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「ハクソー・リッジ」(原題:Hacksaw Ridge)は、2016年公開のアメリカ・オーストラリア合作の戦争アクション&ドラマ映画です。太平洋戦争に衛生兵として武器を持たずに従軍したデズモンド・T・ドスの実体験を基に、メル・ギブソン監督、アンドリュー・ガーフィールドら出演で、一晩で75名の日米の負傷兵を救い、良心的兵役拒否者としてアメリカ史上初めての名誉勲章を受勲した彼の半生を描いています。第89回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門にノミネートされ、録音賞と編集賞を受賞した作品です。 「ハクソー・リッジ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:メル・ギブソン脚本:ロバート・シェンカン/アンドリュー・ナイト出演:アンドリュー・ガーフィールド(デズモンド・ドス) ヴィンス・ヴォーン(ハウエル軍曹) サム・ワーシントン(ジャック・グローヴァー大尉) ルーク・ブレイシー(スミティ・ライカー) ヒューゴ・ウィーヴィング(トーマス・ドス) ライアン・コア(マンヴィル中尉) テリーサ・パーマー(ドロシー・シュッテ) レイチェル・グリフィス(バーサ・ドス) リチャード・ロクスバーグ(ステルツァー大佐) ルーク・ペグラー(ミルト・"ハリウッド"・ゼーン) リチャード・パイロス(ランダル・"ティーチ"・フラー) ベン・ミンゲイ(グリース・ノーラン) フィラス・ディラーニ(ヴィト・リネリ) ダミアン・ソムリンソン(ラルフ・モーガン) マット・ネイブル(クーニー中佐) ロバート・モーガン(サングストン大佐) ナサニエル・ブゾリック(ハロルド・"ハル"・ドス) ほか【あらすじ】アメリカ、ヴァージニア州の緑豊かな田舎町に生まれ育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は野山を駆け回る活発な少年でしたが、父親のトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は、兵士として戦った第一次世界大戦で心に傷を負い、酒に溺れては母バーサ(レイチェル・グリフィス)と喧嘩を繰り返す日々を送っていました。ある日、喧嘩で兄を死なせそうになったドスは、自らを責め、「汝、殺すことなかれ」という教えを胸に刻み込みます。成長したデズモンドは、看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)と恋に落ちますが、第二次世界大戦が激化、兄も友人達も次々と出征していきます。「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と、デズモンドは父の反対や恋人ドロシーの涙を押し切って陸軍に志願します。 グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属された彼は、ジャクソン基地で上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けます。体力には自信のある彼は苦もなく泥道を這い回り、障害物をよじ登りますが、ライフルの訓練で銃に触れることを拒絶します。軍服や軍務には何の問題もなく、「人を殺せないだけです」と彼は主張しますが、グローヴァー大尉は「戦争は人を殺すことだ」と彼に除隊を宣告します。上官や兵士たちの嫌がらせが始まりますが、彼の決意は揺るぎませんでした。出征前に約束したドロシーとの結婚式の日、彼はライフルの訓練を終えないと休暇は与えられないと言われ、さらに命令拒否の罪で軍法会議にかけられることになります。ドロシーは、銃に触れないのはプライドが邪魔しているからだと指摘しますが、「信念を曲げたら生きていけない」という彼の思いに心を打たれ、「何があろうと、あなたを愛し続ける」と励まします。デズモンドは軍法会議で窮地に陥りますが、意外な人物の尽力に救われます。1945年5月、グローヴァー大尉に率いられて第77師団のデズモンドらは沖縄のハクソー・リッジに到着します。先発部隊が6回登って6回撃退されたという激戦地で、150メートルの断崖を登ると、百戦錬磨の古参兵さえ見たことのない異界が広がり、前進した瞬間、四方八方からの攻撃で、兵士達は瞬く間に倒れていきます。デズモンドは衛生兵として重傷の兵士達を助け、部隊も一度はハクソー・リッジを占領しますが、厳しい戦況に退却を余儀なくされます。負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、丸腰のまま、たった一人で戦場へ留まることを決意します・・・。【レビュー・解説】第二次世界大戦の前線で武器を持たずに従軍、衛生兵として数多くの負傷兵を救った実在の良心的兵役拒否者の信念、忠誠、勇気を讃える感動的な戦争アクション&伝記ドラマ映画です。わかりやすいシンプルなプロットの中に、主人公のデズモンド・ドスが良心的兵役拒否に至った経緯や妻ドロシーとのロマンスを過不足なく描き、「プライベート・ライアン」(1998年)のノルマンディー上陸作戦ばりにリアルで激しい戦闘シーンを見せる一方で、英雄談の押し売りにならぬようにドスの活躍を控えめするなど彼の人間性を浮かび上がらせる演出によってデズモンド・ドスを広く世に知らしめる、良質なエンタメ作品です。半世紀以上経って映画化された実話タイトルの「ハクソー・リッジ」は、第二次世界大戦の沖縄戦において前田高地と呼ばれた日本軍の陣地で、北側が弓鋸の歯のような急峻な崖地となっていることから、米軍がこのように呼んだものです。このハクソー・リッジの戦闘で、武器を持つことを拒否する米軍の衛生兵が大活躍、良心的兵役拒否者として初めて名誉勲章を受勲したという実話に基づくドラマ映画ですが、戦後70年を経て、ようやくこうした話が映画になるのは非常に興味深いところです。映画が国威高揚の一端を担っていた大戦直後はともかく、ハリウッドが反戦に転じた1970年〜1980年代以降は、格好の題材だったのではないかと思います。実は映画化の話は1950年代からありましたが、ドス本人が典型的なハリウッド映画にされることとを嫌い、長い間、映画化を許さなかったのが真相です。恐らく彼が人生の晩年を迎えるあたり、人々を触発するこの話を続く世代の人々に伝えるべきだと彼の教会の仲間たちが諭したのではないかと思います。彼がこの話を語り、光が当たるようになれば、他の良心的兵役拒否者を触発し、彼らが衛生兵として戦地に赴くだろうということです。ドスも、彼の話が信念、忠誠、勇気といったものを伝える手段になると考えました。彼は自身を英雄とは考えておらず、自慢することもなければ、多くを語ることもありませんでしたが、恐らく、教会の仲間たちが権利を譲ってくれと言い、ドスは俺が死んだらとでも答えたのでしょう。そして、ドキュメンタリーが作られました。(メル・ギブソン監督)http://deadline.com/2016/11/mel-gibson-hacksaw-ridge-venice-film-festival-the-passion-of-the-christ-1201813728/実話からの変更点 実際は、デズモンド・ドスが存命の1990年代後半に、セブンスデー・アドベンチスト教会が脚本家のグレゴリー・クロスビーに話が持ち込みました。2004年には、デズモンド・ドス自身が出演するドキュメンタリー映画「The Conscientious Objector」が公開されています。ドラマ映画にするのに、さらに10年以上の歳月を要したわけですが、これは2006年にデズモンド・ドスが亡くなった後、彼の権利を引き継いだセブンスデー・アドベンチスト教会との調整に時間がかかったためではないかと思われます。ギブソン監督は、予算を獲得するより映画化の権利を獲得するほうが大変だったと語っています。こうしたの調整努力の甲斐あってか、本作は主要な事実にもとづきながらも、よりシンプルにわかりやすいプロットに変更されています。主な変更点は、父と叔父が喧嘩、止めに入った母がデズモンドに銃を隠すように言った実話が、本作では銃を持った父が母ともみ合い、彼が割って入るように描かれているデズモンドには姉のオードリーがいたが、本作では全く描かれていない。デズモンドは彼の教会を訪ねたドロシーと知り合い結婚、彼女は戦後に看護師になったが、本作では看護師のドロシーと病院で知り合ったとして描かれている。彼が営倉に入れられた時、二人は既に結婚していたが、本作では営倉に入れられた為、結婚式に間に合わないという展開として描かれている。デズモンドは、沖縄戦以前にグアム戦とレイテ戦を経験していたが、本作は沖縄のハクソー・リッジが初めての戦地として描かれている。デズモンドは50〜100人の負傷兵を救ったと言われているが、本作では10人程の救護しか描いていない。デズモンドの叙勲の対象となった戦いは三週間で、沖縄戦そのものは82日間続いたが、本作ではハクソー・リッジの戦いの数日間のみ描かれている。控えめに描かれた虐待と英雄談このようにプロットをシンプルにわかりやすくする中で、彼が良心的兵役拒否に至った経緯と、「プライベート・ライアン」(1998年)のノルマンディー上陸作戦ばりにリアルに戦闘シーンを描いていますが、実はデズモンド・ドスの活躍は実話より控えめに描かれています。彼の活躍すべてを描けば、他のことを描く時間がなくなったしまいます。2004年公開のドキュメンタリー『The Conscientious Objector』より控えめの描写にしている部分がいくつかあります。彼は手榴弾を蹴って吹き飛ばされた後、担架で運ばれますが、彼より容態が悪いと思われる他の兵士に担架を譲ります。彼は這って戻るのですが、その間にさらに被弾します。しかし、そこまで映画で描くと、「モンティ・パイソン」のように奇想天外なものになったしまいます。(メル・ギブソン監督)彼を劇画の主人公や聖人のように演じようとは思いませんでした。彼のしたことは英雄的行為に他ならないのですが、彼は英雄とは呼ばれたくない男でした。監督にとっても私にとっても、問題は、『誠実で謙虚な男、内なる暴力を超越した、どこにでもいるような男の人間性をいかに描くか?』、『エネルギーや怒りを、如何に光に昇華したか?』でした。(アンドリュー・ガーフィールド)http://www.latimes.com/entertainment/movies/moviesnow/la-en-mn-gibson-garfield-hacksaw-ridge-20170106-story.html映画でもデズモンド・ドスが兵舎で殴られるシーンがありますが、こうした素晴らしい行いの陰で、実は彼は激しく虐待され続けていたといいます。彼は、激しい虐待に直面しながらも、武器を持たないという自身の主義、信念にこだわりました。実際は映画で描いているよりもひどいものでした。彼は陸軍にいた二年間、迫害され続けていたのです。あまり酷すぎるので、映画では描いていませんが、かれは差別されていたのです。彼はじっと耐えていました。何故、耐えることができたのか、理解できない人も少なくありません。彼はタフでした。筋金入りの男なのです。(メル・ギブソン監督)http://deadline.com/2016/11/mel-gibson-hacksaw-ridge-venice-film-festival-the-passion-of-the-christ-1201813728/信念がもたらす力 沖縄戦で50〜100人もの負傷兵を救い、自身も4度にわたり負傷したデズモンド・ドスは、病院船マーシーで後方へ送られますが、その功績が認められ、良心的兵役拒否者としては史上初めてアメリカ軍人最高位の名誉勲章を受章します。戦後、彼は戦傷で残った腕全体へのダメージの為に大工仕事の再開を断念せざるを得ず、さらにレイテ島で感染した結核を発症します。5年半にわたる入院治療を受けますが、片側の肺と肋骨5本を失い、大きな障害を持って退院します。さらに長年の抗生物質の過剰摂取により完全に聴覚を失い、人工内耳の埋込手術を受けます。