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出家なさった藤壺中宮は御位をお改めになるべきではありませんので、
退位なされた天皇に準じて御封をお賜りになります。
女院付きの官吏たちが任命されますので、藤壺女院は今までよりも凛としてご立派で、
仏前でのお勤めや功徳を積むことに精を出していらっしゃいます。
今までは弘徽殿大后に遠慮なさって宮中へのお出入りもままならず、
帝となられた我が子にお会いできない嘆きに気の晴れぬ思いでいらしたのですが、
今ではそれも思いのままで本当に結構なご様子ですので、
弘徽殿の大后は『世の中は無情なものね』と、お嘆きでいらっしゃいます。
源氏の大臣は事あるごとに大后が気恥かしいほど立派にお世話申し上げますので、
弘徽殿大后にとっては反ってきまりが悪く、世間の人々はあれこれ噂しあうのでした。
紫の女君の父宮・兵部卿の宮の御子たちも、
源氏の君が退去していらっしゃる頃は冷淡で、
ただ弘徽殿大后方の御機嫌ばかりを伺っていらしたことを不愉快にお思いでしたので、
以前と同じように親しくはなさいません。
源氏の君は世の中の人には分け隔てなく結構なご配慮をなさるのですが、
兵部卿の宮一族に対しては反って冷淡な仕打ちをも時にはなさいますので、
藤壺の女院は兄宮がお気の毒で、残念なこととみたてまつるのでした。
世の政は半分に分けて、太政大臣と源氏の大臣が意のままに執り行います。
頭中将でいらした権中納言の御娘は、その年の八月に女御として入内なさいます。
祖父でいらっしゃる太政大臣はじっとしていられずせっせとお世話しますので、
儀式などは実にご立派なのです。
兵部卿の宮も中の姫君を帝に差し上げるため大切に養育していらっしゃる
との評判が高いのですが、源氏の大臣は気にもお掛けにならないふうなのでした。
どうなさるのでございましょう。