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2018年09月09日
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カテゴリ: 食事
大阪はいい街だ、路地裏を必死に走っても、女房に浮気がバレたか、博打の負けの取り立てか、なにかやんちゃなことをしでかした男が走っとるわ。くらいにしか見られない。

走る。
道頓堀川に向かって走る。
一方通行で、車が向かってくるが、お構いなしに道を蹴り続けた。
二筋目で、右に折れ、また、車に向かって駆けた。
一方通行を逆行すれば、追手は車で追いかけることはできない。
ハリウッド映画じゃあるまいし、日本で、一方通行を逆行して車を運転できるのはボケ老人だけだ。
豚足の骨を踏みつぶして走る。
ビールケースを引き倒して走る。
昨夜のゲロを飛び越えて走る。
誰だ、犬のクソを片付けねえ奴は

阪神高速の高架をくぐり、四ツ橋筋に出て、道頓堀川を越えたところで、スピードを緩め、初めて振り返った。
逃げる時に後ろを見る必要はない。
襟首を掴まれた時に対応できる反射神経があればいいのだ。
全力で走っているのに、拳銃を向けられて当たるようなら、それはよほど運のイイ奴だ。
それよりも、前方と、わき道からの敵に神経を集中した方が生存確率は上がる。

俺が逃げた時点で、追手は居なかった。
裏口まで回り込む時間と、俺が走り始めた時間を考えれば、簡単に追いつける距離ではない。
正確には、裏口に一人、男がいた。
俺が静かにドアを開けた時、右手をチノパンのポケットに突っ込み、左手で煙草をふかしている男がいた。
気の毒に、無関係かもしれないが、そいつの右耳に丸めた雑誌を叩きつけた。
確実に鼓膜は破れ、三半規管は衝撃を受け、しばらく歩行能力は戻らないだろう。

湊町南の交差点で、 ジタン・カポラル を吸う振りをしながら、ビルのガラス越しに映り込んだ人と車を注意深く五分ほど観察した。
喧噪が消えた。
天頂に太陽を置いた街は、陽炎の中に揺らいでいる。
文二郎のパナマに、汗染みが出来そうだ。

大西亭は、ワンブロック先だ。

エピのポルトドキュマン ヴォワヤージュを左脇に深く抱え直し、ゆっくり足を進めた。

国内なら、防弾仕様より防刃仕様を優先させた方が賢明な選択と思う。
俺は、東洋紡のPBO繊維であるザイロンと、カーボンケブラーとのハイブリッド繊維で特殊な薄い袋を作り、その中に、ダイラタント流体になるナノセラミック粒子と低比重の難燃性液体を流し込み、内張に使用した。そうすることにより、ライフルは防げないが、拳銃の弾丸なら貫通しないだけの性能も確保できた。


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大西亭の前で、情報屋は何事もなかったようにへらへら笑って立っている。
本心が読めない男だ。

だが、俺は左側のカップルが気になった。
センスの良さを言ってるんじゃない。
180センチある情報屋より歩道の高さを考慮すれば185センチはありそうな男と、170センチの化粧っ気のない女の組み合わせが、単なる偶然なのか。
肩幅の広さ、厚そうな胸板、丸太のようなふくらはぎ。
寝技に持ち込まれたら勝てそうな気がしない。

機動隊か自衛隊あがりなら納得だ。

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ぴったり6時半に、大西亭 トラットリア リッキョスは客を招き入れた。
「ここは本格的なシチリア料理を食べさせてくれます。」と、情報屋がフォークとナイフを手渡しながら話してきた。


家内にせがまれ訪れた島。
「グラン・ブルー」の映画の舞台になったタオルミーナの海岸線に立ち並ぶ家々を思い出した。
真夏の夕暮れ、丘の上から眺めていると、海の青さと空の青さに、茜色から緋色がにじみ始め、やがて日は沈み、海と空の区別は無くなり藍色の帳が下りる。
そして家々に、明かりがともり始めると、いつの間にか宝石の海が新たに広がる。

宝石は、真珠になり、それは、家内の見開いたままの角膜の表面に映っていた真珠と重なる。

「・・・大丈夫ですか?店に来たのは、新宿署のジェラード警部と相棒、それに府警の刑事が二人、四人です。
質屋の通報で、千枚通しの兄ちゃんから時計を押収しがてら、近辺を捜索に来たようです。」
「これで、片腕の男が実在することが判れば、無実が証明できますね。」
「無実に成ろうが、俺が片腕の男を見つけ出すことに変わりはない。きっちり妻の無念を晴らしてやる。」

生シラスにオリーブオイルが、山葵醤油より美味しい。
シラスとオリーブの微かな苦みが心をざらつかせた。

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こんな夕日が、いつでも二人で見られると思っていた自分は、なんて愚かな男だ。

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新鮮な北海道のボタン海老。
タオルミーナでも沢山海老を食った。



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酸味のしっかりした、カポナータ
冷たい大ぶりな野菜たちが気持ち良い。

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素朴な味わいに、心が折れそうになる。
もう、全て止めて、家内のところに行ってもいいか。
「おかえり」と言って欲しい。
もう一度、お前の柔らかい手を握りしめ、丘に立ちたい。

温かいパプリカ、なんでこんなに旨いんだ?

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シンプルな料理だが、オリーブオイルがたっぷりなのに、さらっとして美味しい。

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卵と鱧とトマトの煮たの。
それぞれの旨味が複雑に絡み合って、一つの味を作り出す。

L字カウンターの俺たちと反対側の端に座った寝技が得意な男が、スワリングをしているつもりなのか、ドンキホーテのように我こそはと叫んでいるのか、空中でグラスを振り回しながら、こちらを盗み見ている。
007のロシアより愛を込めての、ロシアのスパイじゃあるまいし。
こいつは脳みそまで筋肉に鍛え上げた機動隊出身者だ。

情報屋がこらえきれずにワインを吹き出した。
下を向いて笑いを隠しながらカウンターを拭いている。


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鯛のお頭をしゃぶる。
鯛の鯛では、角膜を切ることは出来ても、致命傷は負わせられないな。

一通り料理が出て、追加の注文を店主が尋ねてきた。
俺たちは、少し考えるフリをしてオーダーを待ってもらった。
順番に注文をとる店主が、最期の筋肉脳から聴き始めた時、俺たちと機動隊男の間に店主が立ち、視界が遮られた。
「美味しかったから、釣りは要らない。」と小声で言い、多めの代金をカウンターに置くと、素早く店を出た。


ドアが閉まる寸前、背中越しに、カップルが慌てて何か言っているのが聞こえる。
続けざまにリーデルのソムリエシリーズが割れる音が響いた。
手吹きのグラスは割れる音も美しい。

通りに出ると、3台連なってきたタクシーの最期の車に手を挙げた。
後部座席で振り向くと、カップルが首にバッグを巻きつけ、携帯に叫びながら、こちらに走ってくるのが見えた。
運転手に「そこの角を右に折れたら、最初の路地の前で下してくれ、それから、このまま2000円分、適当に走ってくれ。」と、一万円札を助手席に落とした。

「俺は、新宿に戻る。あんたは、もうすこしジェラード警部に張り付いて動きを探ってくれ。」

家内を連れてきてやりたい店だった。



今日の体重65.1キロ、痩せん。





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最終更新日  2018年09月09日 12時06分13秒
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