私訳・源氏物語

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March 26, 2006
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カテゴリ: 古典文学


私が思わず「うわ、タジマだって!」と感嘆すると、そばにいた6歳ほど年上の先輩薬剤師が、恥ずかしいほどの大声で「あほやな、あれは『タンバ』と読むんやで。タンバササヤマのタ・ン・バ!」と自信たっぷりに教えてくれました。
「いえ、あれは万葉集のタジマノヒメミコの但馬で・・・」と思いましたが、私はなにも言いませんでした。

但馬皇女の歌も、止むに止まれぬ若い思いが溢れていて、胸をうつものがあります。

「但馬皇女の 高市皇子の宮に在せる時、穂積皇子にしぬび接(あ)ひたまひし事 既形(あらは)れて後によみませる御歌一首

人言を 繁み 言痛(こちた)み 己が世に 未だ渡らぬ 朝川渡る

但馬皇女は天武天皇の皇女で、高市皇子の宮にありながら、異母兄の穂積皇子と恋愛関係にありました。
忍んで逢っていたものの、そんな二人の仲は当然発覚し、宮人たちの噂になります。

「人の噂があまりにも多くわずらわしいために、あなたとの逢瀬では、今まで私が経験したことのない朝の川を、ドキドキしながら渡っております」

これは私の勝手な解釈で、「朝川」は涙に濡れたことの表現と捉えるようですが、私にはそのような受動的な歌ではなく、恋しい穂積にともかく「逢いたい!」という但馬皇女の一途な思いがあって、それが彼女を実際に「朝川渡る」という、思い切った行動に駆り立てたように感じるのです。

若い但馬皇女が人目を忍び、なよやかな衣の裾を絡げながら、冷たい朝の川を渡る姿を想像すると、彼女の胸の鼓動や、冷えた手足のかすかなふるえさえもこの歌に感じられて、いじらしくなるのです。





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最終更新日  March 8, 2017 07:08:25 PM
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