彼の体の状況はこのように深刻でしたが、彼は小さな農場で野菜を育てながらなんとか家族を養いました。彼の体験を売って金にすることもない、いかにも彼らしい生き様です。ドスは1991年に最愛の妻ドロシーを自動車事故で失い、1993年にフランシスと再婚、2006年に87歳で亡くなりました。メル・ギブソンは「マッドマックス」シリーズ(1979〜1985年)、「リーサル・ウェポン」シリーズ(1987年〜1998年)の主演俳優として名を成し、「ブレイブハート」(1995年)では主演のみならず監督を務めてアカデミー作品賞、監督賞、撮影賞。メイクアップ賞、音響効果賞を受賞しています。しかしながら、後に監督を務めた「アポカリプト」(2006年)の評価が分かれた上に、飲酒運転、速度超過で逮捕され、反ユダヤ的な差別発言が報じられます。同年、長年連れ添った妻と別居し、2009年には愛人にDVで訴えられら、2011年には妻との離婚が成立するなど、スキャンダルが続きました。本作は、そんな彼の監督復帰作であり、彼の名誉を回復する作品でもあります。バイオレントなアクション映画で知られる彼ですが、元より熱心なカトリック教徒で自宅の近くに礼拝堂を立てるくらいでした。反戦を訴えるデズモンド・ドスのセブンスデー・アドベンチストとは宗派が異なり、カトリックは国を守る戦争を支持することが多いのですが、同じ信仰を持つものとして本作の制作に取り組んだギブソン監督の真摯さが感じられます。ドスの場合もギブソン監督の場合も信仰が人生を救ったと言っても良いのかもしれません。一方で、反戦を信条とする人が少なくないと思われる日本に目を転じると、世界情勢が変化していく中で、そうした人々がどのような形で国際社会に貢献していくのか、その信条のあり方が問われていると考えることもできそうです。アンドリュー・ガーフィールド(デズモンド・ドス)アンドリュー・ガーフィルド(1983年〜)は、ロサンゼルス出身のイギリスの俳優です。父親はユダヤ系アメリカ人、母親はイギリス人で、アメリカとイギリスの二重国籍を保有。3歳の時にイングランドに移住、16歳の時に演技に興味を持ち始める。舞台俳優としてキャリアをスタートさせ、「BOY A」(2007年)で英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞を受賞、その後も「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)、「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」(2014年)、「沈黙 -サイレンス-」(2016年)などに出演、本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。ヴィンス・ヴォーン(ハウエル軍曹)ヴィンス・ヴォーン(1970年〜)は、ミネアポリス出身のアメリカのコメディアン、俳優。高校時代にCMに出演したことがきっかけで、卒業後ハリウッドに移り俳優を志し、「スウィンガーズ」(1996年)で注目を集める。「ウェディング・クラッシャーズ」(2005年)、「イントゥ・ザ・ワイルド」(2007年)などに出演している。サム・ワーシントン(ジャック・グローヴァー大尉)サム・ワーシントン(1976年〜)は、イギリス出身のオーストラリアの俳優。幼少時にオーストラリアのパースに移住。高校卒業後、レンガ積み職人をしていたが、19歳の時にシドニーのオーストラリア国立演劇学院で学び、2000年にデビュー。「15歳のダイアリー」(2004年)でオーストラリア映画協会賞主演男優賞を受賞。「アバター」(2009年)では主人公を演じている。ルーク・ブレイシー(左、スミティ・ライカー)ルーク・ブレイシー(1989)はシドニー出身のオーストラリアの俳優。映画、テレビドラマで活躍している。ヒューゴ・ウィーヴィング(トーマス・ドス)ヒューゴ・ウィーヴィング(1960年〜)は、ナイジェリア出身のオーストラリアの俳優。イギリス人の両親の元に生まれ、南アフリカ共和国、イギリスなどを経て、10代半ばにオーストラリアへ移住。オーストラリア国立演劇学院で演劇を学び、卒業後はシドニー・シアター・カンパニーに所属、数多くの舞台に出演する。1983年に映画デビュー、「マトリックス」三部作、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作にて国際的な知名度を得るが、その後もオーストラリアの低予算映画を愛し、またシドニーで舞台にも立っている。テリーサ・パーマー(ドロシー・シュッテ)テリーサ・パーマー(1986年〜)は、オーストラリアの女優。母親は看護師でありカトリックの宣教師で、マザー・テレサに因んでテリーサと名付けられた。高校卒業後、地元のエージェントに見出され、「明日、君がいない」(2007年)に出演、オーストラリア映画協会賞の主演女優賞にノミネートされる。「ウォーム・ボディーズ」(2013年)、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年)などに出演している。【撮影地(グーグルマップ)】ジャクソン基地舞台はアメリカだが、オーストラリアで撮影されているハクソー・リッジ舞台は沖縄だが、オーストラリアで撮影されている 「ハクソー・リッジ」のDVD(楽天市場)【関連作品】デズモンド・ドスの伝記本(楽天市場) 「デズモンド・ドス―もうひとつの真実」ドキュメンタリー版のDVD(楽天市場) 「The Conscientious Objector」(2004年)・・・輸入版、日本語なしメル・ギブソン出演作品のDVD(楽天市場) 「マッドマックス」(1979年) 「誓い」(1981年) 「マッドマックス2」(1981年) 「マッドマックス/サンダードーム」(1985年) 「リーサル・ウェポン」(1987年) 「ブレイブハート」(1995年)・・・主演・監督 「身代金」(1996年) 「サイン」(2002年) 「ブラッド・ファーザー」(2016年)
2018年01月26日
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「最高の花婿」(原題:Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ?、英題:Serial (Bad) Weddings)は2014年公開のフランスのコメディ映画です。フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督、クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビーら出演で、 多様な人種や文化、宗教が混在するフランス社会を背景に、四姉妹の結婚相手をめぐる大騒動をユーモラスに描いています。フランス本国で1,300万人の観客を動員、2014年の年間興収成績1位のヒットとなり、世界146ヶ国で公開され、高いスコアを記録した作品です。 「最高の花婿」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン脚本:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン/ギィ・ローラン出演:クリスチャン・クラヴィエ(クロード・ヴェルヌイユ、四姉妹の父、カトリック、保守的) シャンタル・ロビー(マリー・ヴェルヌイユ、クロードの妻、四姉妹の母) アリ・アビタン(ダヴィド・ヴェニシュ、次女の夫、ユダヤ人、事業に失敗し無職) メディ・サドゥン(ラシッド・ベナセム、長女の夫、アラブ人、国選弁護士) フレデリック・チョー(フシャオ・リン、三女の夫、中国人、銀行の幹部) ヌーム・ディアワラ(シャルル・コフィ、 四女の恋人、コートジボワール出身、舞台俳優) フレデリック・ベル(フイザベル・ヴェルヌイユ、長女、弁護士) ジュリア・ピアトン(オディル・ヴェルヌイユ、次女、歯科医) エミリー・カン(セゴレーヌ・ヴェルヌイユ - 三女、画家) エロディ・フォンタン(ロール・ヴェルヌイユ、四女、テレビ局の法務部に勤務) パスカル・ンゾンジ(アンドレ・コフィ、シャルルの父、退役軍人) サリマタ・カマテ (マドレーヌ・コフィ、シャルルの母) タチアナ・ロホ(ヴィヴィアン・コフィ - シャルルの妹) ほか【あらすじ】2011年のフランス。ロワーヌ地方のシノンに暮らすクロード・ヴェルニイユ(クリスチャン・クラヴィエ)と妻のロビー(シャンタル・ロビー)には4人の娘がおり、長女イザベル(フレデリック・ベル)は、アラブ系の移民でイスラム教徒のラシッド(メディ・サドゥアン)と次女オディル(ジュリア・ピアトン)は、ユダヤ系の移民でユダヤ教徒のダヴィド(アリ・アビタン)三女セゴレーヌ(エミリー・カーン)は、中国系の移民のシャオ・リン(フレデリック・チョウ)と結婚しています。敬虔なカトリックで保守的なド・ゴール主義者のクロードはこれが気に入らず、家族全員が集まった食事会でも差別的な言動を繰り返しますが、彼の怒りとは裏腹に、妻のマリーや娘、その婿達は互いに親交を深めていきます。翌年のクリスマスに家族が再びシノンで会した際も、クロードは婿達に相変わらずの態度を見せますが、フランスの国歌を歌い上げ、ミサにも付き合ってくれる彼らの姿を見て、態度を軟化させます。一方、四女のロール(エロディー・フォンタン)も、コートジボワール出身のアフリカ系の移民の舞台俳優シャルル(ヌーム・ディアワラ)の求婚を受け入れます。しかし、両親の反応を懸念したロールは、シャルルという名のカトリック教徒であるとだけ伝え、アフリカ人であることを伝えることが出来ませんでした。シャルルも故郷で家族に婚約したことを話しますが、父アンドレ(パスカル・ンゾンジ)からフランス人との結婚は許さないと釘を刺されてしまいます。これまで娘たちの為に祝福はしたものの、教会で挙式もできずに内心はがっかりで、異人種の宗教儀式から食事のルールまで、異文化への驚きと気遣いに疲れ果てていたヴェルニイユ夫妻は、ロールの婚約者がカトリック教徒と聞いて安堵するのも束の間、年明けにロールが連れてきたシャルルと対面し、絶望のどん底に突き落とされます・・・。【レビュー・解説】ヨーロッパの中でも移民や異人種間結婚の多いフランスを舞台に、フランスの田舎の中産階級である保守的なフランス人の両親と、娘婿や娘の恋人の移民のアラブ人、ユダヤ人、中国人、アフリカ人が、お互いに面と向かって行う差別ネタの応酬が魅力の爆笑フレンチ・コメディです。異人種間結婚を題材に差別ネタの応酬が魅力の爆笑フレンチ・コメディ異人種間の結婚が多いフランスフィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督は、フランスでは異人種間の結婚が多いことを新聞で読んで、本作の制作を思い立ったといいます。フランスが異人種間結婚のチャンピオンだということを新聞で読んで、非常に面白いテーマだと思ったのがきっかけです。私の家族はかなりの大家族ですが、この作品と同じように、中産階級で、カトリックで、兄弟が4人いて、異人種間結婚をしている人もいます。自分たちの経験談を盛り込みながら、いろんなコミュニティが寄せ集まって形成されている現代のフランス社会のポートレートを描けるのではないかと思ったんです。これまでそれぞれのコミュニティをあまりポジティブに描いてこなかったことへの反省と、社会を豊かにしてくれるコミュニティにオマージュを捧げるという意味も含まれています。(フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督)https://wotopi.jp/archives/35344差別ネタの応酬が痛快フランスの田舎の保守的ブルジョアの両親と移民のアラブ人、ユダヤ人、中国人、アフリカ人の娘婿や娘の恋人たちが繰り広げる歯に衣着せない悪口や差別ネタが一種爽快なほど面白く、本作の最大の魅力になっています。シナリオを書いている段階から、これはタブーなのかなと考えるシーンもありました。最初はおそるおそる卵の上を歩く様な感じでした。ただ、共同脚本家とは、この段階で自己検閲してしまったら映画は面白くならないだろうと話していました。