私訳・源氏物語

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October 20, 2018
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カテゴリ: 源氏物語
このお返事を、按察使大納言に見せたてまつります。

「心憎いことをおっしゃるのだね。

あまりに好色すぎていらっしゃるのを周りがやかましく言うものですから、
右大臣や我らの前ではひどく真面目になって、
浮気心を抑えていらっしゃることこそおかしいではありませんか。

浮気者の資格を十分備えていらっしゃるのに、
あえて真面目を装うなんて面白くありませんよ」

などと陰口を言って、今日も若君が参内なさいますので、また、

「もとつ香の にほへる君が袖ふれば 花もえならぬ 名をや散らさむ

(もともと薫り高いあなたさまございますから、
お袖が触れましたなら我が娘・中姫も一方ならずうつくしい花だと、
世に評判を高めることでございましょう)

父親ながら好色がましいようでございますけれど。あなかしこ」

と、真剣なお返事をなさいました。 匂宮は、

『この話、本気でまとめようと考えているのであろうか』

と、さすがにお心がときめき給うのですが、

「花の香を にほはす宿にとめゆかば 色にめづとや 人のとがめん

(花の香を匂わしている家を訪ねて行ったなら、
色に惹かれてきた好色者と人に咎められはしないでしょうか)」

などと、やはり気乗りしないお返事をなさいましたので、
大納言はご不満でいらっしゃいます。

北の方が退出なさいまして、内裏のことをお話なさいますついでに、

「若君が先夜宿直して、翌朝私のところに下がって参りましたけれど、
その時の匂いがたいそう優雅でございました。

他の人は気づかなかったようでございますが、
春宮がいちはやくお気づきになりまして、
『お前は兵部卿の宮のお側にいたのだね。それで私を避けているのか』
とお恨み事を仰せになりましたの。

こちらから匂宮さまにお文を差し上げたのでございましょうか。
そんな様子もみせませんでしたが」

と仰せになります。

「おっしゃる通りです。宮は梅の花がお好きでいらっしゃるし、
東の軒端の紅梅が花の盛りでしたので、
せっかくですから一枝折って献上したのです。

ほんに宮の移り香は格別ですね。
宮中の女房などでも、あんなまねはできませんよ。

しかし宮のように風流がましく焚き染めなくとも、
自然に身に備わっていらっしゃる薫中納言こそ世に珍しいではありませんか。

前世でどのような因縁があっての果報なのか、知りたいものです。

同じ花でも、梅にあれほどの芳香があるのは、
もとの根ざしが奥ゆかしいからでしょうか。

この宮などが愛で給うのは、そうした理由あってのことなのでしょうね」

など、花にたとえましても先ず匂宮のことをお噂申し上げます。





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最終更新日  October 20, 2018 09:50:14 PM
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