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July 15, 2005
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カテゴリ: 教授の映画談義
昨日は何と、帰宅してから映画を2本見てしまいました。一つは『ターミナル』、もう一つは『ジョー・ブラックをよろしく』です。以下その感想などを書きますが、ネタバレなので、まだご覧になっていない方はご注意下さい。

さてまずはじめに『ターミナル』の方ですが、こちらは一人の男(ビクター)が、ある約束を果たすために「クラコウジア」なる東欧(?)の国からニューヨークにやってくる、という話。ところが彼が機上の人となっていた間に彼の地で革命が起こり、新政府の樹立までの間、事実上国が消滅してしまうという事態になる。当然パスポートは無効となるので、ビクターはJFK空港の国際線ロビーに足止めを食ったまま、アメリカの土を踏むことも故郷に帰ることもできなくなってしまう。しかもビクターは英語も話せないし、ろくにお金も持っていないという状況。さあ、どうするか、というところから物語は始まります。

もちろん、一番切実なのは食事の問題です。始めのうちはコーヒーショップなどでただでもらえるスナックなどで食いつなぐのですが、そのうち荷物用のカートを返却場所に返せばデポジットの25セント玉がもらえることに気付き、その小銭を集めて食事にありつくようになる。しかも空港内の修理中のゲートに寝場所も確保し、また英語の勉強も始めて、片言ながら人々と意思疎通ができるようになっていく。ちょうどロビンソン・クルーソーが無人島の中に生活の場を作り上げていったように、国籍を失ったビクターはJFK空港の真ん中に確固とした生活の場を作り上げていくわけです。このあたりのシークエンスはなかなか面白い。

ところが空港の管理責任者の某は、無国籍者のビクターが空港を住まいにしていることを近々やってくる空港の視察団に知られたくない。何とかビクターを空港の外に出し、「不法滞在者」として逮捕させ、彼を管轄外に移してしまいたいわけ。そこで彼は様々な策を弄してビクターの追い出しにかかるのですが、ビクターもさるもの、合法的にニューヨークの街に出られるようになるまで、あくまで空港に留まる決意を固めていきます。

とまあ、そんな駆け引きが展開する一方、ビクターと空港で働いている様々な人々との間に交流が生まれ、高圧的な空港管理者という「強者」との対立という図式の中で、ビクターは「弱者」の立場にある空港労働者たちの代表者みたいな存在になっていくのですね。また、空港でのサバイバルに必死になっていたビクターは、あるきっかけから不倫の苦しい恋をしているスチュワーデス(アミリア)と出会い、互いにほのかな恋心を抱くということも起こってくる。果たしてビクターは無事サバイバルを果たし、ニューヨークの土を踏むことができるのか、そしてビクターとアミリアの関係はこの先どうなっていくのか。ドラマは俄然面白くなってきます。しかも、こうしたストーリー展開に加えて、そもそもビクターはなぜニューヨークにやってきたのかという謎も明らかにされていく・・・。

ま、こんな感じの映画ですね。筋書きだけ見ると面白そうでしょ? それに主演が『フォレスト・ガンプ』以来、「愚かなる賢者」を演じさせたらピカ一のトム・ハンクスとくれば、これは面白くならないはずがない・・・・。

しかし、結論から先に言うと、私はこの作品に80点の合格点をあげることができませんでした。まあ、73点というところかな。私の個人的な意見ではありますが、この作品、随所で脚本の詰めが甘いんですよ。

まず、ビクターがニューヨークを訪れなければならない理由というのがそれほど切実でない。これがストーリー展開上、一番深刻な問題ですね。ビクターがはるばるニューヨークまでやってきてやろうとしていることは、やりようによっては郵便で済ませられるし、どうしても今やらなくてはならない、というほどのものではない。だから、映画の最後でビクターが目的を達成した時も、100%までは感動を共有できない。

それにこの話は「東欧の片田舎から来たビクターのイノセントな人柄に触れることによって、ニューヨーカーたちが忘れかけていた人間性を回復していく」という話にすべきものであって、シチュエーションのお膳立てはその方向で全て整っているのに、実際には必ずしもそうなってない。スチュワーデスのアミリアは結局不倫を続けることを選ぶし、またビクターと対立する空港管理の責任者も、最終的にビクターがニューヨークの土を踏むことを黙認するのですが、その決定的なハイライト・シーンも案外さらっと流されてしまって、盛り上がりに欠ける気味がある。ついでに言えば、空港の掃除係を長年勤めてきたインド人のおっちゃんなど、ビクターと係わったことがきっかけでインドに強制送還され、刑務所に7年もぶち込まれることになるのですが、それもなんだか少し後味が悪い・・・。てなわけで、せっかく「良い話」になりそうな素材がこれ見よがしに揃っているのに、それを活かしきれてないなぁ、という感じがしてしまうんですね。今、ロードショーにかかっている『宇宙戦争』の出来も含め、どうなんでしょう、スピルバーグって、ひょっとして完全に焼きが回っちゃったんじゃないですかね・・・。(あ! 言ってしまった!)