根底に善意があり、キャラクターが魅力的で、役者におかしみがあれば、きっと上手くいくはずだと一種の賭けに出たんです。ふたを開けてみたら大成功でした。そのような表現規制の傾向は本当に厄介だなと感じています。ポリティカル・コレクトネスや規制を気にし始めたら、コメディは作れません。我々はショッキングなことを描こうとして、映画を作っているわけではありません。人に何かを考えさせたり、人を楽しませたりするときに、ステレオタイプを誇張することは、どうしても必要だと思うんです。この作品でも確かにデリケートな問題を扱っていますが、そのようなことを怖がっていたら、喜劇にはなりません。面白く感じてもらうために我々が自己検閲をしてはいけないのではないかと思い、この作品を作り、人々に大胆なギャグを受け入れる素地があることがわかりました。なので、今後もそういった傾向とは闘っていきたいと思っています。もちろん善意があるのは前提ですけどね。世界や社会、描く人物に対して、悪意がなければ、何を言っても受け入れられると思います。http://www.cinemacafe.net/article/2016/03/21/38969.htmlhttp://realsound.jp/movie/2016/03/post-1169.html驚くほど高かった評価フランスでは公開と同時に、社会階級階級や住んでいる場所に関係なく多くの観客が押し寄せ、なんとフランスの人口6600万人に対して1,300万人を動員するなど、2014年の年間興収成績1位のヒットとなりました。懸念された差別ネタへのクレームも、白人の知識階級からちょっとクレームがあったくらいで、移民のコミュニティからのクレームはありませんでした。白人の知識階級からあったというクレームに関して、ショーヴロン監督は次のように述べています。保守層からは、まるで人種を混成させることがすべていいかのように描いていて短絡的すぎる、左派からは差別的だと言われました。それぞれ気に入らないところがあったんだろうけど、少数派です。聞く耳を持たない人たちに特に反論はしません。大方のフランス人たちは、きちんとメッセージを受け取ってくれたので、嬉しいです。(フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督)http://www.cinemacafe.net/article/2016/03/21/38969.html本作は146ヶ国で公開され、ドイツやイタリア、ベルギーなど移民が多い国だけではなく、メキシコ、スペイン、韓国などでも高い興行収入を記録、チリなど移民とあまり関係ない国でも好評でした。どういうわけか日本は146番目と最後に公開された国というのがなんとも残念ですが、歯に衣着せない差別ネタなどフランス的な部分がありながら、結婚、寛容、人種差別のような他の国の人々も感じているテーマが盛り込まれており、滑ることなく人々の心を掴んだのではないかと思います。差別ネタ満載なのに、何故、非難されない?昨年の大晦日に放送されたお笑い番組「絶対に笑ってはいけない」で、ダウンタウンの浜田雅功がアメリカの俳優エディー・マーフィに扮して、肌を黒くメイクしたことを受けて、イギリスのBBCやアメリカのメディアのニューヨークタイムズなどの海外メディアから、「人種差別的」と非難の声が上がりました。これに関しては日本国内でも様々な見方があるようですが、映像ではなく言葉でとは言え、差別ネタ満載にも関わらず、本作が非難の対象にならないばかりか、非常に高い評価を得ていることが興味深いです。この理由は、おそらく、アラブ系、ユダヤ系、中国系、アフリカ系など多くの移民コミュニティがあるにも関わらず、これらをポジティブに描いたフランス映画は多くない保守的なフランス人のみならず、アラブ系、ユダヤ系、中国系、アフリカ系と複数の移民を扱い、すべての人たちが偏見を持っていることを平等に描いている花婿達は社会的に成功しており、中産階級出身の娘たちと社会的階層もそれほど離れていない(階層が違えば、問題はさらに難しくなるかも)綺麗事の愛を描くのではなく、様々な問題がある中での愛を、温かい眼差しで描いているといったあたりで、これらがしっかりと観客に伝わっている為ではないかと思われます。ロバート・ダウニー・Jr.が黒塗りメイクで登場する「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(2008年)や、本物の障害者を障害者の役で必ず登場させ、悪い障害者も平気で描くファレリー兄弟の作品の数々など、一見差別的でありながら、高い評価を得ている作品が他にもありますが、日本のコメディもそうした高みに登れるかどうか、興味深いところです。異文化コミュニケーションをうまくやるには?ショーヴロン監督の実家は、映画の主人公であるヴェルヌイユ家と同じカトリック教徒で、彼の兄弟はマグレブ(リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコなどイスラム系の北西アフリカ諸国の総称)系女性と結婚、監督僕自身もアフリカ系の女性と結婚する予定と、まさに映画を地で行くようですが、異人種間の結婚をうまくやるコツについて、監督は次の様に語っています。違う国の人との関係をうまくいかせるポイントは、あまり深く話さないことです。つきつめていってはダメです、100%わかりあえるはずはないのですから。あと政治の話もあまり深くしないほうがいいです。映画で食事を大切にしているのは、食事を共にすると同胞意識が生まれるからです。距離が縮まりますが、そこがいいのです。あとは、異文化コミュニケーションで大切なのは笑いです。この映画をシリアスドラマとして描いていたら、観客は受け止められなかったかもしれません。もともと僕はコメディしか作れませんが、笑いは人を結びつける力があります。この映画は、どの国でも、同じシーンで笑いが起きて、そこがいいと思います。笑いには人種を超えて、人と人を結びつける力があります。(フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督)https://wotopi.jp/archives/35344フランスらしさが溢れるコメディ因みにこの映画の上映会のあと、ある夫婦がショーヴロン監督のところに来て「自分たちの家族の問題と一緒です。私たちの物語のようでした。」と感想を述べたそうです。そこで、うまくいっているか監督が尋ねたところ、その夫婦は「いまだ悪夢のようです・・・。」と、答えたそうです。普通の結婚でもいいことばかりではありませんから、ましてや異人種間の結婚では不満が出てきても不思議はありません。イギリスのコメディならばこうした現実を自嘲的に描きそうなところですが、差別ネタで不満をたらたら言っておきながら、二重人格的にコロッと愛で包んでしまうのは、フランスのコメディならではないかと思われます。なお、原題の「Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ?」 は「我々は神に何をした?」という意味で、予期しない不幸な出来事を嘆く時に使用される慣用的な表現です。敬虔なカトリックであるヴェルニイユ夫妻の四人の娘が、こともあろうに揃いも揃って異教徒や異人種に嫁いでしまうという、夫妻の不幸の嘆きを暗示していますが、タイトルにこうした反語的な表現を持ってくるあたりにもフランスらしさを感じます。クリスチャン・クラヴィエ(左、クロード・ヴェルヌイユ、四姉妹の父、カトリック、保守的)シャンタル・ロビー(右、マリー・ヴェルヌイユ、クロードの妻、四姉妹の母)メディ・サドゥン(左、ラシッド・ベナセム、長女の夫、アラブ人、国選弁護士)フレデリック・ベル(右、フイザベル・ヴェルヌイユ、長女、弁護士) アリ・アビタン(左、ダヴィド・ヴェニシュ、次女の夫、ユダヤ人、事業に失敗し無職)ジュリア・ピアトン(右、オディル・ヴェルヌイユ、次女、歯科医)フレデリック・チョー(左、フシャオ・リン、三女の夫、中国人、銀行の幹部)エミリー・カン(右、セゴレーヌ・ヴェルヌイユ - 三女、画家)ヌーム・ディアワラ(右、シャルル・コフィ、 四女の恋人、コートジボワール出身、舞台俳優)エロディ・フォンタン(左、ロール・ヴェルヌイユ、四女、テレビ局の法務部に勤務)パスカル・ンゾンジ(手前右、アンドレ・コフィ、シャルルの父、退役軍人)サリマタ・カマテ (手前左、マドレーヌ・コフィ、シャルルの母)タチアナ・ロホ(奥右、ヴィヴィアン・コフィ - シャルルの妹)【撮影地(グーグルマップ)】姉たちの結婚式が行われるタウンホール 「最高の花婿」のDVD(楽天市場)異人種の結婚や家族愛を描いた映画のDVD(楽天市場) 「招かれざる客」(1967年)「ぼくの国、パパの国」(1999年)・・・VHS 「エデンより彼方に」(2002年) 「しあわせの隠れ場所」(2009年) 「ベル ある伯爵令嬢の恋」(2013年) 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(2014年) 「ラビング 愛という名前のふたり」(2016年) 「ア・ユナイテッド・キングダム」(2016年)・・・輸入版、リージョン1、日本語なし
2018年01月18日
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「パトリオット・デイ」(原題:Patriots Day)は、2016年公開のアメリカのドラマ映画です。2013年に発生したボストン・マラソン爆破テロ事件に関し、Casey Sherman/Dave Wedge の「Boston Strong」を原作に、ピーター・バーグ監督、マーク・ウォールバーグら出演で、事件発生からわずか102時間で犯人逮捕に至った顛末を、ボストン警察殺人課の刑事の目を通して生々しく描いています。 「パトリオット・デイ」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ピーター・バーグ脚本:ピーター・バーグ原案:ピーター・バーグ原作:Casey Sherman/Dave Wedge著「Boston Strong」出演:マーク・ウォールバーグ(トミー・サンダース、ボストン警察 巡査部長) ケヴィン・ベーコン(リチャード・デローリエ 、FBIボストン支局特別捜査官) ジョン・グッドマン(エド・デイヴィス、ボストン警察警視総監) J・K・シモンズ(ジェフ・ピュジリーズ、ウォータータウン警察巡査部長) ミシェル・モナハン(キャロル・サンダース、トミーの妻) アレックス・ウルフ(ジョハル・ツァルナエフ、爆弾テロ事件の犯人(弟)) セモ・メリキッゼ (タメルラン・ツァルナエフ、爆弾テロ事件の犯人(兄)) ジェイク・ピッキング(ショーン・コリアー、マサチューセッツ工科大学の警備警官) ジミー・O・ヤン(ダン・マン、ベンツSUVを所有する中国人留学生) レイチェル・ブロズナハン(ジェシカ・ケンスキー、第117回ボストンマラソンの観客) クリストファー・オシェイ(パトリック・ダウンズ、第117回ボストンマラソンの観客) ジェームズ・コルビー (ビリー・エヴァンス、ボストン警察警視正) マイケル・ビーチ(デヴァル・パトリック、マサチューセッツ州知事) メリッサ・ブノワ(キャサリン・ラッセル、タメルランの妻) カンディ・アレキサンダー(尋問官) ヴィンセント・カラトーラ (トーマス・メニーノ、ボストン市長) ほか【あらすじ】2013年4月15日、毎年4月の第3月曜日「パトリオット・デイ」(愛国者の日)に開催されるボストン・マラソンの最中に、爆弾テロ事件が発生します。歓声は悲鳴に変わり、煙が立ち込める現場には血を流した負傷者たちが倒れています。会場の警備にあたっていたボストン警察殺人課刑事のトミー・サンダース(マーク・ウォールバーグ)は、警察無線で状況を報告しながら、仲間と救護活動を行います。やがて、FBIの指揮で捜査が始まり、特別捜査官のリック・デローリエ(ケヴィン・ベーコン)は事件をテロと断定します。ボストン警察との合同捜査で、監視カメラに映っていた「黒い帽子」と「白い帽子」の2人の男が容疑者として浮かび上がります。