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「落涙」 【話者・ネイルサロン勤務の二十代の女性】あたし、人が死ぬ前の日に涙が出るんです。悲しい気持ちになったわけでも目にゴミが入ったわけでもないのに、ぽたぽた涙が垂れて来るんです。すると、次の日、きまって親戚や知り合いの訃報が届くんです。五歳くらいで発見してからざっくり数えても十一人がしんじゃっています。そんで去年、サロンの先輩とお喋りしていたら、すっごい涙があふれてきちゃって。もう、尋常じゃない量で、着ているシャツが絞れるくらいに濡れちゃったんです。そんで、先輩に涙の理由を話したら 『じゃあ、ウチの店長あたりが死ぬんじゃね? アイツ不健康だし』 と爆笑してて・・・・翌日にその先輩がくも膜下で死にました。これ、なんかの仕事にできないですかね。かなり自信あるんですけど。
2022.10.30
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「魂追い」工藤さんの田舎では人魂が非常に縁起の悪いものだと伝わっている。これは大昔の話ではなく、今現在も警告として、言い伝えられているものだという。当時の地元の若い衆は、何かにつけて寄り集まり、酒を飲んでは自慢話をしたり小競り合いをしたりするのが日常であった。彼女の大叔父である工藤氏も、呼ばれれば平日であろうが残業帰りであろうがホイホイと出向くのが当たり前の習慣だった。そんなある日、いつものように誘いの電話があったのは、風呂と夕飯が済んだ午後七時。支度をして、ぶらりと某氏の家に向かったのだが、夜の空気が騒めいているようでどことなく落ち着かない。やがて遠くにポッと某氏宅の灯が見えてきた。それと同時に 『・・・・あっちだあっちだ!』 『ああー、消えた、いやまた出た』 と興奮した若い衆の声も聞こえる。工藤氏は咄嗟に走り出した。『なんだなんだ、どうした!』『おお、クッさん、アレ見てみろ!人魂が出たぞ』樹々に覆われた深い谷の合間を、すう、すう、と蛍のような動きで浮遊する物体が見えた。『ワイ、降りて行ってみるわ』 『おお、そんならワイも』どやどやと、谷への道を走り出す者達。いっしょに行こうと当然誘われたが、こちらを誘うような人魂の動きが気になったので行かなかった。『・・・・あんなモンを追いかけたら、騙されて、谷に落とされてしまう。ワイは行かん。お前らもやめろ』『なんじゃクッさん怖気づいたんか。そしたらワイらが捕まえてきてやるから、ここで待っとれ』竿の長いタモを手に取り、都合三人ばかりが谷の中へ入って行った。残った工藤氏ら数人は、上から彼らの声が遠のいていくのを眺めていた。・・・・そして誰も帰って来なかった。三人とも谷底の川に落ち、流されてしまったのである。『・・・・大叔父は、その時のことをずっと悔やんでいましたね。引き留めればよかった、って』
2022.10.29
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「鬼圧」怜美さんが島根にある友人の実家へ泊まりに行った時のこと。夕食をご馳走になっている時、友人の母親から 『経験ある?』 と訊ねられた。怜美さんは質問の意図をちゃんと理解していた。事前に友人から 『うちのマミー霊感あるんだよ』 と聞いていたのだ。『ないです』 と怜美さんは答えた。『じゃあ、話しておいた方がいいかもね』友人の母親・咲江さんは、この家の立地の話をし出した。近くには古い葬祭場があり、まわりには三軒の民家があり、そのうちの一軒が友人宅である。『何が言いたいかというと、うちの入り口と葬祭場の入り口がまっすぐ繋がっていて、入り口は出口でもあるから葬祭場から出てきたものが、この家にまっすぐ入って来ちゃうってこと』仮通夜は故人と遺族が過ごす最後の夜であるが、住宅地が近いこともあって、遺族は自宅に帰ってしまう。そのため、葬祭場に残された故人が寂しがってこの友人宅に来ることがあるのだそうだ。