Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2008/11/02
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カテゴリ: 各地のBAR巡り
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 沼津でVictory、Frankという2軒の素晴らしいBARを巡った僕は、JRの各停に乗り、再び三島へ戻った(沼津~三島間は時間にして5分ほど、だから、まぁ同じ街のようなものです)。Yumoto

 さて、三島に戻っての3軒目のBAR。この夜の最大の目的でもある「Bar YUMOTO」へ向かう。駅から南へ徒歩7、8分、細く、曲がりくねって街灯も少なくてほの暗い道。初めての人はまず間違いなく道に迷うに違いない。

 案の定、僕もYUMOTOがあるマンション前を通り過ぎてから、間違いに気づき引き返した。BARであることを示すのは、マンション入り口脇の店名の金属製のプレート( 写真右 )だけ。でも、そのプレートのデザインがまた素晴らしいセンスなのである。

 店内の写真は事前にある本で見ていて、だいたい知っていた。カウンター横の壁一面がガラスで、土手の木々や源兵衛川のせせらぎが見える。木々はライトアップされて、とてもいい眺め。Yumoto3

 聞けば初夏(5~6月)には、なんと窓の外にホタルが舞う幻想的な光景も眺められるという。三島には市街地に小さな川が数多く流れ、市や住民による川の浄化の努力もあって、ホタルがたくさん戻ってきているとのこと。素晴らしい取り組みだ。

 さて、店内は金曜日ということもあるが、ほぼ満員の盛況だった。カウンターに空いていた席に案内された僕は、ここでもまずジン・リッキーを頼んだ(店が忙しい時には、ややこしいカクテルを頼まないのも客のマナーだ)。源兵衛川

 Bar YUMOTOのマスターは、その名の通りも湯本。彼、湯本織衛君とは、4年ほど前、銀座のBar Taliskerで知り合った。当時湯本君はそのTaliskerで修行中の身。「いずれ三島に帰って自分の店を持ちたい」と夢を語っていた。

 その後、彼が三島へ戻ってからはしばらく会うことはなかったが、しばらくして、ある雑誌で彼が念願のBARを開いたこと、そして結婚した奥様の清美さんは中学校の同級生で、同じ職業(バーテンテンドレス)であることを知った( 写真右 =YUMOTOの裏を流れる源兵衛川。遊歩道代わりの飛び石があって、川べりまで降りられます)。

 ジン・リッキーを僕の目の前に持ってきた湯本君に、「お久しぶりです。Taliskerでお会いした**です」と挨拶すると、少し驚いたようで(久しぶりなので、店に入って来た時はすぐには分からなかったのだろう)が、「はるばる有難うございます」と歓迎してくれた。奥様ともご挨拶した。清楚な中にも、きりりとした表情が素敵な人だ。Mrs Yumoto

 実は、奥様は今年5月のNBA(日本バーテンダー協会)の全国カクテル・コンクールで並み居る強豪をおさえて見事優勝したという輝かしい経歴の持ち主( 写真左 =5月の表彰式での湯本清美さん〈中央〉  ( C ) 朝日新聞社 拝借多謝! )。女性が「日本一」になるのは12年ぶりという。

 そんな快挙もあって、YUMOTOはまさにいま旬(しゅん)のBAR。日本一のカクテルを味わいたいというBAR好きが全国から集まって来るので、連日盛況のようだ。でも、僕はやはり昔のよしみで再会を祝って、2杯目は湯本君のオリジナル・カクテルをお願いした(笑)。奥さんのカクテルは次回の楽しみにとっておこう。Yumoto2

 さて、三島にはYUMOTOのほか2軒、お邪魔してみたいBARがあった。1軒は、三島では最も全国にもその名が知られてきた「Bar 奈良橋」。そしてもう1軒も歴史ある店だが、ジャズなどのライブで有名な「茶色の小瓶」という風変わりな名のBARである( 写真右 =湯本君と再会を祝ってツーショット)。

 僕の今夜のホテルは駅近で、徒歩2分くらい。目的のBARは駅からの距離が遠い順で、奈良橋→茶色の小瓶→YUMOTOとなる。という訳で、まず奈良橋へ行って、その後茶色の小瓶に寄り、再びYUMOTOへ戻って、ホテルで沈没(笑)というプランを描いていたので、とりあえず、湯本君に「後でまた戻ってくるからよろしく」と言って、YUMOTOを後にした。

 奈良橋は、1922年(大正11年)に造られた石造りの土蔵を改造したユニークなBARである。三島駅からは伊豆箱根鉄道で2駅、「三島田町」という駅のそばにある。ゆったりした吹き抜けの空間、そしてイタリアのアンティ-クの飾り棚を使ったバック・バーがとても温かい雰囲気を作り出している。奈良橋2

 だが創業は意外と最近で、1999年。沼津のVICTORYで修業された小林健吾さんという方が親友のFさんの協力で開いた。そして今では、三島のBARでは最も有名な存在となり、僕も「いつか訪れてみたい」とずっと願い続けてきたBARだった( 写真左 =奈良橋の玄関)。

