私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

July 5, 2011
XML
カテゴリ: 源氏物語

 六条御息所は、あの車争いのあった日から、
心を痛め思い乱れる事がいつもより多くなりました。

源氏の大将を『つくづく薄情な方』と思い知り給うのですが、
そうかといって『もう、これまで』と振り切って、斎宮とともに伊勢にお下りになるには、
たいそう心細くもあろうし、都から逃げたようで人聞きも悪く、
笑い者にもなろう、とお思いになります。

 さりとて都に留まる事をお考えになりますと、あの日のように世間から見下げられ、
侮られているのでは、心安いはずがありません。

御息所はお気持ちが定まらず、まるで「釣りする海士の浮き」のように、
寝ても覚めても思い患ったせいでしょうか、
御心地もふわふわとして病人のようになってしまわれました。

源氏の大将殿は、御息所の伊勢への下行には係わらず
「伊勢へ行くなど、もってのほか」など、強いてお留め申し上げる事もなさいません。

「私のような数ならぬ身を、見るのもお嫌とお捨てになるのも道理でしょうが、
今となっては不甲斐ない者であっても、一生連れ添うてくださいますのが、
浅からぬ情愛の縁というものでしょう」

と、絡むように申し上げます。

そこで御息所は決めかねる御心の慰めにもなろうかと
物見にお出掛になったのですが、御禊河の荒瀬に出会い、
ますます何事につけ辛いお気持ちに沈むようになったのでした。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 6, 2017 09:20:03 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: