私訳・源氏物語

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佐久耶此花4989

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May 12, 2012
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カテゴリ: 源氏物語

八月の野分が吹き荒れた年には渡り廊下が倒壊し、
召使いの住いの粗末な板葺などが吹き飛ばされて、骨組みばかりが僅かに残り、
住むところもなければ使用人さえなくなってしまいました。

朝夕の炊事の煙は絶えて、哀れで辛いことばかりが多いのです。

盗人などという情け容赦のない乱暴者も、
荒れ果てている事が見てとれるからでしょうか、
この宮邸には盗むような物もないと素通りして寄り付きもしません。

このように、ひどい野原や藪となり果てているのですが、
さすがに寝殿の中の御飾りや調度は昔から少しも変わりがなく、
そうかといってそれをきれいに掃除する人もありません。

塵は積もれど、俗塵に紛れることのない麗しい御住いで、
常陸宮の姫君・末摘花は明かし暮らしていらっしゃるのです。

このような折には取りとめもなく古歌を書き、物語を読むといった
すさび事で気を紛らわし、悲惨な暮らしをも慰めることができるものなのでしょうが、
末摘花の君はそのような趣味にも鈍感でいらっしゃいます。

殊更すき好んでするというのではなくても、
これといってすることのない手持無沙汰な若い女君というものは、
自然気の合った者どうしでその時々の木草につけても文のやりとりなどして、
心を慰めていらっしゃるものなのですが、
末摘花の君は親のご養育なされたそのままでいらして、
人との付き合いを恥ずかしくお思いで、
御文をやりとりなさるべきお相手に対してさえも親しくはなさいません。

古びた御厨子を開けて唐守、はこやの刀自、
かぐや姫の物語を絵に描いたものなどを時々の手慰みものとしていらっしゃるのです。






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最終更新日  March 5, 2017 10:01:42 PM
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