私訳・源氏物語

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November 9, 2011
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カテゴリ: 源氏物語

『こんなにも用心しなくてはならないものか。まあそれも尤もな事だ』と思われますので、
さすがに引き下がらざるを得ません。

『このような身分の女では、筑紫の五節が可愛らしかったな』 と、お思い出しになります。

どのような場合であっても御心の休まる暇もなく、いつも恋に苦しんでいらっしゃいます。

年月が過ぎてもやはりこうして、かつて逢瀬の時を持った女へのご情愛を
お忘れになりませんので、それが反ってあまたの女たちの物思いの種となるのです。

あの目指す麗景殿女御の邸は、想像した通り
人目もなくひっそりと静かでいらっしゃるご様子がたいそうお気の毒なのです。

先ず女御のお部屋で、桐壺院ご在世中のお話しなど申し上げますうち、
夜が更けてしまいました。

二十日の月が射し出ますと高い木の影がお庭に小暗く見え渡り、
近くの橘の香が懐かしく匂います。

お年を召してはいらっしゃるのですが、女御は上品で御心遣いが行き届き、
おいたわしいご様子でいらっしゃいます。

『格別のご寵愛こそなかったけれど、院は睦まじくやさしいお方とお思いでいらっしゃった』

などと思い出し給うにつけても、昔の事が次々と思い出されてお泣きになります。

先ほどの垣根で鳴いたほととぎすなのでしょうか、同じ声で鳴きました。

『私を慕って追って来たのか』と、お思いになるのも艶っぽいのです。

「いかに知りてか」と、そっと誦んじていらっしゃいます。






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最終更新日  March 6, 2017 11:39:18 AM
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