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私は何と応えたらいいものか分からず、ただ、
『承りました』
とだけ言いまして、立ち出でようとしますと、女は何やら物足りなく思ったのでしょうか、
『この臭気が失せた頃に、お立ち寄りください』
と、かん高い声で言いますので聞き過ごすのも気の毒ですし、
さりとてそこでしばらく休息するのもまたどうかと思いました。
なるほどにんにくの匂いが女の周辺からぷんぷんしてきますので、
私は逃げ出す算段をしまして、
『ささがにの ふるまひしるき 夕暮れに ひるますぐせと 言ふがあやなさ
(私が夕暮れに来ることを知っていながら、昼を過ぎた頃に来いとおっしゃるなんて、
理不尽ではありませんか。昼間に蒜・にんにくを掛けている。)
一体、どういう口実なのでしょうか』
と、言い終わらぬうちに、さっさと逃げ出してきたのです。