民間の調査機関や報道機関が別人を犯人とした情報を流し始めた為、デローリエ特別捜査官は、二人の容疑者、タメルラン・ツァルナエフ(セモ・メリキッゼ)とジョハル・ツァルナエフ(アレックス・ウルフ)の顔写真を公開します。テレビで報道されていることを自宅で知った兄弟は、さらなるテロを行うためニューヨークへ向かおうとします。タメルランは銃を欲しがるジョハルに「自分で奪え」と命じ、マサチューセッツ工科大学構内で警備警察官のショーン・コリアー巡査(ジェイク・ピッキング)を射殺しますが、通行人に見つかり逃走します。兄弟は路上駐車していたメルセデス・ベンツのSUVに目をつけ、所有者の中国人留学生ダン・マン(ジミー・O・ヤン)を脅して人質にして乗っ取ります。犯人がATMでダンの口座から現金を下ろし、ガソリンスタンドに立ち寄った際に、ダンは隙を突いて脱出、向かいの店に駆け込んで警察に通報し、警察はGPSで犯人が乗った盗難車を捜索します。ウォータータウンで停車中の車を見つけたパトカーが近づくと、タメルランがいきなり拳銃を発砲、応援のパトカーが駆け付ける中、住宅街で銃撃戦が始まります。兄弟は手作りの手榴弾で激しく抵抗、多くの警察官が負傷します。ベテラン警官のジェフ( J・K・シモンズ)がタメルランの足を撃ちますが、ジョハルは車で兄のタメルランを轢いて逃走します。翌日、ボストン広域に外出禁止令が出され、周辺地域に警察、FBI、SWATが出動、各家庭を1軒ずつ捜索するローラー作戦が展開されます。ある家の主人がシートで覆った庭のボートの異変に気付き、警察に通報、すぐに大勢の武装警官が駆け付け、ボートを包囲します・・・。【レビュー・解説】ボストン・マラソン爆破テロ事件の顛末を実話に基づいてスリリングに描きながら、テロに屈しない市民の姿を讃えた、タイムリーで感動的なドラマ映画です。ボストン・マラソン爆破テロの顛末をスリリングに描いた感動的ドラマ映画新たな局面に入ったテロとの戦い9.11同時多発テロに対してブッシュ政権が宣言した対テロ戦争は、2011年の首謀者オサマ・ビンラディンの暗殺をもって一旦、終焉しました。この10年の間にイスラム過激派の勢力図は大きく変っており、影響力を失ったビンラディンを暗殺したところでテロはなくならないとの見方はありましたが、9.11以降、国内でイスラム過激派によるテロを完璧に封じ込めきたことはアメリカにとって大きな成果でした。しかし、2013年のボストン・マラソン爆破テロは、そんなアメリカの自負を打ち砕く、衝撃的な事件となりました。この事件はひとつの潮目となり、以降、アメリカではイスラム過激派や右翼過激派などによるテロが頻発するようになります。アメリカ国内のテロ事件(2013年以降)発生日事件名政治的傾向死者負傷者2015年6月17日チャールストン教会銃撃事件右翼過激派人種差別主義912015年11月27日コロラドスプリングス病院銃撃事件キリスト教原理主義人工中絶への反感392015年12月2日 サンバーナーディーノ銃乱射事件イスラーム過激派スンナ派14242016年6月12日フロリダ銃乱射事件同性愛嫌悪イスラーム過激派?49582016年9月17日ニューヨーク・ニュージャージー連続爆発事件イスラム過激派0352017年5月26日ポートランド列車殺傷事件右翼過激派イスラム嫌悪212017年8月12日ユナイト・ザ・ライト・ラリー自動車突入事件右翼過激派1192017年10月31日ニューヨーク・マンハッタン自動車突入テロ事件イスラム過激派8122017年12月11日ニューヨーク・バスターミナル爆破事件イスラム過激派04また、欧州でも人が集まるソフトターゲットを狙った大規模なテロ事件が頻発するようになります。欧州のテロ事件(2013年以降)発生日国名事件名政治的傾向死者負傷者2014年5月24日ベルギーベルギー・ユダヤ博物館発砲事件イスラム過激派402015年1月7日フランスシャルリー・エブド襲撃事件イスラム過激派12112015年1月9日フランスユダヤ食品店人質事件イスラム過激派492015年2月14-2015年2月15日デンマークコペンハーゲン連続銃撃事件イスラム過激派252015年6月26日フランスサン=カンタン=ファラビエ工場襲撃事件イスラム過激派122015年11月13日フランスパリ同時多発テロ事件イスラム過激派スンナ派1303682016年3月22日ベルギーベルギー連続テロ事件イスラム過激派スンナ派323402016年7月14日フランスニース・トラックテロ事件イスラム過激派854342016年7月22日ドイツミュンヘン銃撃事件右翼過激派反トルコ主義9362016年12月19日ドイツベルリン・クリスマスマーケット襲撃テロ事件イスラム過激派11562017年3月22日イギリスロンドン・ウェストミンスター襲撃テロ事件イスラム過激派5402017年4月7日スウェーデンストックホルム・トラック突入テロ事件イスラム過激派5152017年4月20日フランスパリ・シャンゼリゼ通り警官銃撃事件イスラム過激派132017年5月22日イギリスマンチェスター・アリーナ自爆テロ事件イスラム過激派22592017年6月3日イギリスロンドン橋・バラマーケット襲撃テロ事件イスラム過激派7482017年6月19日イギリスロンドン・フィンスベリー・パーク襲撃事件(捜査中)1102017年8月17日スペインバルセロナテロ攻撃事件イスラム過激派13110+素早く映画化に動いたハリウッドボストン・マラソン爆破テロはそれほど昔の話ではありませんが、世界的に有名なボストン・マラソンが標的にされたこと、犯人が住宅街に潜んでいたことなど、非常に身近な事件として記憶に残っています。事件から一年半もたたないうちに、ハリウッドでは三本の映画が動き出していました。「Boston Strong」(20世紀フォックス):「ザ・ファイター」(2010年)のポール・タマシーとエリック・ジョンソンの脚本で、犯人捜査にフォーカス。「Stronger 」(ライオンズゲート):ジョン・ポロノ脚本で、犠牲者を救助した見物人のジェフ・ボーマンにフォーカス。「Patriots Day」(CBSフィルムズ):「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015年)のマット・チャーマン脚本で、テレビ・ドキュメンタリー「60ミニッツ」の報道に基づき、最も事実に即している。「テッド」(2012年)のプロデューサー、スコット・ステューバーから「Patriots Day」を紹介されたマーク・ウォールバーグはボストン・マラソン爆破テロの映画化は時期尚早と考えましたが、脚本を読んでボストンのコミュニティの反応に触発され、彼が生まれ育ったボストンの街を敬意をもって細やかに語る必要があると感じ、世界中で似たようなことが起きていること、既に三本の映画が動いおり彼がやらねければ誰か別の俳優がやるであろうことも考え合わせて、CBSフィルムズと出演契約を結びます。この時、ウォールバーグはピーター・バーグ監督の「バーニング・オーション」(2016年)を撮影中でしたが、数週間もたたないうちにピーター・バーグ監督もこのプロジェクトに参加します。ちょうど『バーニング・オーション』を終えようとしている時のことでした。通常、撮影を終えたら休暇に入るわけですが、ウォールバーグは私はボストンに連れていき、私たちは何人かのキー・パーソンに会いました。私は、すぐにやろうという気になりました。「バーニング・オーシャン」や「パトリオット・デイ」のような映画を手がけ、実在の人物たちとともに過ごすと、彼らの実話に感染してしまうのです。ボストン警察の警視総監エド・デイヴィスがオバマ大統領から電話を貰い、「いいか、エド、こんなことが起きて残念だ。君が望むものは何でも与える。いつでも電話してくれ。でも、絶対にこの事件を解決するんだ。」と言われた時にどんな気持だったか、そんな話をじっくりと聞くわけです。(ピーター・バーグ監督)http://ew.com/movies/2017/01/10/mark-wahlberg-peter-berg-patriots-day-interview/二つの脚本を統合 一方、CBSフィルムズとステューバーは、20世紀フォックスから「Boston Strong」を購入します。「Boston Strong」は「Patriots Day」ほど事実に即したものではありませんでしたが、犯人捜査をするボストンの警官が強力な主人公となる面白い作品でした。「Patriots Day」が描く事実はとても正確でしたがドラマとしての緊張感に欠けていたことから、バーグ監督とウォールバーグはふたつの脚本を統合する作業に入ります。単なるアクション映画にしたくなかったバーグ監督は、何度もボストンを訪れ、カージャックをされたダン・マンを始め、関連部署の人々、医者など、すべての警官から、手足を失った人々、ツァルナエフ兄弟が住んでいたケンブリッジのアパートの近隣の人々まで、何ヶ月もかけて関係者の話を聞きました。すべてに関わった一人の警官がいるわけではありません。映画を総合進行する誰かが必要で、それがウォールバーグの役でした。すべてに関与したわけではない警官をまがい物の勇気で飾り立てるよりも、ウォールバーグにボストン警察の警官たちを象徴させる方が意味があると思ったのです。(ピーター・バーグ監督)実際、数多くの関連部署が一緒に動かねばなりませんでした。組織間の軋轢もありましたが、すべての軋轢を二時間の映画の中に詰め込むことはできませんでした。ボートでの容疑者の確保、逮捕に直接関わった警官だけでも20人から話を聞いています。(マーク・ウォールバーグ)『羅生門』(1950年)のような世界です。あなたの真実があり、私の真実があり、客観的な真実があります。人々は各人各様に記憶するので、我々は多くの話を濾過する必要がありました。(ピーター・バーグ監督)早い段階でバーグ監督に言ったんです、『すべての関係者を満足することはできないけど、誰もが誇れる映画にすることはできる』ってね。それが我々の仕事ですよね?語り部となり、正しく伝え、人々を讃え、一人でも多くの人に映画を観てもらうんです。(マーク・ウォールバーグ)http://ew.com/movies/2017/01/10/mark-wahlberg-peter-berg-patriots-day-interview/かくして、すべてのキャラクターが実在の人物だが、主人公のトミー・サンダースとその妻キャロル・サンダースは象徴的な架空の人物という、ユニークな物語が実現しました。主役は地元の人々物語はマーク・ウォールバーグ演ずるトミー・サンダース巡査部長の視点を主に展開しますが、彼は必ずしも英雄的な活躍をするわけではありません。むしろ主役は、ボストンに暮らす人々です。 J・K・シモンズ演ずるジェフ・ピュジリーズは通勤の途中にドーナツを買うのが習慣のウォータータウン警察の巡査部長で、住宅街でテロリストと激しい銃撃戦を交えた事件を担当するFBIボストン支局特別捜査官のリチャード・デローリエ(ケヴィン・ベーコン) 、ボストン警察警視総監エド・デイヴィス(ジョン・グッドマン)は、ともにボストンで働いているだけではなく、ふたりとも地元のマサチューセッツ州出身まだあどけなさが残るMIT警備警官のショーン・コリアーは、大学構内で銃が目当てのテロリストに襲撃され、命を落としながらも銃を守り通した中国人留学生ダン・マンは、テロリストにカージャックされるものの隙を観て脱出、暗唱していたGPS番号で警察の迅速なテロリスト追跡に大きく貢献したパートナーのジェシカ・ケンスキーにボストン訛を教えるボストン出身のパトリック・ダウンズは、二人でマラソン観戦中に爆破テロにあい、二人とも足を失なったが、ダウンズは三年後、義足でボストン・マラソンを完走した証拠保全に為に爆発現場でずっと少年の遺体に付き添った名も無き警官は、最後に搬送される少年の遺体を敬礼で見送った・・・因みに、容疑者の確保に際して屋根の上からボートを狙いながらSWATチームと滑稽なやりとりをするフレーミングハム署の女性警官は、架空の人物です。実はボートに潜んだ容疑者の確保には、マサチューセッツ湾交通警察のSWATチームがアサインされていましたが、現場にはソレ以外も含めて当局関係者が2500人も集結しており、そのうちの数百人は自発的に集まった人々でした。