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聖は源氏の君の御守りに、獨鈷(とこ)をたてまつりました。
それをご覧になった僧都は、
聖徳太子が百済より入手なされたという、菩提樹の実で作られた数珠を、
当時と同じ唐めいた箱に入ったまま透き通った袋に入れ、五葉の枝につけたものと、
紺瑠璃の壺に御薬などを入れて藤や桜などにつけた、
山寺にふさわしい御贈り物の数々を捧げたてまつるのでした。
君は、聖を始めとして加持祈祷に加わった法師への布施や、
帰京のための御馳走を、前もって都へ取りに遣わしましたので、
北山の寺一帯の木こりまでもがそれ相応の物をいただきました。
君は、布施などしてお立ち出でになります。
僧都は尼君の所へおいでになり、源氏の君の仰せ事をそのまま申し上げるのですが、
「今はまだ幼すぎて、どのようにもお返事のしようがございませぬ。
もし源氏の君の御心ざしがございますれば、
今少し成長しましてから四・五年の後にでも、お返事できましょう」
と申しますので、僧都も『それは尤もなことだ』と、尼君と同じお考えでいらっしゃるのを、
源氏の君は歯がゆくお思いになるのです。