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長雨が降って晴れ間のない頃のこと。
内裏で御物忌が続きましたので、
源氏の君はご自分の御宿直所である桐壺に長居していらっしゃいます。
左大臣邸ではご訪問のないことを、待ち遠しく恨めしくお思いなのですが、
それでも新しい御装束をあれやこれやとお調えになります。
左大臣家の御子息の君達(きんだち)は、
源氏の君の御宿直所にばかりお仕えなさいます。
中でも宮腹の頭中将とは特に親しくしておいでで、
音楽でもちょっとした御遊びごとなどでも他の人よりは気安く、
馴れ馴れしく振舞うことができました。
この頭中将は、舅でいらっしゃる右大臣が、
大切にかしづく四の宮の姫がいらっしゃる御屋敷に帰るのを、
たいそう億劫に感じていらっしゃる、好色らしい浮気者なのでした。
頭中将のお里でも、ご自分のお部屋をまばゆいばかりに設えて、
源氏の君がお出入りなさる際にはいつも連れ立ち、夜も昼も、
御学問も管弦の御遊び事までご一緒になさり、
なかなか源氏の君に負けることなく、どこに行くにもお伴なさいますので、
自ずと遠慮もなくなり、心の中で思うことを隠すこともなく、
親しみ合っていらっしゃるのでした。