私訳・源氏物語

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March 11, 2012
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カテゴリ: クラシック音楽

夜、小澤征爾の音楽番組を観た。

小澤の指揮する水戸室内管弦楽団に若いチェリストを迎えて、
ハイドンのチェロ協1番を演奏するというものだった。

この曲は、42歳で世を去ったイギリスのチェリスト、 ジャクリーヌ・デュ・プレ
自由奔放ではつらつとした演奏が有名だ。

彼女のダイナミックな演奏には、音楽を歌うことの喜びと陶酔感があった。

今聴いても、優雅な ミューズ というよりも、
大胆で激しい デュオニッソス が憑依したようで、聴くものを圧倒する。

ところが今夜のチェリストの演奏は精彩に欠け、
期待したデュ・プレのような野太い音が出ないのだ。

小澤は「もっと下品でもいい」と何度もアドバイスするのだが、
彼の優等生的性格なのか、どうにも迫力が出ない。

それどころかおとなしい彼のチェロは、オーケストラの音に埋没して、
いつしか聞こえなくなってしまうのだ。

「ソリスト」というものは、良くも悪くも「『自分の音楽』を聴け!」と、
聴く者に強くアピールするべきだ。

オケを引っ張り、聴衆を圧倒し、自分の音楽世界に引き込まなくてはならない。

かつてヴァイオリニストの諏訪内晶子が、40度の発熱の中、
お粗末きわまりないオーケストラを圧倒的な力でリードし、
チャイコフスキー・コンクールでみごと優勝を勝ち取った時のように。

オケの音に負けてしまうようでは、
ソリストとしての「資質に欠ける」といわざるを得ない。

 演奏旅行の最後の二日、小澤は体調不良で指揮台に立てず、
指揮者なしの演奏になった。

指揮台には小澤の代わりに、この若きソリストが乗せられた。

水戸室内管弦楽団の音とくに弦楽器は、
サイトウキネン・オーケストラを思わせる澄んだ音色で好感がもてた。

指揮者なしでも演奏できる力と信頼感を、
オケ全体が培っていたからこそできたのだろう。

若いソリストの音にも力が入るのが分かった。

 小澤の体調が悪いのは事実だと思うのだが、
彼は指揮者としての身を退くことによって、つまりこの若者を指揮台に引きずり上げ、
そうして「ソリストのなんたるか」を教えたかったのだ、と私には感じられた。






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最終更新日  March 5, 2017 10:18:52 PM
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