私訳・源氏物語

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April 10, 2019
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カテゴリ: 源氏物語
浮世離れした宇治の地では水の音さえ楽の音の引きたて役になり、
音色が澄みまさるような心地がしておもしろいのです。

一棹さすだけで舟が着く距離にある八宮邸にも
追い風に乗って聞こえてきますので、
八宮は昔のことを思い出していらっしゃいます。

「笛をたいそうおもしろく吹き通しているが、誰が吹いているのだろうね。
昔、六条院の大殿の御笛を聞いた時は、たいそう趣がありやさしい音色だったが、
これはひどく澄み切ってわざとらしい気配が感じられるから、
致仕の大臣のご一族かもしれない」

など、独りごちていらっしゃいます。

「そういえば長い間合奏もしていなかった。
管弦の遊びもせず、生きているのか死んでいるのかも分からぬまま
過ごしてきた年月の何と長いことか。
侘しいものだ」

とお嘆きになるにつけても姫君たちのうつくしいご容姿がいたわしく、
『こんな山ふところに埋もれたまま終わらせたくはない』
とお思い続けになります。

『同じ結婚させるなら薫中将を婿としてお迎えしたいところではあるが、
そう思ってはくれそうにない。とはいえ今風の軽薄な男など考えられぬし』

など思い乱れながら所在なく過ごしていらっしゃる山荘では、
春の夜も侘しくて寝付くことができません。

一方楽しく過ごしていらっしゃる旅寝の宿では、
酔い心地のうちにいつの間にか夜が明けてしまったようで、
匂宮が物足りなく思っておいでなのでした。





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最終更新日  April 10, 2019 01:38:01 PM
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