バーグ監督は、そうした地元の熱意を表現するためにこのエピソードを織り込んだそうです。権利通告なしの尋問ところで、本作には、タメルランの妻キャサリンを権利通告なしに尋問する謎の尋問官が出てきます。映画の中ではその組織が明らかにされませんが、これは FBI の The High-Value Detainee Interrogation Group(重要抑留者尋問グループの意) です。これは強面のメンバーで構成されるグループで、差し迫ったテロに関する情報を持っている人々を、憲法に規定される権利通告なしに尋問できるという特殊なグループです。実際にどのような尋問が行われたかは明らかにされませんでしたが、彼らは明るみに出ることなしに脚本の作成に協力したといいます。アメリカは綺麗事だけではなく、テロリスト同様、強硬に対応する手段を持ち合わせていることを示唆するために、バーグ監督はこのエピソードを入れたといいます。タイムリーだった公開タイトルの「パトリオット・デイ」(愛国者の日)とは、アメリカのマサチューセッツ、メイン、ウィスコンシン州の3州で4月の第3月曜日に制定されている祝日で、毎年ボストン・マラソンが開催される日でもあります。世界的に有名なボストン・マラソンは、地元の人々にとって非常に重要なイベントですが、それを爆破テロで台無しにされた人々が、文字通り、コミュニティへの思いと愛で立ち上がる姿が感動的です。特にテロで足を失ったパトリック・ダウンズが、三年後に義足でボストン・マラソンを完走、ゴール直後に同じく足を失った妻を抱きしめる終盤のシーンは、まさにテロに屈しない「Boston Strong」の精神を象徴するかのような感動的な出来事です。事件から一年半足らずでこの映画が動き出した時、あらゆる方面から時期尚早との声があったそうですが、この事件の後、米国のみならず欧州でもソフトターゲットのテロが多発していることを考えれば、結果的にタイムリーだったと言えます。本作はこうしたテロに対する人々の関心を集め、市民に何が出来るのか考える良い機会を提供しています。ウォールバーグとバーグ監督のコラボ作品「ローン・サバイバー」(2013年)、「バーニング・オーシャン」(2016年)に続いて、本作はウォールバーグとバーグ監督のコラボによる実話ドラマシリーズの第三弾です。彼らは同じエージェントを使っており、二人は一緒にやるべきだとエージェントはいつも言っていたそうですが、「ブギーナイツ」(1997年)以来、ウォールバーグのファンだったというバーグ監督は忙しいウォールバーグのスケジュールをなかなか押さえることができず、長い間、二人が組むことはありませんでした。そんな折、ウォールバーグは、バーグ監督が「ローン・サバイバー」(2013年)の制作に悪戦苦闘しているという噂を耳にします。彼はバーグ監督に会って話を聞き、友人からファイナンスを引っ張り出しました。この時に、彼はバーグ監督やそのワーキング・スタイルに惚れ込み、一緒に組むようになったといいます。本作の後、彼らは次作の「Mile 22」にとりかかっていますが、今度はどのようなドラマ映画を見せてくれるのか、公開が楽しみです。マーク・ウォールバーグ(トミー・サンダース、ボストン警察 巡査部長)マーク・ウォールバーグ(1971年〜)は、ボストン出身のアメリカの俳優、プロデューサー、歌手。貧しい家庭に生まれ、高校中退後、様々な職につくが長続きせず、ドラッグや暴力沙汰に明け暮れ、遠足中の黒人児童たちに投石して負傷させたり、コカインとアルコールで酩酊してベトナム人男性を襲撃し木の棒で殴りつけ殺人未遂の容疑で起訴され、感化院に収容された。成人後も、人に言いがかりをつけて暴力を振るい、顎の骨を砕く重傷を負わせるなど、ボストン警察には25回も世話になる。やがて反省し、自身の行いを改める決心、1994年に映画デビューして以来、仕事に専念している。「ディパーテッド」(2006年)の演技が高く評価され、第79回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、 主演・製作を務めた「ザ・ファイター」(2010年)が第83回アカデミー作品賞にノミネートされている。ケヴィン・ベーコン(リチャード・デローリエ 、FBIボストン支局特別捜査官)ケヴィン・ベーコン(1958年〜)は、フィラデルフィア出身のアメリカの俳優。17歳で地元を離れ、ニューヨークで初舞台を踏む。「アニマル・ハウス」(1978年)で映画デビュー、着々とキャリアを重ね、「フットルース」(1984年)でブレイクする。以降、「大災難P.T.A.」(1987年)、「JFK }(1991年)、「ア・フュー・グッドメン」(1992年)、「ミスティック・リバー」(2003年)、「フロスト×ニクソン」(2008年)、「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」(2011年)、「COP CAR/コップ・カー」(2015年)などのヒット作に出演している。ジョン・グッドマン(エド・デイヴィス、ボストン警察警視総監) ジョン・グッドマン(1952年〜)はミズーリ出身のアメリカの俳優。オフ・ブロードウェイの舞台に立った後、テレビにも出演するようになり、1983年に映画デビューする。「バートン・フィンク」(1991年)、「ビッグリボウスキー」(1998年)と、コーエン兄弟監督作品で有名になる。「カーズ」(2006年)、「モンスターズ・ユニバーシティ」(2012年)など、アニメ作品への声の出演も少なくない。J・K・シモンズ(ジェフ・ピュジリーズ、ウォータータウン警察巡査部長) J・K・シモンズ(1955年〜 )は、デトロイト出身のアメリカの俳優。モンタナ大学で作曲を学び、1992年にはブロードウェイ・ミュージカルに出演、1994年にはオペラにも出演している。「スパイダーマン」シリーズの新聞編集長役で知られ、「セッション」(2014年)では厳格な音楽教師を演じ、第87回アカデミー賞で助演男優賞を受賞している。テレビドラマシリーズへの出演も多い。ミシェル・モナハン(キャロル・サンダース、トミーの妻)ミシェル・モナハン(1976年〜)は、アイオワ州出身のアメリカの女優。2000年にテレビドラマの端役でデビュー、翌年に映画デビュー。徐々に大作に出演するようになり、「M:i:III」(2006年)ではイーサン・ハントの妻ジュリアを演じた。「ボーン・スプレマシー」(2004年)、「キスキス、バンバン」(2005年)、「ゴーン・ベイビー・ゴーン」(2007年)、「ミッション:8ミニッツ」(2011年)などに出演している。 【動画クリップ(YouTube)】犠牲者が義足でボストン・マラソンを完走テロで足を失ったパトリック・ダウンズは、三年後に義足でボストン・マラソンを完走、ゴール直後に同じく足を失った妻を抱きしめる。ボストン・マラソンはボストン市民にとって特別なイベントであり、まさにテロに屈しない「Boston Strong」の精神を象徴するかのような出来事。【撮影地(グーグルマップ)】ボストン・マラソンのスタート地点ボストン・マラソンのゴール地点爆破事件の現場サウス・ウェイマス海軍飛行場跡地にセットを作って、撮影している。MITの警備警察官が銃撃された現場ダン・マンが脱出し、警察に通報したガソリンスタンド左のシェルのスタンドで犯人が給油中に脱出、右のモービルのスタンドに駆け込んで助けを求めた。兄弟と警官らの激しい銃撃戦が行われた場所犯人が庭のボートに潜んでいた家近隣住民の反対があった為、実際とは異なる場所に撮影されている。 「パトリオット・デイ」のDVD(楽天市場)【関連作品】「パトリオット・デイ」の原作本(楽天市場) Casey Sherman/Dave Wedge "Boston Strong: A City's Triumph over Tragedy"ピーター・バーグ監督xマーク・ウォールバーグのコラボ作品(楽天市場) 「ローン・サバイバー」(2013年) 「パトリオット・デイ」(2016年) 「バーニング・オーシャン」(2016年)ピーター・バーグ監督作品のDVD(楽天市場) 「プライド 栄光への絆」(2004年)マーク・ウォールバーグ出演作品のDVD(楽天市場) 「ブギーナイツ」(1997年) 「スリー・キングス」(1999年) 「ディパーテッド」(2006年) 「ザ・ファイター」(2010年)ボストンを舞台にした犯罪映画のDVD(Amaozn) 「ミスティック・リバー」(2003年) 「ディパーテッド」(2006年) 「ゴーン・ベイビー・ゴーン」(2007年) 「ザ・タウン」(2010年)「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)
2018年01月13日
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「僕と世界の方程式」(原題:X+Y、米題:A Brilliant Young Mind)は2014年公開のイギリスのドラマ映画です。モーガン・マシューズ監督のドキュメンタリー映画「Beautiful Young Minds」(2007年)をベースに、同監督、エイサ・バターフィールドら出演で、数学に突出した才能を持ちながらも心を閉ざす少年が、国際数学オリンピックのイギリス代表候補となり、台湾での合宿を経て、愛に目覚めていく姿を瑞々しく描いています。 「僕と世界の方程式」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:モーガン・マシューズ脚本:ジェームズ・グレアム原案:モーガン・マシューズ/ジェームズ・グレアム出演:エイサ・バターフィールド(ネイサン・エリス) レイフ・スポール(マーティン・ハンフリーズ) サリー・ホーキンス(ジュリー・エリス) エディ・マーサン (リチャード) ジョー・ヤン(チャン・メイ) ジェイク・デイヴィス(ルーク・シェルトン) アレクサ・デイヴィーズ(レベッカ) マーティン・マッキャン(マイケル・エリス) アレックス・ロウザー(アイザック・クーパー) エドワード・ベイカー=クローズ(9歳のネイサン・エリス) ほか【あらすじ】イングランド中部シェフィールドに住む、9歳の少年ネイサンは自閉症スペクトラムと診断されます。ネイサンは大好きだった父マイケル(マーティン・マッキャン)を事故で亡くし、母ジュリー(サリー・ホーキンス)や周囲の人々に心を閉ざしてしまいます。彼は他人とのコミュニケーションが苦手な反面、数学に関しては飛びぬけた才能を持っていました。普通の学校では対応できない息子の才能を伸ばそうと、ジュリーはかつての数学オリンピック出場者で多発性硬化症を患う数学教師マーティン(レイフ・スポール)に特別な指導を託します。数年後、マーティンの献身的な教育の成果もあり、ネイサン(エイサ・バターフィールド)は数学オリンピックのイギリス代表チームの候補に選ばれます。代表チームの監督リチャード(エディ・マーサン)の指導のもと、ネイサンは台北での合宿に参加します。合宿はイギリスの最大のライバルである中国チームと合同で行われ、ネイサンはそこで中国チームの美しく聡明な少女チャン・メイ(ジョー・ヤン)とパートナーを組むことになります。彼女と共に学ぶ日々は、心を閉ざしていたネイサンの人生をカラフルに変え、彼を大きく成長させていきます。やがて台北での合宿が終了し、イギリスチーム、中国チームともに数学オリンピック本番のためにイギリスのケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに集結します。帰国したネイサンがメイと難なく会話し、しかも恋愛感情を抱いていることに気づいたジュリーは、ネイサンに「メイが好きなのか」と尋ねますが、愛という概念を理解できないネイサンは、自分がメイが好きなのかどうか判断がつきません。そしてオリンピック当日、ネイサンは大きな選択を迫られることになります・・・。【レビュー・解説】数学オリンピックを目指す自閉症スペクトラムの少年という刺激的な題材を、リアルに瑞々しく描く一方で、思慮深く、暖かい眼差しで愛の大切さ訴える、ドキュメンタリーでじっくりと被写体と向き合ってきた監督ならではの、質の高いドラマ映画です。