私はジョー・ブラックを演じるブラッド・ピットという俳優がさほど好きではないので、この映画がロードショーにかかっていた時も無関心で、昨日の深夜、NHKの衛星放送で放映されることも知ってはいましたが、別に見る気はなかったんです。ところがたまたまチラッと見始めたらとても面白かったので、ついついそのまま見てしまったというわけ。

この映画、アンソニー・ホプキンス演じる大会社の社長(パリッシュ)のところに「死に神」のジョー・ブラックが現れ、死期が迫っていることを告げる、という話です。ただ、ジョーは現在「休暇中」で、パリッシュをあの世に連れて行く前に、この人間世界を少し見て回りたいという思いがある。そこでパリッシュの死期に少しだけ猶予を与える代わりに、彼にこの世を案内してくれ、と頼むわけ。

パリッシュは既に功成り名遂げた人ではあるし、また最愛の奥さんに先立たれたこともあって、少し厭世的になっていた。ですから、もうすぐ死ななくてはならないことに対しては、彼はそれほど恐れはしない。しかし、そうは言ってもやはり死期が近いことを悟ってしまった以上、自分がこの世で成し遂げたことを形にして残したいという気にもなるし、また二人の娘、特にまだ独り者の末娘のことも気がかりになってくる。それまで社長として辣腕を振るってきたパリッシュも、そんな人間臭い悩みに直面せざるを得なくなってくるわけです。一方、初めて人間の世界に降りてきたジョー・ブラックも、この目新しい世界の中で色々なことを経験し、その過程でパリッシュの末娘と恋に落ちるということも起こってくる。何しろ「死に神」が愛を学ぶ、というのですから、確かにこれは一つの見物です。

というわけでこの映画、死に直面し、自分の人生の最期をどう締めくくるかに悩み苦しむパリッシュの姿と、人間界に降りてきてあらゆるものを珍しがる死に神・ジョーのコミカルさが交じり合い、しかもそこにパリッシュの末娘との出会いを通じてジョーが愛というものを学んでいく、その人間的(死に神的?)成長の要素も加わって、なかなか興味深いストーリーとなっています。死に神を演じるブラッド・ピットも「はまり役」で、なかなか上手に演じていますし、それよりも何よりもパリッシュを演じる名優アンソニー・ホプキンスがこの映画に重みを与えていて、この二人のペアがこの奇妙な筋書きに不思議なリアリティを与えている。いや、これはなかなかの佳作です。

では私の採点で何点か、と言いますと、残念ながら今のところ結論が出ていません。実はこの映画、明け方の3時半くらいまで続くものだったので、最後の一時間分はビデオに録画したまま、まだ見ていない。最終的にどう話が展開するのか、現時点では私も知らないんです。これを書き終わったら、残りを見ようと思っているところ。よって採点は後日に回しますが、80点の合格ラインは余裕でクリアしそうな感じであることは、あらかじめ言っておきましょう。

それにしても、よく考えると昨夜見た二つの映画は、どちらにしても「異国から来た異様な男が、既成の秩序を崩しつつ、新たな秩序の地平を見せて去る」という内容ですね。これは洋の東西を問わず「昔話」や「伝説」によくあるパターンですが、結局人間はこういう話が好きなんでしょうな。とげとげした自分の現在の姿を脱ぎ捨て、本当の自分になるためのきっかけを、誰もが皆求めているのかも知れません。たとえその「本当の自分」とやらが、幻想に過ぎなかったとしても、ね。

さて、それでは私の長話はこのくらいにして、ビデオの残りを見に行きますか。





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Last updated  July 15, 2005 02:23:44 PM
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Re:昨夜見た映画二題  
紅ずきん  さん
「ターミナル」はアタクシも観ました。

で、ニューヨークに来たかった理由って、コレだったの(゚◇゚;)って感じで、拍子抜けというか。
熱狂的なジャズ好きとかにはたまらないのでしょうか?
確かに80点の合格点はあげられませんね~
(July 15, 2005 03:15:48 PM)

ETとジョン万次郎  
異国からきたものめずらしい人間(?)という共通項から引き出されるもの、、

 適度な刺激がほしい (July 15, 2005 05:43:38 PM)

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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
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