Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2008/05/11
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 黄金週間の最後の5月4~6日、親戚のご夫婦のご招待を受けて、愛知県犬山から岐阜県下呂温泉へと2泊3日の旅を楽しんでまいりました。犬山1

 犬山を訪れるのは初めてですが、新幹線と名古屋鉄道を乗り継ぐと、大阪からわずか2時間ほどで到着です(名古屋までの新幹線は黄金週間のピークとあって、結構混んでいました)。

 犬山へ着いた僕らは、まずは親戚のご自宅へ。親戚宅の玄関には、白と赤の美しいつるバラが2階にまで伸びて、見事なアーチをつくっています( 写真左 )。

 40平米ほどの庭には、色とりどりの花が咲き乱れ、花のほかにも、ハーブや野菜たちが、大切に育てられています。犬山2

 ガーデニングは花への愛情と体力が必要な趣味ですが、広い庭をお二人でしっかりと手入れされているのを見て、ただただ感心。個人的には、オリーブの大きな木もあったのが羨ましかったです( 写真右 =手入れのよく行き届いた見事な庭)。 

 親戚宅で昼食をいただいた僕らは、ご夫妻と一緒に犬山で最も有名な観光名所である「国宝・犬山城」へ。犬山城は、昔から一度は行ってみたいと願っていた城です。犬山3

 日本では、姫路、彦根、犬山、松本という4つの城が「国宝指定」されていますが、犬山城はなかでも戦国時代の天守閣が現存している唯一の城です( 写真左

 犬山城は天文6年(1537)、織田信長の叔父にあたる織田信康によって築城され、戦国時代の間は城主が何人も代わりました。その間には秀吉が一時期城主だったこともあります。犬山城

 しかし、江戸時代に入って元和3年(1617)に尾張藩付きの成瀬正成が城主になってからは成瀬家が代々城主を務め、廃藩置県の後も、成瀬氏の子孫が代々個人で城を所有するという不思議な形が、2004年に財団法人となるまで続きました( 写真右 =犬山城天守閣)。

 黄金週間とあって、全国からの観光客でごった返しているだろうなぁと覚悟していましたが、意外や意外、天守閣へは(人出はそこそこありましたが)並ばずに入れました。犬山・城下町

 ただ、3層4階の天守閣の最上階へ登るには、彦根城と同様、急で狭い階段を何回も上らなければなりません。結構汗をかきます。いい運動になりますが、高齢の方にはちょっときついかも。

 犬山城を見学した後、僕らは古い家並みの残る犬山の城下町を散策。夜は泊まったホテルのレストランでライトアップされた天守閣を眺めながら、美味しいフルコースをいただきました( 写真左 =古い家並みが残る犬山。これは酒屋さんです)。大井肉店

 翌5日は、朝8時半にホテルを出発し、親戚ご夫妻と一緒に犬山のもう一つの観光名所である「明治村」へ。明治村はその名の通り、全国にある明治時代の建築物を数多く移築・保存している屋外博物館のような場所です( 写真右 =神戸市内にあった大井牛肉店)。

 約100万平米もある広大な村内には約60の建築物や客車、鉄橋のほか、路面電車、SLも動態保存されています。聖ヨハネ教会

 ゆっくりじっくり見学すれば丸1日かかるような規模ですが、僕らは午後から下呂温泉方面へ移動しなければならないので、午前中いっぱいをかけてお目当ての建物を中心に見て回りました( 写真左

 僕のお目当ては2つありました。一つは、東京の千駄木にあった夏目漱石の旧居= 写真右 。初めて知ったのですが、この旧居(借家だったとか)は漱石が住む前には森鴎外も住んだことがあるので、「鴎外・漱石住宅」という表示がされていました。鴎外・漱石旧居

 漱石はこの平屋の建物に、明治36年(1903)から39年まで暮らし、この家の書斎であの名作「我輩は猫である」「坊ちゃん」「草枕」を生み出しました。千駄木の旧居跡は現在、碑が立っているだけで、漱石が暮らした頃を偲ぶものは何もありません。

 本来なら、千駄木の現地で保存されるべき建物だったとのですが、文化や文化財の保存についてレベルが低い日本では、このような移築保存しか道がなかった訳です。それでもこの明治村で文豪の創作空間を昔のまま見られることは嬉しいことです。漱石・執筆の間で

