私訳・源氏物語

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December 26, 2012
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カテゴリ: 源氏物語

それを聞いた乳母の娘たちも泣き惑うて、

「行方不明の母君の代わりに、せめて人並みの結婚をお世話申そうと思っていますのに、
大夫監のような田舎者に嫁がせるなんて」

と嘆いている事も知らず、
自分はいかにも人望が高いと自負して文を書いて寄越しました。

筆跡はさほどひどくはありません。
かぐわしい香を焚きしめた唐の色紙に風流に書いたつもりなのでしょうが、
どうも言葉使いに訛りがあるのです。

大夫監は使者を通しただけではもどかしくなって、
この家の二郎を味方にし自身が乗りこんできました。

三十歳ほどの男で背が高く厳めしく肥って、むさ苦しくはないのですが
田舎者と思って見るせいか厭らしく、がさつな振舞いを見るのも恐ろしいのです。

顔の色つやがよく元気そうで、声はひどくしわがれて、ひどい訛りでしゃべりたてます。

恋をしている人が夜の暗さにまぎれて忍んで行くからこそ『夜這い』と言うのですが、
監の場合は風変わりな春の夕暮れの『呼ばい』というところでしょうか。
人恋しい秋でもないのに、何とも不思議な出来事です。

機嫌を損ねまじと乳母が出て参りました。すると監は、

「故・少貮はたいそう情趣のたしなみが深くご立派でいらしたので、
ぜひお目にかかりたいと思っておったが、それも叶わぬうちに亡くなってしまわれた。

故・少貮の代わりといっては何だが、姫君に専心お仕え申し上げようと、
恥を偲び己を励まして思い切って参上したのでござる。

こちらにおわす女君は格別高貴な血筋と承ってござれば、
田舎者の我には実に勿体ないが、我らの主君と思い申して、
頭上にいただき崇めたてまつろうぞ。

祖母殿が我との縁談に気が進まぬのは、
よからぬ女どもとの関係をお聞き及びになってのことでござろう。

しかし、そいつらと同じ待遇はいたしませぬ。
后の位にも劣らぬ寵遇でお迎えしましょうぞ」

と、調子に乗って言い続けます。






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最終更新日  August 20, 2017 03:56:45 PM
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