Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2011/02/13
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カテゴリ: カクテルブック
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    コクテールの傳説【注1】

【注2】 の某市に一人の富豪が在りました。此の富豪は当時流行の非常に優秀な一羽の闘鶏の持ち主で御座いました。而(しか)して此の富豪は又日本なれば小野小町とでも云う様な一人娘の娘が御座いまして方々から結婚申し込みが絶え間が御座いませんでしたが、此の娘は極めて父親に従順で、未だ誰にも婚約もなく、家事の手伝いなどをして居りました。

 然るに某日、此の富豪が愛育して居りました闘鶏が見えなくなりました。サァ、大変。家中の人が総掛かりになって捜しますけれども、皆目行方が判りません。夜になっても鶏は帰って参りません。主人は非常に心配致しまして、夜の目も眠れません。遂に翌日になって主人は闘鶏の行方を捜すべく旅立ちました。而して処々方々尋ね廻りましたが、舌切り雀ならで遂に闘鶏の行方は知れず、尋ねあぐんで空しく家に帰りまして悲嘆の余り遂に床に臥(ふ)しました。

 親孝行な美人の一人娘は非常に心配して父親に次のような事を申しました。「若(も)しも彼の闘鶏を探し出して連れて来た人がありましたら、私は其(その)人と結婚しましょう」と。父親は大変喜びました。そこで、其の事を新聞に広告しました。そうすると二三日たちますと、富豪の門前に馬に乗った騎兵中尉が参りまして馬から下りて、家へ案内を求めて主人に会いたいと申しますから、病臥して居ります父親に代わって、娘が面会を致しました。

 ところがその騎兵中尉は美目(びもく)秀麗氣品高雅な貴公子で御座いましたので、処女の小町娘は唯恍惚として此の青年将校に見とれ、青年将校も又アイルランド一の美人に見惚(と)れ、互いに暫し言葉も出ませんでした。

 やがて、騎兵中尉がマントの裏から取り出した物を見ますと、明け暮れ尋ねる秘蔵の闘鶏で御座いましたから大変。今迄(まで)で青年将校の美貌に見惚れて居りました娘は驚いて、病室の父親に闘鶏が帰った事を申しますと、父親も病床を飛び出して応接間へ行って、いきなり闘鶏を抱き上げ、青年将校に堅い握手を求めました。

 厚く礼を言い乍(なが)ら見ますと、是れ又、娘にとっては三國一の婿殿。二人の喜びは元より、娘は闘鶏の帰った喜びよりも初恋の胸轟(とどろ)かせ、父の命ずる儘(まま)にサイドボールに有りつ丈(たけ)の酒を運んで中尉にお酌を致しましたが、嬉しさに手の舞い足の躍るをも知らず、氣も狂わん計りにて手当たり次第に色々の酒を注ぎ混ぜて青年将校にすすめました。中尉も又、此の佳人と結婚して多くの人の羨望となる嬉しさに、美しき尾を持って居る此の闘鶏を抱き上げて其の混合酒を乾盃しました。

 青年将校は連隊に帰って此の事を吹聴致しました。而して其の無茶苦茶に注ぎ混ぜた酒が非常に美味かった事を話しました。そうすると此の事が連隊中の評判になって、其の混合酒を名づけて「コック(雄鶏)テール(尾)」と呼ぶ様になったのがコクテールの由来で御座います。其の後、医薬上や嗜好上より色々の混合法が研究されまして、今日の隆盛を来したので御座います。

 因みに、傳説に依りまして、男女同席する時にはコクテールに限り、男子が先に飲んで婦人が後ちに飲むのが慣例になって居ります。


【注1】 カクテルという言葉の起源・由来については様々な説がある(主な説だけでも5つほど)。 →監修者のブログ「酒とピアノとエトセトラ」・ 2009年2月11日の日記 をご参照。ここで前田氏が紹介した説(挿話)は、1982年に初版が出版された「カクテル入門」(福西英三氏著)で紹介された説とよく似ているが、福西氏の本では場所が「英國アイルランド」ではなく、「アメリカの片田舎」となっており、若干の異同が見られる。もっとも、前田氏も福西氏も出典資料を示していないため信憑性は不明である。

【注2】 「英國アイルランド」という表記について怪訝(けげん)に思われる方もいると思うが、1924年当時アイルランドは「アイルランド自由国」と呼ばれ、独立国ではなく、英国の自治領であった。1938年にようやく英国から独立が承認され「アイルランド共和国」となったが、北アイルランドの一部は主に宗教上の理由で英国に留まったため、その後、カトリック・プロテスタント間の血なまぐさい紛争が最近まで長く続くことになった。



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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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