『と言っても、すたすた歩いて入って来るわけじゃないの』まず、家で飼っている犬が急に激しく吠えだす。玄関ドアが開く音がする。ドアが開くと気圧で一瞬カーテンが膨らむ。そういうことが起き出したら、入ってきていうのだという。怜美さんはおそるおそる訊ねた。『それって・・・何か悪いことが起きたり、変な物を見ちゃったりとかは・・・・』ないない、と咲江さんは笑いながら手を振る。『なにかあったら、ここに住んでないから』すると、友人宅のコーギーが急にバフッバフッと吠え出した。玄関の方からガチャッとドアの開く音がする。室内をぬるい空気が流れていき、怜美さんの肌を舐めていく。『えっ? なに? なにこれ?』咲江さんは 『ほらね』 という顔をしていた。
2022.10.23
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「金色の宝船」年末に体調を崩して、年越しで入院していた中村さんは、その朝も病院の窓から皇居の方向を見ていた。彼の世代は天皇陛下に対する思い入れが強い。昭和天皇の体調は、テレビなどで伝えられていることもあり、何となくそちらの方向を眺めて回復を願っていた。その朝は視界に奇妙なものが映り込んだ。金色に輝く巨大な宝船である。俄には信じられなかったが、ああ、そういうことかと得心した。中村さんはその場で合掌し、深く深く首を垂れた。時計を確認すると、午前6時半。昭和64年1月7日の出来事である。
2022.10.22
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「イチゴ」静子さん夫婦は念願であった中古の一戸建てを購入した。それを機に、長年の夢であった猫を飼うことにした。友人の薦めで、保護施設へ行ってみた。そして、彼女は一匹の黒猫に心を奪われた。その黒猫は生後五ケ月程度の女の子で、殺処分間際に保健所より救い出されたらしく、やけに人懐っこい。だたし、風邪が悪化して片眼を患ってしまい、避妊手術と同時にその片眼も摘出していた。『でもそんなの関係ないんです。もう主人もメロメロになっちゃって。ウチの初めての猫はこの子だって』黒猫はイチゴと名づけられて、静子さん夫婦の一人娘になった。最初に異変に気付いたのは旦那さんであった。『イチゴを可愛がっていると、変な泣き声が聞こえるって言うんですよ。ええ、まるで女性の嗚咽のような』無論、家には夫婦と猫しか住んでいないので、そのような声が聞こえるはずがない。『ううん、おかしいね、なんて言ってたら・・・・ワタシ、見ちゃったんですよ』深夜、トイレに起きた彼女は、寝室のクッションで寝ているイチゴを見つけた。大音量でゴロゴロと喉を鳴らし、とても気持ち良さそうであった。『・・・・ん? ん?』イチゴの喉元を女性の手と思われるものが愛おしそうに撫でている。思わず悲鳴を上げそうになった時、イチゴの上半身に大きな瓜のようなものが浮かんできた。それは次第に形を為していき、女の生首へと変わっていったのだ。薄っぺらい唇の周辺には擦り傷が幾つもできており、赤黒く異彩を放っている。『ご・・・・め・・・・ん・・・・ね・・・・ご・・・・め・・・・ん・・・・』生首はそう言うと、いきなり静子さんの目前まで、すぅ~っと移動した。余りの状況に微動だにできずにいると、その生首はペコリと頭を下げた。『よ・・・・ろ・・・・し・・・・お・・・・ね・・・・が・・・・い・・・・し・・・・ま・・・・す』弱々しい声でそう懇願すると、哀しげな嗚咽とともにすぅと消えてしまった。『恐らく、前の飼い主だったんでしょう。とにかく、この子は幸せにならなければいけないんです。ええ、絶対』どんな理由で手放したのか、どんな理由で逝ってしまったのかは最早、分かりようがないが、恐らくさぞや無念であったのだろう。『ウチは大丈夫ですよ。何があっても幸せにしますから!』最近遊びに飢えているイチゴに、弟か妹がいたらどうだろうか、と夫婦で話し合っているとのことである。
2022.10.09
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