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2012年01月20日
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雨宿



「おや。」

 ぽたりと袖を打った雨粒に、友雅は空を見上げた。さっきまで抜けるようだった青空が暗く曇って、こらえきれないとでもいうように大粒の雨がぼたりぼたりと道をぬらし始めた。

「神子殿。」

 あわてて走り出そうとする少女を呼び止め、広袖にかくまうように抱いた。恥じらう神子が身じろぎ逃げだそうとするのを押しとどめ、抱えるように走って近い屋敷の門の屋根下に雨宿り、供人に車を取りに行かせた。

 広袖の中の神子の震えが止まらない。

「寒いかい?」

 神子は首を振った。雨宿ったのだから不要だとばかりに広袖から逃げ出した。

「ふふ……かわいいね。」



「どうしたの。そんなに離れたら濡れるよ。」
「大丈夫です。ここ、まだ屋根がありますから。」

 好きにさせるさと友雅は目をそらした。視線は自然に雨宿った屋根に向いた。

(……見覚えがあるような。)

 そこにあったから飛び込んだ屋根だったが、確かな記憶にはなさそうだった。従者のひとりが神子を気にしながら告げた。

「……ここは、以前……」
「ああ……」

 前に通っていた屋敷だったらしい。どういうわけで別れたのかも忘れた。通い始めたきっかけも朧だった。やりとりしたはずの文も、肝心の女の声も顔も忘れかけて、隣にいる神子や館で待つ姫君が目を剥いて怒りそうな、そんな戯れの跡のようだ。

 どうしたものかと思ううちに、門扉の横の小さなくぐりがぎ…と開いて、こざっぱりした衣を着せられた女童が顔を出した。よくしつけられているのか、気後れすることなく友雅に近づき、

「そんなところではお困りでしょうからどうぞ中へと主が申します。」

と、はきはきと告げた。


「お言葉に甘えましょうとご主人に。」
「はい、ではこちらへ。」

 案内するというので友雅は神子を見返った。

「神子殿、行くよ。どうやらここは私の知人の家だったようでね。」
「知人?」



「ふふ、全く君は……見ていて飽きないね。」
「どういう意味ですか!?」
「ああ……君の相談役をアレに頼んだのは私の失策だったようだ。」

 神子の眉がますますつり上がるので友雅はおかしくてたまらなかった。からかいがいのある娘だ。いい退屈しのぎになる。しかし、遊んでばかりはいられない。

「すまないね。しかしこのままでは車が来るまでにずぶ濡れだ。お言葉に甘えることにしよう、神子殿。彼女に連れて行ってもらおう。」

 友雅が指す方向に可愛い女童を認めて神子の顔は和んだ。女童がまたいかにも愛らしく微笑むから、神子の機嫌はすっかり直った。

「行きましょう、友雅さん。」

 先に立って歩いて行くのがおかしくて友雅はまたも吹き出しそうになったが、ぐっとこらえて後に従った。







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最終更新日  2012年01月20日 16時22分03秒
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