数学オリンピックを目指す自閉症スペクトラムの少年をリアルに描くドキュメンタリーから生まれたフィクションモーガン・マシューズ監督は、剥製技術のワールド・コンペのドキュメンタリーを制作、これがBBC2で放映され、数多くの賞の対象になるなど高い評価を得ます。このような、かつてないようなワールド・コンペのドキュメンタリーをシリーズで撮ることをBBCから依頼された彼は、理髪のワールド・コンペ、エルビスのモノマネのワールド・コンペ、世界的な伝書鳩レースなどのドキュメンタリーを企画しましたが、うまくいくかどうかわからなかったので、バックアップが必要と考えました。この時にプロデューサーから紹介されたのが、数学オリッピックのイギリス代表チーム候補の少年少女たちでした。彼らはずば抜けた才能に恵まれていましたが、その一方で厳しい時を過ごしていました。それは、彼らが心身の変化が著しい10代の真っ只中でいたこと、そして個性的なメンバーの何人かは自閉症スペクトラムでコミュニケーションや社会生活への適応が難しかったことによります。人類の将来を作り上げるような優秀な子供たちが日常生活に苦労していることを、彼は非常に興味深く感じます。マシューズ監督は、この数学オリンピックと素晴らしいメンバーたちを題材に、ドキュメンタリー映画「Beautiful Young Minds」(2007年)を制作します。そして、さらに5年以上の歳月をかけてドラマ映画にしたのが本作です。それは私には未知の豊かな世界でした。数学への興味の有無とか、得意不得意といったことではありません。こうした信じがたい才能を持った若者達は、我々とは別の世界の存在のように感じられました。私は凡人で、彼らは魔法使いでした。私にとって彼らはヒーローでしたが、彼らはそうしたことに気づいておらず、彼らの才能は彼らにとって重荷でさえあったのです。彼らは学校で同年代の少年少女に虐められ、仲間はずれにされていました。ドキュメンタリーの良い点は、リアルであり、撮る時に何が起こるのかわからなくても一向にかまわないことですが、そうした物語りをしながら、いつかしら、創造的な挑戦をする必要があると感じました。それが、「僕と世界の方程式」です。(イギリス代表チーム候補者の中で)特にダニエルに魅力を感じました。ドキュメンタリーを通して何人かの型破りな人々に会いましたが、ダニエルの旅にはとても興味深いものがありました。彼は中国に行って、中国語を独学し、中国人の恋人を連れて帰ってきました。しつこすぎるのでこの映画のエンディングでは割愛していますが、数ヶ月後には結婚してしまいまいました。彼がアスペルガー症候群と診断されたのも、ドキュメンタリーの撮影期間中の話です。彼は彼自身の数学を見つけるために旅をし、数学オリンピックを戦いますが、この話はつまるところ、彼の極めて個人的な体験でもあるのです。(モーガン・マシューズ監督)http://www.scotcampus.com/interview-morgan-matthews-x-y https://www.filmfestivals.com/blog/martin_i_petrov/glasgow_ff_2015_interview_with_morgan_matthews_for_xy実話が物語の核本作はフィクションですが、核となる部分はモデルとなったダニエルの実体験に基づいています。ダニエルは、彼にとって普通のコミュニケーションが難しい、どういう顔をしていいのかわからないと言います。彼は人の顔の表情も読むことができず、また何を話していいのかもわかりません。何が適切で、何が不適切なのか、わからないのです。だから彼は殻に閉じこもり、基本的なコミュニケーションさえトラウマになってしまうのです。しかし、彼は中国文化に出会い、惹かれます。イギリスの人々と違い、中国の人々は数学を讃えてくれました。中国では偉大な数学者はヒーローです。数学オリッピックのチームは、中国では普通に子供たちと呼ばれますが、イギリスではオタクとか、マニアと蔑視されます。彼は中国文化を受け入れ、中国語の独学を始めます。これはドキュメンタリーで追った実在の少年のひとり、ダニエルの話です。彼は三ヶ月間、中国語を勉強し、中国に行って中国人の恋人を連れて帰ってきます。中国で中国語を学んだ時、彼は言葉だけではなく、顔の表情や手の仕草も一緒に学ぶことができたと言います。彼は言葉と一緒に表情も学んだのです。英語よりも中国語で話している方が、彼には心地よく感じられました。彼は、自分を奇妙と感じることはありませんでした。中国人には、欧米人は皆、奇妙に映るに違いないと思っていたのにもかかわらずです。(モーガン・マシューズ監督)http://wegotthiscovered.com/movies/exclusive-interview-with-x-ys-asa-butterfield-and-jo-yang-plus-director-morgan-matthews/脚色された部分と創造的挑戦ドキュメンタリー自体が感動的な話ですが、本作では次の部分が脚色されています。実際の合宿は中国で行われ、台湾を中国として撮影する予定だったが、ロケ地があまりにも魅力的だった為、脚本の合宿の舞台を中国から台湾に書き変えた。数学オリンピックはスロベニアで行われたが、ストーリーをシンプルにする為か、本作ではイギリスのケンブリッジに変更された。ダニエルの父は健在だが、本作ではネイサンが9歳の時に事故死する設定になった。ダニエルのメンターはミギー・ビラーというヨーク・カレッジの数学部門のトップを務める女性だが、本作では多発性硬化症で夢破れた男性の数学教師という設定になった。特に3.と4.の脚色が興味深いところですが、これらはマシューズ監督が不幸を自閉症スペクトラムから拡散し、普遍的なテーマである「愛」にフォーカスする為の創造的な挑戦と思われます。即ち、最愛の父を失うことはネイサンが心を閉ざすきっかけになるだけではなく、意思疎通もままならない自閉症スペクトラムの息子を一人で育てなけらばならない未亡人ジュリーの孤独と困難を際立たせます。多発性硬化症で夢破れた孤独な男性数学教師は、ネイサンに数学を教えるだけではなく、自身が孤独と困難と戦う中、ジュリーとほのかな想いを交わすようになります。これらはネイサンがチャン・メイとの触れ合いを契機に、愛し、愛される人の大切さを学んでいくことの伏線となるとともに、本作を単なる数学オリンピックや自閉症スペクトラムに関する話にとどまらない、「愛」という広がりを持った作品として性格づけています。ネイサンは他人と感情を共有するのが苦痛で、最愛の父の死後、殻に閉じこもっていましたが、チャン・メイが触媒となって、封印していた感情を再び開放できるようになります。ある意味、映画の中には孤独や孤立を感じ人が何人もいます。それはネイサンであり、彼の母であり、彼の先生であるマーティンです。しかし、ネイサンは他の二人とは大きく異なります。彼は、数学では解決できない、人生の大きな問題を解決しなければならないことに気づきます。ネイサンは父の死後、あまりに母を遠ざけていましたが、一生、他の人々や過去の幻影を避け続けることはできないことを理解するのです。(モーガン・マシューズ監督) https://www.filmfestivals.com/blog/martin_i_petrov/glasgow_ff_2015_interview_with_morgan_matthews_for_xy当事者にも評価の高い、傑出した演技自閉症スペクトラムスペクトラムを持つネイサンを演じたエイサ・バターフィールドと、その母ジュリーを演じた サリー・ホーキンスのパフォーマンスが傑出しています。バターフィールドは、本作がファイナンスが付く前から脚本を読み始め、今までに演じたことのない役に挑戦することに決めたといいます。彼はドキュメンタリーを見て、ダニエルに会い、ダニエルの頭の中で何が置きているのかを学んで、キャラクターを作り上げました。ダニエルは内向的に見えますが、彼にとってコミュニケーションが難しいのは何故なのか、人の表情を読んで反応する為にどれだけ悪戦苦闘しなければならないのか、それを避ける為にはコミュニケーションそのものを避けるしかないことを、しっかりとバターフィールドに説明しました。これが彼の役作りの大きく貢献しているのは間違いありません。また、バターフィールドは実在するメンバーで同じく自閉症スペクトラムのルークと、スペクトラムの子供たちの特別学校に行き、彼らと共に過ごしています。結果、バターフィールドは内向的ながら共感できるキャラクターの創造に成功しただけではなく、ダニエルをしてネイサンは自分自身だと言わしめました。「この映画を見て、最初の三回は泣いてしまった。自分が感じていたが言葉できなかった事を、この映画は伝えてくれる。」と、ダニエルは語っています。また、実際に自閉症スペクトラムの子供を持つ母親達に会い、役を研究したサリー・ホーキンスのパフォーマンスも出色です。自閉症スペクトラムのコミュニティからの反応としては、映画祭での上映後、たくさんの親御さんが来て、ネイサンの母ジュリーは彼らの自身の経験に近いと話してくれました。また、自身が自閉症スペクトラムとされている人々は、本作を真正であると感じてくれました。(モーガン・マシューズ監督)http://www.scotcampus.com/interview-morgan-matthews-x-y自閉症スペクトラムの多様性自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、従来の自閉症やアスペルガー症候群などが統合されてできた診断名で、コミュニケーションに困難さや、限定された行動、興味、反復行動などなどを特徴とします。症状には多様性があり、連続体として重なり合っているという考え方が、「スペクトラム」という用語に込められています。本作に登場するルークも自閉症スペクトラムですが、ネイサンとは症状の出方も強度もかなり異なります。自閉症スペクトラムといっても多様で個人差があり、社会適応の困難さも各人各様です。一方で、自閉症スペクトラムのコミュニティは映画やテレビでの描かれ方にうんざりしていると言います。というのは、スペクトラムの才能あふれる部分に必要以上にフォーカスしているからです。そんな人はほんの僅かしかいません。自閉症スペクトラムの人ならば、誰でも天才的資質を持っているというのは明らかに誤った見方なのです。そうした状況を考慮し、本作でもネイサンの天才ぶりは必要以上に強調されていません、ネイサンは一人の個性であり、自閉症スペクトラムを代表する人格ではないのです。 <ネタバレ>モデルとなったダニエルは数学オリンピックで銀メダルを獲得していますが、本作のネイサンはギリギリでイギリス代表になるものの、最終的にはオリンピックを途中で棄権、中国に帰ろうとするチャン・メイを追いかけます。本作ではネイサンの数学的な資質をいたずらに強調するのではなく、数学オリンピックという刺激的な題材を通して、10代の子供たちならではの悩み。自閉スペクトラムの主人公や周囲の人々が抱える悩み、そして愛の大切さといった人間的なテーマを追求しています。ドキュメンタリー作品を通してじっくりと被写体と向き合ってきたマシューズ監督ならではの、思慮深く、暖かい眼差しが感じられる、質の高い作品です。<ネタバレ終わり>エイサ・バターフィールド(ネイサン・エリス)エイサ・バターフィールド(1997年〜)は、イングランド出身のイギリスの俳優。7歳から演技を学び始め、2006年にテレビ映画で初めて役を得る。「縞模様のパジャマの少年」(2008年)で主演に抜擢され、いくつかの賞にノミネートされた。5部門でアカデミー賞を受賞したマーティン・スコセッシの監督の「ヒューゴの不思議な発明」(2011年)の主演を務めている。レイフ・スポール(マーティン・ハンフリーズ)レイフ・スポール(1983年〜)は、イングランド出身のイギリスの俳優。舞台及び映画で活動している。サリー・ホーキンス(ジュリー・エリス)サリー・ホーキンス(1976年〜)は、ロンドン出身のイギリスの女優。王立演劇学校を卒業、主にイギリス国内の舞台・テレビ・映画で活躍している。