 もう一つの僕のお目当ては、これも元は東京にあった旧帝国ホテル。ご存じのようにあの名建築家フランク・ロイド・ライトが設計した石造りの素晴らしい建物です( 写真左

 移築されているのは旧ホテルのごく一部(10分の1ほど)= 写真右下 、本館玄関などの中央部分にすぎません。

 それでも、3階まで吹き抜けの中央ロビー= 写真左下 =や大谷石や透かしテラコッタを使った見事なまでの内外装= 写真右下 =など、この部分だけでも十分にライト建築の素晴らしさにふれることができます。旧帝国ホテル本館

 ライトは建物自体の設計だけでなく、外壁装飾や家具、調度品(テーブルや椅子)に至るまで自らデザインしました。ライトがこのホテルにかけた情熱が伝わってきます。

 レストランや喫茶では当時の椅子やテーブルのレプリカが使われていますが、そのデザイン(意匠)は、現代でも通用しそうなモダンな感覚に溢れています。

 この旧帝国ホテルに泊まった有名人としては喜劇王チャプリンやあのマリリン・モンローらが知られていますが、二人ともこのホテルを絶賛したそうです。

 このホテルも本来なら現地で保存すべき歴史的建造物でした。歴史的な文化遺産はその場所にあってこそ意味があり、その価値があるものです。帝国ホテルロビー

 日本では、「移築すればいいじゃないか」「建て直す建物の中に一部だけ保存すれば十分」という発想が今なおまかり通っています。歴史や文化遺産を守ってゆくという意識は、残念ながら日本は欧米に大きく遅れをとっています。

 イギリスやイタリア、フランス…どの国をとっても、古い歴史的遺産(建物)を大事に残し、現代の生活の中で活用しています。貧困な発想しか持ち得ない官僚や企業経営者には情けないというしかありません。帝国ホテル装飾

 さて明治村でのお昼ご飯は、やはり「明治」にこだわって、「明治のカレー」= 写真左下 =をいただきました。明治中期のレシピを再現したというカレーはやや甘口でしたが、わさびくらいしか香辛料を知らなかった明治の日本人にはこれでも結構刺激的な味だったでしょう。

 食事の後、明治村を後にした僕らは親戚のお父様が運転してくれる車で、一路、下呂温泉へ。途中、親戚のご両親が暮らす岐阜県・七宗町神淵というところに少し寄り道した後、渓谷沿いの国道を走り、午後5時頃、下呂に着きました。明治のカレー

 下呂温泉は有馬、草津と並んで「日本三大名湯」と言われています(初めて知りました)が、四方を山に囲まれた盆地のようなのどかな場所にあります。温泉好きの我々としては以前から一度訪ねてみたかった場所でした。

 下呂では、せっかくだから一番有名な旅館として知られる「S」に泊まりました(黄金週間なので料金もハイでしたが…)。「S」は約250室もの部屋数を誇り、皇族も泊まるという格式ある旅館と聞きました。大きな3つの建物のほか「離れ」が2カ所あります。下呂温泉街

 しかし、大きな旅館によくありがちなのは、料理は大量生産でおおざっぱで、きめ細かいサービスが不十分などという点です( 写真右 =下呂の温泉街)。

 そんな不安は「S」にも的中しました。夕食の場所は大広間で、まるでデパートの大食堂状態です。子どもが走り回り、雰囲気はだいなしです。料理も工夫に欠けて、和洋中折衷の夕食コースは首をかしげる内容でした。

 飛騨まで来てカツオのたたきやサーモン・ステーキを食べたい人はどれくらいいるのか(美味しい川魚があるというのに…)、塩胡椒だけで十分美味しい霜降りの飛騨牛になぜ、フランス料理のようなこってりしたソースをかけるのか。そもそも和洋中折衷コースのみという設定はいかがなものか。高山本線沿いの渓谷

 温泉は館内に表情の違う施設が3カ所もあって、これだけは堪能できました。館内施設も充実しています。しかし、何かが足りないのです。料金に見合ったサービスを受けたという気がしません( 写真左 =下呂へ向かうJR高山本線は絶景の渓谷沿いを走る)。

 最近、大きなホテルや旅館よりも、隠れ家のような小規模の宿に人気が集まっていますが、その理由がわかるような気がします。

 若女将は帰り際もきちんと見送ってくれましたが、おそらくは規模が大きすぎて細かい部分にまで目が行き届いていないのでしょう。「S」が一流旅館であるだけに、頑張って改善していってほしいと思います。





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Last updated  2008/05/12 01:20:50 PM
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うらんかんろ

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Comments

汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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