 しかし、創業されたマスターの小林健吾さんはすでにこの世にない。今はFさんの後輩にあたる青木マスターが店を守っておられる。7年前、小林さんは心臓の手術を受けるために入院した。さほど難しい手術ではないという話だったが、体に異変が起きて帰らぬ人となった。

 まだ33歳の若さだった。「ちょっと行ってくるから、店を頼むねと言われ、お別れしたのが最後」だった青木さんは急死を知らされて呆然となったという。小林さんのいなくなった「奈良橋」をどうしたらいいのか、奈良橋の創業時から一緒に手伝って来たFさんらスタッフは思い悩んだ(当時のスタッフには、YUMOTOの奥様、清美さんもいた)。奈良橋

 小林さんの存在はあまりにも大きかったが、その思いのこもった、この奈良橋を閉じる訳にはいかない。悩んだ末に、Fさんや青木さんらのスタッフはみんなで力を合わせ、店をそのまま守ることに決めた。

 そして今、Fさんら歴代スタッフの努力の甲斐あって、奈良橋は昔と変わらぬ姿で毎夜、客でにぎわっている( 写真右 =奈良橋の店内。カウンター席から見上げると、土蔵中2階の物置が見えるのが面白い)。

 僕は、生前の小林さんとは会うことは叶わなかった。しかし、奈良橋のカウンターにたたずみ、美酒に酔い、青木マスターと語り合ううち、天国にいる小林さんに出会えたような気がした。

 「健吾さん、貴方の『志』はしっかりとお弟子さんたちに受け継がれていますよ」。三島にこれからもBar 奈良橋があり続けること、それが僕らBARファンの願いでもあり、小林さんへの何よりの供養になるに違いない。茶色の小瓶

 さて、奈良橋の後には、せっかくだから伊豆箱根鉄道の可愛い電車にひと駅(田町→広小路)乗ろうと思ったが、あいにく電車は出たばかり。時間がもったいないので広小路までテクテク歩くこと10分余で、広小路駅が視界に。そこから数分で目指す「茶色の小瓶」( 写真左 )に着いた。

 ここも2階へ階段を上がる。ドアに近づくにつれてジャズが聞こえてくる。そう、ここはジャズやボサノバ、カントリーなどライブが週1~2回開かれるライブBAR。あいにくこの日はライブはなく、代わりに、店内のモニターでジャズ・ライブが流されていた。

 店内は明るいライティングで、キャパも50~60人は入れそう。一人でしっとりと飲むというよりグループ向きか。スタッフもおしゃべり好きでよく話しかけてくる。フロアの隅にピアノがあったので、弾きたい気持ちがむずむずとしてくる(笑)が、他にお客さんも多いのでここはあきらめる。

 茶色の小瓶は料金もリーズナブルで、気軽に飲むにはとてもいい雰囲気の酒場だ(こういう賑やかなのは苦手という方のためには、同じ経営の姉妹店で、オーセンティックな「アフターバー石垣」が近所にある)。

 さて、「茶色の小瓶」で、小休止的な飲み方をした僕は、再び、「お帰りなさい」と迎えられて、YUMOTOのカウンターに戻った。12時近くになるので、店はまだ超盛況。Yumoto4地方都市の不景気も、勢いのあるYUMOTOには無縁なのかもしれない( 写真右 =アイラ島の蒸留所関係者のサインが数多く記されたスコットランドの旗。湯本夫妻が新婚旅行の思い出が詰まっている。BARのドア続くエントランスに飾られている)。

 出戻りの僕は、窓越しの景色がよく見えるように、カウンターの一番窓側に席をとった。そして、今度はシングルモルトのボウモアを頼んだ。アイラ島のボウモアは湯本ご夫妻が3年前結婚式を挙げた思い出の地。

 そして、僕にとっても、昨年秋旅した忘れられない場所。アイラに住む共通の知人らの話に花が咲いたが、あいにく今夜は超盛況である。あまりご夫妻を僕の前に拘束してはいけない(これも酒場で飲むマナーの一つだ)。

 その後、僕はさらにもう1杯、シングルモルトをゆっくりと頂いた後、YUMOTOを後にした。帰り際、湯本君は店の前まで出てきて、見送ってくれた。「また必ず来ます」。僕はそう言い残したが、それは社交辞令ではなく、このYUMOTOには必ずまた来たいと思う。

 昔親切にしてもらい仲良くなったバーテンダーが、その後独立して成功する…これくらい嬉しいことはない。そしてBARという舞台を通じて、全国に知り合いが広がる。いつも言うけれど、だからBAR巡りはやめられない。

【Bar YUMOTO】 静岡県三島市芝本町10-7 電話055-981-5578 午後6時~午前2時 不定休  【Bar 奈良橋】 三島市中田街8-25 電話981-8332 午後6時~午前1時 日休  【パブリックバー・茶色の小瓶】 三島市西本町1-25 広小路ヒルズ2F 電話981-1566 午後6時~午前2時 月休  【アフターバー石垣】 三島市泉町14-1 電話976-1444 午後6時~午前1時 日休 ※いずれの店も大都市のBARに比べるととてもリーズナブルです。



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うらんかんろ

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Comments

kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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