マイク・リー監督の「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年)でベルリン国際映画祭銀熊賞やゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞、ウディ・アレン監督の「ブルージャスミン」(2013年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている演技派の女優。エディ・マーサン (リチャード)エディ・マーサン(1968年〜)は、ロンドン出身のイギリスの俳優。父はトラックの運転手、母親は教師の助手という労働者の家庭に生まれる。舞台で活動を始め、1992年にテレビに初出演する。マイク・リー監督の「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年)で、全米映画批評家協会賞助演男優賞などを受賞している。ジョー・ヤン(チャン・メイ)ジョー・ヤンは中国出身のイギリスの女優。中国に生まれ、8歳の時からロンドンに住む。中国語、英語に堪能。北京電影学院を卒業、中国のテレビや映画に出演し、本作が初めてのイギリス映画。【撮影地(YouTube)】ネイサンと父が乗った車が事故に遇った交差点ネイサンの父が埋葬された墓地ネイサンがハンフリーズの特別授業に通った学校ジュリーが中華料理をテイクアウトする店台湾合宿の会場(入り口)台湾合宿の会場(教室)ネイサンとチャン・メイが歩いた夜市数学オリンピック会場ジュリーがネイサンを見つけた中華料理屋 「僕と世界の方程式」のDVD(楽天市場)【関連作品】自閉症スペクトラムを描いた映画のDVD(楽天市場) 「レインマン」(1988年) 「モーツァルトとクジラ」(2004年) 「マラソン」(2005年) 「スノーケーキを君に」(2006年) ・・・輸入版、日本語なし 「彼女の名はサビーヌ」(2007年) 「恋する宇宙」(原題 Adam)(2009年) 「マイネーム・イズ・ハーン」(2010年) 「海洋天堂」(2010年) 「メアリー&マックス」(2008年) 「シンプル・シモン」(2010年) 「Wretches & Jabberers」(2011年) 「ザ・コンサルタント」(2016年)エイサ・バターフィールド出演作品のDVD(楽天市場) 「ヒューゴの不思議な発明」(2011年)サリー・ホーキンスxエディ・マーサン共演作品のDVD(楽天市場) 「ヴェラ・ドレイク」(2004年) 「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年)サリー・ホーキンス出演作品のDVD(楽天市場)「人生は、時々晴れ」(2002年) 「レイヤー・ケーキ」(2004年) 「17歳の肖像」(2009年)「ファクトリー・ウーマン」(2010年)・・・楽天SHOWTIME 「ジェーン・エア」(2011年) 「サブマリン」(2011年) 「ブルージャスミン」(2013年) 「パディントン」(2014年) 「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年) 「パディントン 2 」(2017年) 「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(2017年)エディ・マーサン 出演作品のDVD(楽天市場) 「僕と彼女とオーソン・ウェルズ」(2008年) 「アリス・クリードの失踪」(2009年) 「思秋期」(2011年) 「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)
2018年01月09日
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「LOGAN/ローガン」(原題:Logan)は、2017年公開のアメリカのSFアクション&ドラマ映画です。マーベル・コミック「X-メン」のキャラクター「ウルヴァリン」を主人公としたスピンオフ映画作品シリーズ第3作めで、「オールドマン・ローガン」を原作に年老いて、治癒能力が衰えたローガンが、絶滅の危機にあるミュータントの唯一の希望となる少女を守るため、強大な敵に戦いを挑む姿を描いています。ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマン、プロフェッサーX役のパトリック・スチュワートがそれぞれの役を演じる最後の作品です。 「LOGAN/ローガン」のDVD(楽天市場)【スタッフ・キャスト】監督:ジェームズ・マンゴールド脚本:マイケル・グリーン/スコット・フランク/ジェームズ・マンゴールド原案:デヴィッド・ジェームズ・ケリー/ジェームズ・マンゴールド原作:マーク・ミラー/スティーブ・マクニーブン「オールドマン・ローガン」出演:ヒュー・ジャックマン(ローガン/ウルヴァリン、老いてリムジン運転手として暮している) パトリック・スチュワート(チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX、認知症を患う) ダフネ・キーン(ローラ/X-23、ウルヴァリンの遺伝子から作られたクローン) ボイド・ホルブルック(ドナルド・ピアース、ローラを捜索する部隊リーヴァーズの主任) スティーヴン・マーチャント (キャリバン、匂いでミュータントの居場所を特定できる) エリザベス・ロドリゲス (ガブリエラ・ロペス、看護師、研究所からローラを連れ出す) リチャード・E・グラント (ザンダー・ライス博士、ローラを生み出した科学者) エリク・ラ・サル(ウィル・マンソン、オクラホマ州で農場を営む男性) エリゼ・ニール(キャスリン・マンソン、ウィルの妻) クインシー・ホウス(ネイト・マンソン。ウィルの息子) ヒュー・ジャックマン(X-24、ウルヴァリンの遺伝子から作られた完全なクローン) ほか【あらすじ】2029年、この25年間に新たなミュータントは生まれておらず、彼らは絶滅の危機に瀕しています。かつて「ウルヴァリン」の名で知られていたローガン(ヒュー・ジャックマン)は、テキサス州でリムジンの運転手として働き、メキシコ国境の向かい側に位置する製錬工場の跡地でチャールズ(パトリック・スチュワート)の介護をしながらキャリバン(スティーヴン・マーチャント)と共に暮らしています。認知症を患うチャールズはミュータントと交信したと言い張りますが、ローガンとキャリバンは信用しません。ある日、ローガンの素性を知る男ピアース(ボイド・ホルブルック)が現れ、人探しの協力を求められます。一方、元看護師と名乗るガブリエラ・ロペス(エリザベス・ロドリゲス )からは、ローラ(ダフネ・キーン)という名の11歳の少女をノースダコタ州にある「エデン」まで送り届けて欲しいと依頼を受けます。ローガンが迎えに行くと、ガブリエラは何者かに殺されており、ピアースに後をつけられ隠れ家を襲撃されたローガンは、ローラとチャールズを連れて逃避行に出ます。道中、農場を営むマンソン家に招かれ一夜を過ごします。ザンダー・ライス博士(リチャード・E・グラント )と合流したピアース率いる捜索隊が、拉致したキャリバンの能力でこの家を特定し、チャールズとマンソン一家は殺害されてしまいます。逃げ出したローガンとローラはノースダコタ州を目指します・・・。【レビュー・解説】ヒュー・ジャックマンが最後のウルヴァリン役を、リアルで深みのあるパフォーマンスで演じ、暴力的だが示唆に富む、ジャンル映画の枠を越えたSFスーパーヒーロー・アクション&ドラマ映画です。ヒュー・ジャックマンがウルヴァリン役を演じる最後の作品ヒュー・ジャックマン最後のウルヴァリン役マーベルのアメリカン・コミック「X-メン」を原作とする映画「X-メン」シリーズの10作目で、「ウルヴァリン」を主人公としたスピンオフシリーズの第3作めですが、これまでの9作のうち、最も出演回数の多かった二人、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマン(8作に出演)プロフェッサーX役のパトリック・スチュワート(6作に出演)が、それぞれ役を演じる最後の作品となる、「X-メン」シリーズのひとつの区切りとも言える、感慨深い作品です。作品名公開年ヒュー・ジャックマンパトリック・スチュワートイアン・マッケラン旧シリーズ X-MEN2000年◯◯◯X-MEN 22003年◯◯◯X-MEN:ファイナル・ディシジョン2006年◯◯◯新シリーズ X-MEN:ファースト・ジェネレーション2011年◯ X-MEN:フューチャー&パスト2014年◯◯◯X-MEN:アポカリプス2016年◯ スピンオフ ウルヴァリン:X-MEN ZERO 2009年◯◯ ウルヴァリン:SAMURAI2013年◯◯ デッドプール2016年 ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケランの三人は、当初よりX-men の顔であり、歴史と言える存在でしたが、新シリーズより、チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)役がパトリック・スチュワートからジェームズ・マカヴォイへ、エリック・レーンシャー(マグニートー)がイアン・マッケランからマイケル・ファスペンダーへと世代交代が進んでいます。ヒュー・ジャックマンも年齢的な衰えと、三ヶ月に一度の皮膚がんの検診、数回に渡る除去手術の心理的負担から、ウルヴァリン役から引退したいと考えており、「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013年)の撮影後にジェームズ・マンゴールド監督と話し合い、実現したのだがこの作品です。西部劇のシンプルな構造を参照マンゴールド監督は、劇中で引用される「シェーン」(1953年)の他に、「アウトロー」(1976年)、「ガントレット」(1977年)、「許されざる者」(1992年)といったクリント・イーストウッド監督作品「11人のカウボーイ」(1972年)「子連れ狼」(1972)「ペーパー・ムーン』(1973年)「がんばれ!ベアーズ」(1976年)「レスラー」(2008年)などを参考したと語っています。最近ではすっかりと衰退してしまった西部劇が少なくないのですが、マンゴールド監督は、この理由について、次のように語っています。西部劇はただ昔のアメリカを描いた話ではありません。時代劇などと同じで、基本的にはシンプルな作りの寓話になっています。歴史の再現ではなく、善と悪、勇気と臆病、寛大と貪欲の物語です。映画は過剰に複雑な作りになりがちですが、私は西部劇やノワールの定形を使うことで、よりシンプルなものを作ろうとしています。(中略)映画にとって重要なのはストーリーの構造ではなく、詩的な感興やイメージだと私は思っています。サムライが出てくる映画もそうだけど、西部劇の素晴らしいところは、キャラクターにフォーカスしやすい点です。彼らが何から逃れようとしているのか、何を恐れているのか、キャラクターを描写する時にシンプルに描くことができます。(中略)サムライやカウボーイは、自分の身ひとつで、純粋にそこにあるだけのもので物事を解決しなくてはなりません。だから他の映画との違いを生み出すことができます。僕が意識したのは、ファンタジーとしての西部劇をそのまま参照するのではなく、物語を伝える状況としてうまく利用することでした。現代のアメリカ社会も反映させていて、この作品を通して、「怒りを抱えた国」を見せています。(ジェームズ・マンゴールド監督)https://www.gizmodo.jp/2017/06/logan-james-mangold-interview.htmlhttp://getnews.jp/archives/1753916http://realsound.jp/movie/2017/06/post-79222.htmlマンゴールド監督が個人的に作り上げた物語ウルヴァリンの最後の物語として、全く新しい物語を書き上げ、より個人的な物語にしたいと考えていたマンゴールド監督は、こうした西部劇の枠組みを利用しながら、ウルヴァリンのキャラクターを掘り下げています。