。帰れとはきっと……言わないだろう。アシュヴィンが千尋の心をほぐさない限り。
 リブは重い足取りで執務室へ帰った。アシュヴィンの鋭い視線がリブを迎えた。

「いただろう。」
「はい。」
「理由は? どこから侵入した?」
「や、それは……」

 下手なことを言うと千尋の立場が悪くなる。リブは言葉に詰まった。

「お前も思ったほど役にたたんな。丸め込まれでもしたか。」

 アシュヴィンは冷たく笑った。千尋の容態を尋ねた。リブが「よくおなりです」と報告すると、アシュヴィンは席を立った。

「殿下、どちらへ……」

 リブはおそるおそる聞いてみた。

「決まっている。」

 ドアを開けたアシュヴィンの足取りは、まっすぐ後宮へ向かう。リブは、何事もないようにと祈るばかりだった。





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最終更新日  2009年12月01日 20時02分34秒
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