PR
カレンダー
キーワードサーチ
それはまるで法師が世の理を説教するようで可笑しくもあるのですが、
一方ではそれぞれが持つ恋の秘密を話さないわけにはいかないようです。
「ずいぶん昔の事です。
私の官位がまだ低かったころ、可愛いと思う女がおりました。
若い好色の心には、この人を妻にしようなどとは思っていませんでした。
それにどうも物足りなくて、別の女の所に通いました所、たいそう嫉妬しましてね。
それが私には気に入りませんで、もっとおっとりとしていてくれたらと思いながら煩わしく、
それでも私のような者をどうしてそこまで深く思うのであろうと、
気の毒に思うこともありまして、自然に浮気心を鎮められるようになったのです。
この女の態度というものは、
もともと出来そうもないことでも、夫のためには何とか手段を工夫し、
他の人より劣った所は夫から失望されないようにと、何かにつけて誠実に私の後見をし、
私の心に違わぬことはないほどでした。
最初は気の強い女だと思っていたのですが、しだいに私に靡き従うようになりまして、
嫌われないように気を使って化粧をし、
自分の醜い容貌のために夫が疎まれぬよう恥じ隠れ、いつも気遣いする女でした。
心持も悪くはありませんでしたけれども、
嫉妬心だけはどうにも我慢ならなかったのです。