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帝のお召しによって源氏の大臣(おとど)と権中納言が参上なさいます。
その日は源氏の大臣の弟宮でいらっしゃる帥の宮も宮中においででした。
帥の宮も絵画をお好みで造詣が深くていらっしゃいますので、
源氏の大臣が密かにお誘いになったのでございましょう。
特に表立ったお召しではありませんが、殿上の間に控えていらっしゃるところを
帝からの仰せ事があって参上なさり、この絵合の判者をおつとめになります。
ご覧になってみますと、なるほどたいそう優れて力の限り描き尽した絵ばかりで、
帥の宮にも優劣を決めかねるほどです。
例の、朱雀院から斎宮の女御へ御贈りなされた年中行事の絵も、
昔の巧みたちのおもしろい事柄や風景を選びながら、
筆が滞らず描き流した趣が例えようもなくうつくしいと見るのですが、
紙に描いた絵は幅に限りがあるので遠く続く山々や水の豊かな流れの様子を
描き尽すことができないため、もっぱら筆先の技巧や絵師の構想や趣向で
描かれ作りたてられていますので、
今風の浅はかな新画であっても昔の絵画に劣ることなく活気があり
、面白味といった点では勝っています。
多くの競争がありましたが、今日は右方にも左方にも興ある絵が前回より多いのでした。
藤壺中宮も朝餉の間の御襖を開けて聞いていらっしゃいますので、
源氏の大臣は『中宮におかれても絵画に精通しておいでであろう』と
ゆかしくお思いになって、帥の宮が心もとない判定をなさる折々には
意見を添えていらっしゃるのも好ましい風景なのです。
優劣を決めかねて、夜になってしまいました。