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July 18, 2005
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カテゴリ: 教授の読書日記
夏休みに入って気が緩んだせいか、このところ普段の仕事とは無関係な本ばかり読んで暮らしています。そんな中で今日読んでいたのは、G・K・チェスタトンの『ブラウン神父の童心』(創元推理文庫)という作品。探偵小説ですね。

「ブラウン神父」と言えば、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロなどと並び称される架空の探偵の一人だと思いますが、実は私はブラウン神父の何たるかについてまったく知識がありません。もともと私は「探偵小説」を愛読する方ではないんですね。しかし、先日、たまたま読んでいた若島正氏の『乱視読者の新冒険』(研究社)の中に、ブラウン神父のことに言及されている箇所があって、それがなかなか面白かった。それでいつか暇になったらブラウン神父の登場する小説を読んでみようかな、とつい思ってしまったんですね。そして実際に暇になったので、読んでみたというわけなんです。

で、一読してみた感想ですけど、一言で言えば「ビミョ~!」ですな。

面白くないわけではないんです。決してつまらなくはない。しかし、じゃ面白いかと言われると、それほど面白くもないんですなぁ。少なくとも私には「シャーロック・ホームズもの」の方がよっぽど面白いですね。

私は、幸か不幸か、子供の頃からかなり熱狂的な「シャーロック・ホームズもの」の愛読者で、そのため、常に「シャーロック・ホームズ」が探偵小説を読む時のものさしになってしまうんです。で、探偵小説を読んでいて「あ、これはシャーロック・ホームズと同じくらい面白くはないな」と思ってしまうと、もうその段階で興味半減してしまうんですね。ですから、アガサ・クリスティーのポワロものにも、どうも興味が持てない。もっともNHKテレビで放映するTVドラマ版の「名探偵ポワロ」は、ポワロを演じる俳優デビッド・スーシェの魅力と、吹き替えを担当している熊倉一雄氏の声の魅力で、時々見てしまいますけど。

で、「ブラウン神父もの」なんですけど、確かに「話の意外性」という点では、なかなか面白い。たとえば、一つ前の短篇で探偵として登場した人物が、次の短篇では犯罪者になっていたりして、なかなか目が離せない。もちろんそういう展開を、すこし「えぐい」と思う人もいるだろうし、私も少しそう思いますが、そこはまあ許しましょう。

私がブラウン神父探偵譚で一番不満なのは、置かれた状況の中からどうやってブラウン神父が手がかりをつかみ、推論し、結論に達したかがまるで分からない点です。犯罪解明のプロセスがまるで分からないまま、読者はいきなり結論だけを告げられるわけ。一休さんじゃあるまいし、ちょっと考えたらブラウン神父には謎が解けてしまった、では、ねぇ・・・。もちろんその点から言えばシャーロック・ホームズだって同じようなもんですが、ホームズの場合は相棒のワトソン博士がいて、ホームズの行動は博士の目を通して読者に逐一報告されますから、ホームズがいかなる手法で結論に至ったかは読者にも想像がつく。これは大きな違いです。

それにホームズは、探偵としてのプロ意識がありますから、過去の犯罪の詳細なファイルを作っていて、日々その研究に余念がありません。そういう日頃の鍛練を通じて、事件の解明に努めているわけです。しかし、一方のブラウン神父はと言いますと、神父という立場上、犯罪者の告解を聞くことが多く、それで犯罪者の心理に通じているのだ、ということになっていますが、そんなこと言われたって、「ほんまかいな」という感じがしますよね。

また人物造形という点でも、ホームズの性格は複雑ですし、また彼の生活ぶりもとても興味深い。何しろ彼は19世紀末の時代にすでにSOHOをやっていたわけですから、公の機関の一歯車として働いている私なんかから見れば羨ましい限り、憧れの人です。しかし、私に関する限り、「ブラウン神父のような生活がしたいなぁ」とは思いませんね。大体、彼が普段どんな生活をしているかなんて、小説を読んでいてもあまりよく分かりませんから。



ま、そんなわけで、残念ながらブラウン神父とのお付き合いも、この一冊で終わりかな。

ちなみに私の祖父は、まあ言わば植草甚一の先駆みたいなところがあって、探偵小説なんていうものも好きで相当読んでいたようですし、しかも座談の名手でしたから、祖父に探偵小説の読み方を習えば、現在の私のように「シャーロック・ホームズ一本槍」にはならなかったのかも知れません。しかし、祖父から色々なことを教わるには、当時の私は小さすぎました。もしもっと長生きしてくれていたら、シャーロック・ホームズのことだけでなく、ウィルキー・コリンズの『月長石』や『白衣の女』のことなんかを一緒に語り合うことが出来たのですが。

もし、これをお読みの方で、「この探偵小説は面白いよ、ブラウン神父なんて目じゃないよ」などという情報がありましたら、ぜひご一報下さい。またいつかトライしてみますので。


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Last updated  July 18, 2005 12:29:32 AM
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私も同感  
AZURE0702  さん
 こんばんは山田です。
 推理小説のカバーをつくっている身としては、口が裂けても言っちゃアならないのですが、チェスタートンは、私もビミョ~です。正直申しますとムニャムニャムニャ(完読したことがないんです。睡魔が---)。この作家、幻想小説も書いていて、私もそちらでおつきあいしたことがあります。推理小説よりよかったなあ。でもなぜか翻訳はあるような、ないような。釈迦楽さん、ちょっとやってみてはいかがです。 (July 18, 2005 02:42:17 AM)

良かった!  
釈迦楽  さん
AZURE0702さん
良かった! いや、ひょっとしてこんなこと書いたら、「お前がわかっていないだけ!」なんて怒られるかと心配だったのですが、山田さんもそう思われますか、やあ、良かった! しかし、今度いつか、幻想小説の方を読んでみましょう。
ところで、私は翻訳はやったことがないのですが、一度、やってみたいとは思っています。以前ハヤカワ書房に勤めていた竹内祐一というのが私の友人だったので、彼に頼めば何かやらせてもらえるかと思いましたが、彼はやめてしまいましたので、今のところ、そういうツテがありません。翻訳というのは、自分からやらせてくれと言いに行くもんなんですかね? その辺の事情、ご存じですか? (July 19, 2005 01:35:00 AM)

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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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