マーク・ミラー/スティーブ・マクニーブン「オールドマン・ローガン」を参考にはしていますが、物語はマンゴールド監督が個人的に作り上げています。この作品は「Old Man Logan」を原作にしているわけではないんですが、影響は受けています。ビジュアルなどを参考にはしているんですけど、原作というほどではありません。「Old Man Logan」にはハルクですとか、その他のキャラクターが登場して、ちょっと私がコントロールできるものではありませんので。今回、私は全く新しい物語を書き上げるという気持ちでいましたし、もっとより個人的な物語にしたいと考えていました。「ウルヴァリン:SAMURAI」では既存のコミックをちょっと脚色して、あのような形で映画にしたということがありましたけどね。ただ、今回はウルヴァリンの最後の物語として、より個人的な物語にしたいということがあったので、既存の作品に忠実に沿うということではなく、全くオリジナルの映画にしたいと思っていたんですよ。(ジェームズ・マンゴールド監督)http://dramanavi.net/column/2017/06/logan.phpウルヴァリンが最も恐れる「家族」がテーマ かくしてスーパーヒーロー映画でありながら、マンゴールド監督は人間としてのリアリティを出すことに注力していきます。本作が高い評価を得られたのも、CGを使ってエンディングを盛大なものにせず、あえて真摯に感情を描くことにしたからだと思っています。(中略)ある意味では、昔ながらの映画作りだったと言えます。ローガンが親の介護をするというアイディアを気に入ってました。(中略)Xメンの中で最高の頭脳の持ち主であり、最も父性にあふれた人物が、どういうわけかXメンという家族の中で最も反抗的なローガンという男の助けを必要とし、さらにローガンを成長させ、彼を父にする話を描きたかったんです。私は「ウルヴァリンが最も怖れるもの」の映画を作りたいと考えました。ウルヴァリンは、スーパーヴィランはもちろんですが、世界の終わりや死すら恐れていない男です。しかし、彼は愛や親密さ、他人を必要とすることを恐れています。だからこそ、本作のテーマを「家族」にしたんです。(ジェームズ・マンゴールド監督)https://www.gizmodo.jp/2017/06/logan-james-mangold-interview.html<ネタバレ>エグゼビアが発作を起こした時、ローガンはその場にいた敵を一人残らず、殺してしまいます。これこそファンが望んでいることでした。血のことではありません。その冷酷さです。このアイデアは、「許されざる者」のビル・マニーや「シェーン」におけるシェーンの過去と変わらない、彼らは人殺しだ、というアイデアです。ローガンの場合、怒らせると超絶に冷酷な殺し屋になります。ここに別の道はありません。これこそ、彼が恥じていることです。自分はすべきことだけをする男ではない、ということ。彼は殺し屋です。ずっとね。この映画には、フロイト的な要素が多く出てきます。ローガンは最終的にある種のドッペルゲンガーに殺されます。ローガンのダークなドッペルゲンガーです。これは意図していなかったことですが、X-24の中にあったローガンのダークな部分が殺されて初めて、彼は真に心を開くことができました。ウェポンXとしての自分と自分の過去が目の前で殺されたことで、彼は解放されたのです。ローガンにとって、映画の最後のシーンは人生で最も幸せなときのひとつだったと思います。自分が死にかけているにも関わらず、彼はそれまでに経験したことのない感情を感じています。そして彼は疲れている。それから、本当に素晴らしい、何というか、彼が主演した9本の映画が全て綺麗に並んだ瞬間だと思います。演技の偉業、200年間も生きているこの登場人物の偉業、彼の人生の疲れや困難、彼の人生がどれだけの痛みで彩られていたか。そして彼がこの地球から消えていくことは通常の意味を超えた、ある種の遅すぎた解放であると私たちは理解しています。(ジェームズ・マンゴールド監督)http://jp.ign.com/logan/14096/feature/logan <ネタバレ終わり>新たな希望と生命力の鍵となったダフネ・キーンローガンがただ消えていくだけの話ならば、ちょっと寂しいのですが、ダフネ・キーン演じるローラが、この物語に新たな希望と生命力を与えています。超能力を持つが故に迫害され、超能力の使い方もままならないローラは、シリーズの当初のミュータントたちを彷彿とさせます。この役はウルヴァリンの激しさや怖さを持ちながら、本編の2/3以上をセリフらしいセリフも無いままに、少しずつ心を開き、様々人生体験をしていくという大変な役ですが、これに長編映画の経験のないダフネ・キーンを起用した理由について、マンゴールド監督は次のように語っています。彼女の両親はふたりとも優れた役者で、彼女の父親が本作のキャスティング担当にiPhoneで撮った動画を送ってきたことがきっかけです。その内容は本当にすばらしいもので、セリフを言って演技するだけでなく、本棚を登ったり、サマーソルトをしたりする様子が撮影されていました。彼女の役者としての演技力だけでなく、激しいアクションを恐れない身体能力と迫力には驚かされました。「LOGAN/ローガン」の成功の鍵であるローラというキャラクターを一体誰に演じてもらうのか……?という悩みが一気に解決した瞬間です。振り返ってみれば、あれが本作を制作する上で、一番重要な日だったと思います。彼女の目からは、言葉を発していなくてもとても活き活きしたものが伝わってきたんです。今回のこの作品では、ダフネをカメラがとらえる時間が長いということもあるので、注目も彼女に集まります。ですから、彼女の感じていることが観客にも伝わります。彼女がセリフをあまり話さないということには、そういった意味が込められていたのです。本当に彼女は素晴らしい、才能のあふれる役者です。ローラというキャラクターは、ほとんど言葉を話さないキャラクターで、ちょっと話したとしてもスペイン語を話すというキャラクターでしたので、この役自体が目で演技をしなくてはいけなかったんです。それで、私はまず彼女のテープを見て、彼女は目で演技ができるという役者だとすぐに思いましたし、また彼女に会ってからも、そのことがはっきりと分かりました。(ジェームズ・マンゴールド監督)https://www.gizmodo.jp/2017/06/logan-james-mangold-interview.htmlhttps://spice.eplus.jp/articles/126589http://dramanavi.net/column/2017/06/logan.php彼女のオーディションの様子を収めたテープがありますが、予め監督から即興の許可を得たダフネがジャックマンのセリフを遮り、スペイン語でまくし立てる様子が収録されています。終いにはジャックマンの腕を小突くなど、とても11歳とは思えないパフォーマンスで、この即興をジャックマン、スチュワートらベテラン俳優が絶賛、本編にも取り入れられています。彼女は本作で大俳優を相手に出色のパフォーマンスを見せていますが、マンゴールド監督は他のX-MENやヒーロー映画よりもダフネのローラが魅力的というほどの惚れ込み、ローラの話の続きとなる作品の脚本に取りかかっています。ローラの続編が楽しみです。ヒュー・ジャックマン(ローガン/ウルヴァリン、老いてリムジン運転手として暮している)ヒュー・ジャックマン(1968年〜)は、オーストラリア出身の俳優、映画プロデューサー。大学在学中たまたま履修した演劇クラスで演劇の面白さに目覚め俳優を志す。主に映画、テレビ、舞台で活躍していたが、「X-メン」(2000年)の主役ウルヴァリン役に抜擢され、一気にスターダムに駆け上る。ミュージカルも得意とし、ブロードウェイ・ミュージカルでトニー賞を受賞している他、ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」(2012年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。「X-MEN」シリーズの他に、「プレステージ」(2006年)、「プリズナーズ」(2013年)、「イーグル・ジャンプ」(2016年)などに出演している。パトリック・スチュワート(チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX、認知症を患う)パトリック・スチュワート(1940年〜 )は、ヨークシャー出身のイギリスの俳優。イギリスの名門劇団「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」にて主演俳優を歴任、テレビドラマ「新スタートレック」(1987〜1994年)でピカード艦長を、映画「X-メン」シリーズ(2000年〜)でプロフェッサーXを演じ、広く知られる。2010年にエリザベス女王より、ナイトの称号を叙勲している。ダフネ・キーン(ローラ/X-23、ウルヴァリンの遺伝子から作られたクローン)ダフネ・キーン( 2005年〜)は、スペイン生まれの女優。イギリス国籍とスペイン国籍を有する。イギリスの俳優ウィル・キーン、スペインの女優、舞台監督、劇作家のマリア・フェルナンデス・アッシェを両親に持つ。2014年に父が出演するテレビドラマシリーズで女優デビュー、本作が長編映画デビュー作。スティーヴン・マーチャント (キャリバン、匂いでミュータントの居場所を特定できる) スティーヴン・マーチャント(1974年〜) はイギリスの作家、監督、コメディアン、俳優。イギリスのシチュエーション・コメディの脚本、監督して知られる他、「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」(2007年)などに出演している。【動画クリップ(YouTube)】ダフネ・キーンのオーディション・シーン【撮影地(グーグルマップ)】冒頭の墓地のシーンローガンがチャールズの薬を手に入れる病院ローガンらの隠れ家(外観)看護師とローラが宿泊していたモーテルローガンらが宿泊したホテルとカジノ(外観)ローガンが担ぎ込まれた診療所(外観) 「LOGAN/ローガン」のDVD(楽天市場)【関連作品】「LOGAN/ローガン」の原作本(楽天市場) マーク・ミラー/スティーブ・マクニーブン「オールドマン・ローガン」「X-MEN」旧シリーズのDVD(楽天市場) 「X-メン」(2000年) 「X-MEN2」(2003年) 「X-MEN: ファイナル・ディシジョン」(2006年)「X-MEN」新シリーズのDVD(楽天市場) 「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」(2011年) 「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年) 「X-MEN: アポカリプス」(2016年) 「X-MEN: ダーク・フェニックス」(2018年、未公開)「X-MEN」スピンオフ作品のDVD(楽天市場) 「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」(2009年) 「ウルヴァリン: SAMURAI」(2013年) 「デッドプール」(2016年) 「デッドプール2」(2018年、未公開) 「ニュー・ミュータンツ」(2018年、未公開) 「ガンビット」(2019年、未公開)ジェームズ・マンゴールド監督・脚本作品のDVD(楽天市場) 「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 」(2005年) 「3時10分、決断のとき」(2007年) - 監督ヒュー・ジャックマン出演作品のDVD(楽天市場) 「プレステージ」(2006年) 「プリズナーズ」(2013年) 「イーグル・ジャンプ」(2016年)パトリック・スチュワート出演作品のDVD(楽天市場) 「エクスカリバー」(1981年) 「ファースト・コンタクト/STAR TREK」(1996年) 「グリーンルーム」(2015年)
2018年01月06日
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