私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

January 6, 2025
XML
カテゴリ: 源氏物語

翌日もお二人はゆっくりと寝過ごして、御洗面やお食事をご一緒になさいます。

高麗や唐土からの舶来品でご立派に飾り立てた六条院を見慣れた目には、
二条院の女房たちはみすぼらしい身なりで数も少なく見えるのでした。

中君はやわらかい練り絹の薄紫色の単衣の上に撫子襲の細長を着て、
くつろいだご様子でいらっしゃいます。

きらびやかに飾り立てた六の君のご装束に比べましても、
盛りを過ぎたとはいえ中君は決して引けを取ることがなく、
もの柔らかで風情がありますのも、
宮が大切にしていらっしゃるからなのでございましょう。

以前は丸々と可愛らしく肥えていらしたのですが、
ご懐妊のために少しほっそりとして、
ますます色白になられて上品でうつくしいのです。

以前から、他の人より愛敬があって可愛らしいとお思いでしたから、

『兄弟ならまだしも、他の男が近しく言い寄って、
中君の声や気配に見慣れるなどしていれば、
自然心惹かれることにもなるであろう』

と、ひどく抜け目のない浮気心の御くせで、すぐお気付きになります。

『証拠になるような文などあるかもしれない』

と、中君の御厨子や小唐櫃などをさりげなく調べても、恋文ではなく、
言葉少なく生真面目で平凡な文がそれとなく物に取り交ぜてありますので、

『これは怪しい。文はこれだけではあるまい』

と、お心が騒ぐのもお道理なのでした。

『中納言の容姿も、心ある女であればきっと心動かされるであろうから、
言い寄ったりしたら中君とて拒み通すことはできまい。
二人は良い相手だから相愛になってもおかしくはない』

と思いますと、侘しく腹立たしく妬ましくなるのでした。

そんなお気持ちのまま、その日は二条院にずっとおいでになります。

六条の君には、二度三度とお文を差し上げなさいますので、

「たったニ、三日ですのに」
「あちらではずいぶんとお文が積もったことでしょうね」

と、皮肉を言う老女房たちもいるのでした。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  January 6, 2025 06:56:09 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: