Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

2005/05/04
XML
カテゴリ: BAR
 ミナト神戸にはおしゃれなBARは多いが、老舗BARというのは、今では数えるほどになってしまった。あのバブル景気に起因する地上げが、そして阪神・淡路大震災による打撃が、老舗の永続を阻んだ。

 残っているのは、思いつくまま挙げてもSAVOY、YANAGASE、Abuはち、アカデミー、でっさん、バンブー、SMOKEYくらいだろうか…。そして、その数少ない老舗BARの中でも、僕がいつも一番居心地がいいと感じているのが、北野にあるYANAGASEだ( 写真左上 =YANAGASEの玄関へのアプローチ)。Yanagaseのアプローチ

 三宮の駅を降りて、北野坂を登る。山手幹線を越えてすぐ北東への、なだらかな登り坂に入る。そして5、6分歩くと、左手にツタのからまる一軒家が見えてくる。そこが「YANAGASE」。BARの玄関にたどりつくには、さらに階段を少し上がる。このアプローチが神戸らしくて、僕はとても好きだ。

 1966年の開業。本来のオーナーは、店の名の通り柳ケ瀬さんという方だった。柳ケ瀬さんは77年に亡くなり、以来、義弟に当たるNさんがカウンターを守っている。

 Nさんは元はサラリーマンだったが、店の開業時にたまたま大阪へ単身赴任していて、義兄に店を手伝うように頼まれた。それが縁で店に関わり続け、結局店を受け継ぐことになった( 右下 は、成田一徹氏の切り絵で描かれたNさん=「酒場の絵本」より。  (C )成田一徹 )。BarYanagaseのバーテンダー・Nさん

 Nさんの住まいは今も東京。孫もいて、月に1、2度は帰京するというが、単身赴任はもはや42年目。「僕は、おそらく日本で一番長く単身赴任している男です」と笑う。



 何よりも僕がYANAGASEの魅力だと思うのは、店の奥にある暖炉だ。決して飾りではなく、冬場には本当に薪(まき)を燃やし、店内を暖かく包んでくれる( 写真左下 )。暖炉のあるBAR。そう聞いただけでも、とてもロマンチックな気分になれる。Yanagaseの冬

 阪神大震災では、1カ月間の休業を余儀なくさせられた。店内のボトルはほとんどが割れたが、幸い、店は地盤のしっかりした山手に建っていたため、倒壊は免れた。

 店が再開すると、すぐに常連客が駆けつけ、口々に「ありがとう。こんな大変な時やからこそ、ほっとできる場所、ほしかったんや」とNさんに感謝の言葉を伝えたという。どんな災害や不幸にあっても、どんなに落ち込んでも、人間には一息入れられる場所が必要なのだ。

 いま、僕のもっぱらの心配は、Nさんが2年ほど前、病気をされ、店を少し休まれたことだ。今年72歳。もう、そう無理が利く歳でもない。Nさんがいなくなったら、YANAGASEはどうなるのだろうと、つい心配してしまう。

 オーナーがいなくなると店を閉じるBARが最近は多い。でも僕は、大震災をも乗り越えたYANAGASEだけは、神戸という街があり続ける限り、ずっーと残っていってほしいと願っている。

【Yanagase】 神戸市中央区山本通1-1-2 電話078-291-0715 午後5時半~午前零時 無休





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005/05/04 07:52:40 PM
コメント(8) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:YANAGASEの温もり/5月4日(水)(05/04)  
ayakh  さん
うらんかんろさん

YANAGASEは、神戸にいたときはさすがに私は小娘過ぎて扉を押せない、憧れのお店でした。

震災後、私も常連客であった「芦屋日記」に真っ先に駆けつけました。ああいう時だからこそ、無事を確かめたかったし、再出発を誓う一杯が欲しかったんですよね。「どんな災害や不幸にあっても、どんなに落ち込んでも、人間には一息入れられる場所が必要なのだ。」

そのお言葉が胸に深く染みます。そう、一時羽を休める場所が人間には必要なのです。。
(2005/05/04 07:31:38 PM)

Re:YANAGASEの温もり/5月4日(水)(05/04)  
na_geanna_m  さん
こんばんわ^^
暖炉があるバーって憧れますね♪

こんな素敵なバーがなくなってしまうのはもったいないですね。
誰か適任な方はいないのかな・・

外観からしてかっこいいです。 (2005/05/04 11:32:03 PM)

Re:YANAGASEの温もり/5月4日(水)(05/04)  
ステラビア  さん
おしゃれなBARはあっても老舗が少ない、という言葉にふと立ち止まりました。
先日小田原に行ったときも感じたのですが、生活に便利にはなったけど、歴史が失われつつあります。
これって観光客のエゴなのでしょうか?
でも外から見るからこそ、その土地のよいところがわかるのかもしれませんね。 (2005/05/05 01:13:47 AM)

ayakhさんへ  
 ayakhさん、おはようございます。

>YANAGASEは、神戸にいたときはさすがに私は小娘過ぎて扉を押せない、憧れのお店でした。

 へーっayakhさん、昔、神戸にいらしたのですか…。今でも時々行かれるのでしたら、
勇気を出して、ぜひ扉を開けてください。別に堅苦しくもない、気さくなBARですから。
(料金もリーズナブルだと思います)。

>震災後、私も常連客であった「芦屋日記」に真っ先に駆けつけました。

 「芦屋日記」って、阪神芦屋駅近くのビルの4階か5階のBARですよね。
僕は、震災前(12、3年前に)一度行ったきりかなぁ。
ソファ席のソファがふかふかしていたのを覚えています。

 ayakhさんとは、いろんなBARですれ違っていたかもしれませんね。
(2005/05/05 09:12:02 AM)

na_geanna_mさんへ  
 na_geanna_mさん、おはようございます。

>暖炉があるバーって憧れますね♪ 

 そうですね。暖炉のあるBARって、僕は大好きです。
銀座のBORDEAUXにも暖炉がありますが、
冬場に訪れたことがないので、実際に使っているのかどうかは、?です。
僕もBARをするなら、暖炉をつくって貰おうっと。

>こんな素敵なバーがなくなってしまうのはもったいないですね。
>誰か適任な方はいないのかな・・

 まだ店をたたむと決まった訳ではありません。NさんがYANAGASEの将来のことを、
どう考えていらっしゃるのかは聞いたことはないので、一度じっくり伺ってみたいです。
(2005/05/05 09:19:37 AM)

ステラビアさんへ  
 ステラビアさん、おはようございます。

>おしゃれなBARはあっても老舗が少ない、という言葉にふと立ち止まりました。

 神戸とよく似た港町、横浜でも、古い老舗BARが、
どんどん消えていくという、さびしい話を聞いたことがあります。
老舗というのは、その街の歴史を一緒につくっきた訳ですから、
ただ消えていくのは本当に悲しいことです。

>小田原に行ったときも感じたのですが、生活に便利にはなったけど、
>歴史が失われつつあります。これって観光客のエゴなのでしょうか?

 観光都市化することと、歴史や文化を守ることは両立できるはずだと、僕は思うのですが、
日本には、ただ、古いものを壊して建て替えればいいと思っている人種が多いのが残念です。
だから、観光地はどこも似たり寄ったりの「顔」になってしまうのですね。

 パリやロンドンやプラハの街並みには、それだけで観光客を引きつける魅力が溢れています。
便利さよりも文化や伝統を大切にしてきた、その国の人たちの見識に、頭が下がる思いです。
(2005/05/05 09:34:23 AM)

YANAGASEいいですね  
つ☆よし  さん
2回しか行ったことないですけど、YANAGASEはやっぱり良いですよね。お店の持つ空気が他とは違う独特のものがあるような気がします。
普段は気軽なバーばっかり行っているので、たまにバンブーとかサヴォイとか行ってみようかななんて思います。
いいお店があったら是非ご紹介ください。 (2005/05/28 09:37:24 AM)

つ☆よしさんへ  
 つ☆よしさん、ご訪問&書き込み有難うございます。
書き込みに気づかず、返事が遅くなって申し訳ありません。
趣味的なことばかり、好き勝手に書いているページですが、お時間がありましたら、
また遊びにきてください。Good Barの紹介も、小生のネタ切れにならない限りは、
おいおいとやっていきますので、ぜひ今後ともご愛読くださーい。
(2005/05/31 01:39:31 AM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

うらんかんろ

うらんかんろ

Comments

kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

Free Space

▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

神戸の残り香 [ 成田一徹 ]
価格:1980円(税込、送料無料) (2021/5/29時点)


▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。 ▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。

Favorite Blog

おことわり。 はなだんなさん

LADY BIRD の こんな… Lady Birdさん
きのこ徒然日誌  … aracashiさん
きんちゃんの部屋へ… きんちゃん1690さん
猫じゃらしの猫まんま 武則天さん
久里風のホームページ 久里風さん
閑話休題 ~今日を… 汪(ワン)さん
BARで描く絵日記 パブデ・ピカソさん
ブログ版 南堀江法… やまうち27さん
イタリアワインと音… yoda3さん

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: