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2018/07/20
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 今や世界的に幅広く飲まれているお酒に「ジン(Gin)」があります。皆さんにも、ジン・リッキーやジン・トニックという形で馴染みが深いと思います。ジンは、主に大麦、ライ麦、ジャガイモ、ジュニパー・ベリー(Juniper berry、西洋ネズの実)のほか様々なスパイスやハーブ類を原材料とする蒸留酒です。独特の香味はジュニパー・ベリー由来のものですが、それ以外の材料についてはとくに決まりがある訳ではなく、蒸留所、銘柄ごとに様々な材料が使われています。

 しかし、「ジン発祥の国」がオランダであることは意外と知られていません(一般的には、「英国発祥」と思っている人が多数派ではないでしょうか? 末尾 【注】 ご参照)。オランダ語では「イェネーヴァ(jenever)」、英語では「ジュネヴァ(genever)」と呼ばれ、この言葉が、後に誕生した「ジン」の語源になったと言われています。

 ジュネヴァは、1660年、オランダのライデン大学医学部教授、フランシスクス・シルヴィウスが解熱・利尿用薬用酒として開発したのがその起源と伝わっています。主に大麦、ライ麦などを主体に造られたジュネヴァは、「普通に飲んでも美味しい」という噂が広がり、またたく間に一般庶民に普及していきます。

 そしてその後、ジュネヴァは英国に持ち込まれます。1689年、オランダの貴族であったオレンジ公ウイリアム(ウィリアム3世)がイングランド国王として迎えられます。この際、ウイリアム公が英国に持ち込んだジュネヴァが、後に改良され誕生したのが、英国ジンだというのが定説です。


 19世紀半ばに連続式蒸留器が発明されると、より雑味が少ない、度数の高いスピリッツが蒸留できるようになり、ジンの製法も大きく様変わりしました。とくに英国ジンはジュニパー・ベリーをより多めに使い、独特の味わいを確立させていきます。これが現在、世界的に主流となっているドライ・ジン(ロンドン・ドライジン)と呼ばれるタイプのジンです(写真は、アムステルダムの酒場のバックバーに並ぶジュネヴァ=下の段の方。ほとんどが陶器瓶です)。

 19世紀以降、オランダのジュネヴァは、英国ジンに主役の座を奪われますが、「ジンの原型」として現在でも欧州では一定の存在感を保っています。オランダでは、かつては「ジュネヴァは年寄りの酒」として若者には敬遠されていたのですが、昨今は、クラシック・カクテル再評価の動き(カクテルのベースとしてのジュネヴァに関心が高まっています!)や、ジュネヴァの伝統を見直す機運もあって、再び静かなブームの兆しが見られるそうです。

 さて、前置きがやや長くなりましたが、クレラー・ミュラー美術館でゴッホの名作を堪能した僕らは、ガイドのWさんの提案で早めにアムステルダムに戻ることにしました。そして、Wさんの案内でアムス中心街にあるジュネヴァ酒場を巡ることに。


 まず連れて来てもらったのは、中央駅から徒歩7~8分くらいのところの路地裏にある、「ワイナンド・フォッキンク(Wynand Fockink)」というお店(写真)。Wさんは、日本人向けの「アムス・ナイトツアー」のガイドもやっているので、店主とは顔なじみです。


 お店はいかにも歴史ある、古~いという感じの造り・内装です。聞けば、なんと1679年の創業当時の蒸留所の建物を改造して酒場にしているんだとか。なので、店内は昔の趣きがそのまま残っています。しかも、この街のど真ん中の蒸留所は現在も稼働中とのことで驚きです(見学は要予約)。


 ジュネヴァの飲み方には流儀があります。口の広がった細長い、小さなジュネヴァ専用グラス(45ccほど入ります)になみなみと注がれます。そしてまず一口ちょっと飲んでから、ようやく手で持って飲むことが許されます(写真のグラスは、すみません!僕が一口飲んでしまったので減っています。一つ前の写真では、3人の女性客がカウンター前で少しかがんでグラスに口を付け、最初の一口を飲んでいるところ)。


 ジュネヴァと言うとクセがあって、キツいお酒というイメージを持たれるかもしれませんが、原材料は英国ジンとは違って、大麦などの穀類やジャガイモが主体(ジュニパー・ベリーは少なめです)なので、ほとんどクセはありません。そして、クセがないので意外とまろやかで飲みやすいのです(アルコール度数も英国ジンに比べて低めです)。


 「ワイナンド・フォッキンク」は地元の有名酒場でガイドブックにもよく載っているので、観光客が昼間から次々と訪れ、賑わっていますが、実は蒸留所は、1954年に一度閉鎖されました。そして、閉鎖後に買収した大手のボルスが1993年、再び蒸留所として復活させ、この酒場もオープンさせたということす。こんな粋なことをするボルスという会社が、僕はますます好きになりました。


 僕らはとりあえず、ジュネヴァ2杯を頂いて隣にある蒸留所のギフトショップへ。ここでは造ったばかりのジュネヴァ(陶器瓶入り)やオリジナルのリキュールをお土産として買うこともできます(さっそく定番のジュネヴァを小瓶で1本購入!)。


 さて、Wさんは「まだ時間がありますから」ともう1軒、案内してくれました。最初の店から歩いてわずか数分。ダム広場の裏手にたたずむ「デ・ドリー・フレッシェス(De Drie Fleschjes)」(写真)という360年以上続く老舗酒場です(実は、この酒場はもともとアムス滞在中に行く予定をしていたので、ちょうど良かったのでした)。


 ここは先ほど名前が出たボルスの直営店ですが、「ワイナンド・フォッキンク」に比べると、なぜかすいていました。もちろんWさんはこちらの店主とも顔なじみ(ちなみに、このようなジュネヴァ酒場は地元では「ブラウン・カフェ」とも呼ばれます。客のタバコの煙やヤニで壁が茶色くなったことに由来するとか。ただし現在、欧州のほとんどの国で酒場の店内は全面禁煙となっていますす)。


 「デ・ドリー・フレッシェス」の公式HPによると、「1650年のオープニング・パーティーには、あの画家のレンブラントや哲学者のスピノザら、当時のオランダを代表する豪華な顔ぶれが集った」というから凄いです。


 店内は、ワイナンド・フォッキンクに勝るとも劣らない風格ある雰囲気です。床に掃除用の白砂が撒かれているのもブラウンカフェ時代の名残りとのこと。よく見ると、壁一面に樽がぎっしり、3段に積まれています。そして樽には、なにやら会社名が書かれています。


 聞けば、アムスにある会社が従業員の福利厚生用に樽をキープしているんだとか。従業員は仕事が終わった後、ここに立ち寄り自由に飲むことができます。なんと素晴らしい太っ腹な会社なんでしょうか!ほんと羨ましいですね。


【注】 Wikipediaは、「11世紀頃にイタリアの修道士がジュニパー・ベリーを主体としたスピリッツを作っていた記録があり、イタリア発祥説も近年有力になっている」と紹介しているが、現時点ではやはり、「オランダ発祥説」を支持する専門家の方が多い。

<8回目に続く>

※過去の「旅報告」連載は、トップページ中ほどのリンク 「旅は楽しい」 からお読みになれます。


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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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