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琉球奇譚 イチジャマの飛び交う家 小原猛 竹書房怪談文庫「七色の羽」ある時、神谷家の庭に大きな水溜まりができた。真夏の日照りが続く、蒸し暑い日のことである。雨が降った気配もなく、周囲は全く濡れていなかった。庭の一角だけがニメール四方にわたって池のようになってしまっている。『この水はどっから来ようったんかね』神谷家のものたちはそんなことを呟きながら水溜りの周囲を見てみたが、水源となるようなものは見当たらず、ちょっと遠くにあった水道の蛇口も閉まったままだった。ふとその時、水溜りに目をやると、なにやら七色に輝く美しい羽のようなものが横切るのが見えた。一瞬だったので、水の上に張った油のせいかと思ったが、どうやら違う。その羽は七色に輝きながら水溜まりの上を飛んでいた。ところが水溜りの外側には、澄み切った青空しかない。鳥などどこにもいない。それは白鳥ぐらいの大きな鳥の羽で、七色に輝きながら水面の上を何度も何度も横切ったという。水溜りは三日後にはすっかりなくなり、地面はすっかり渇ききってしまった。
2023.02.23
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「茶碗」四十代後半を迎えた秋野早苗さんと食事をしているとき『そういえば、うち、お宝があるのよ』『祖父と父が骨董すきで、こどもの頃はよく見せられたけど、価値なんてわからない。でも一つだけ好きな物があった』それは平安時代から鎌倉時代辺りの茶碗だ。値段は、思ったより安いと聞いた。《でも、値段じゃない。これには価値があるんだ≫そう祖父と父親が彼女に話して聞かせるのだが、その価値については教えてくれない。しかし、彼女が中学生の頃だ。卵巣腫瘍だと診断された。片側を切除することになったが、やはり 『将来、子供が出来にくくなる』と言われた。手術の前々日、リビングに祖父があの鎌倉時代の茶碗を持ってきた。中には透明の液体が入っている。『これは?』『山の湧き水。これをこの茶碗で飲めば手術も上手くいく』ゆっくり口に含むと、冷たさと甘みを感じる。砂糖や果実のようなものではなく、済んだ幽けき甘みというのか。美味しくてすぐに飲み干してしまった。おかわりを二回したところで、急に飲めなくなる。苦くて、一口も喉を通らない。『この茶輪には昔の偉い人が術を掛けていて、これで湧き水を飲むと運気が上がり、体調もよくなるのだ。』予想をしていなかった内容で驚いた。そんなに良いものなら毎日、茶碗を使えばいいのにと言えば、祖父が首を振る。『いやいや、ここぞというときに使えと言われているから。日常で使うと逆に毒になる』そんなものかと頷いていると、祖父が頭を撫でた。『これでもう大丈夫。手術は上手くいく。お前は子供も授かれる』それから数年後、平成になってその茶碗が割れた。『でもね。その茶碗の術は効いたと思うよ』秋野さんには大学生になる子供がいる。『あれだけ出来にくいって言われていたのにねぇ。でもその後、旦那とはすぐ別れちゃったけど。それからずっと独身。流石の茶碗の術も、そっちは駄目だったかも』
2023.02.12
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「家の禁忌」五十一歳の恵子さんの家には家族に信じられていることが二つあった。一つ、この家には、人の目には視えない何者かが棲みついている。一つ、できるだけ屋敷と庭に変更を加えてはならない。目に視えない何かは二階の空き部屋に棲んでいるようだった。杉板の引き戸が勝手に開いたり閉まったりし廊下を歩いたり階段を上り下りする足音がする・・・・そんなことは日常茶飯事だった。家や庭の普請を禁じるという掟は、実際に禁を破ってみた結果、守らねばならぬと家族全員が理解するに至った。まず、彼女が高校生のとき、母の発案で庭にあった茱萸の木を伐り倒した。すると、その直後に父が高熱で倒れた。入院して検査を受けたところ、虫歯が化膿したことが原因で脳に膿が溜まっており、快復には一年を要した。二十歳のときには、これもまた母の発案で、家の増築工事を行った。果たして、竣工工事を待たずに父が呼吸困難で緊急入院。今後は肺に膿が溜まっていた。すぐに背中から管を通して膿を抜き始めたが、入院の翌日から危篤に陥った。そこで初めて母は猛省し、その頃評判だった霊能者に相談した。祈祷してもらって家の四方に盛り塩をしたらみるみる父の病が癒えて、一週間で退院できた。
2023.02.12
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