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April 30, 2012
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カテゴリ: 教授の読書日記

 必要があって、小笠原信之さんの書かれた『文章力が身につく本』(高橋書店・1,200円)を読みました。この本にはもう一つ、『文章力が豊かになる本』という姉妹編があって、シリーズ累計20万部のベストセラー。

 本書の構成は、基本、見開きの2ページで、文章力をアップするノウハウを1項目勉強するというもの。これがトータルで80項目あって、この80項目(160ページ)を通読すると、文章を書く時に気をつけるべき点が一通りおさらいできる、という仕組みでございます。

 で、各項目には「原文」(あまりよろしくない文章例)と、それを添削した「改善例」が示され、なぜこのように添削したかを語ることで、良い文章を書くためのポイントを一つ、指摘するわけ。

 例えば第3項「主語と述語を近づける」では、

 「証人は容疑者が店員が外の騒音に気をとられている最中に万引きしたのを見たと言った。」

という原文をまず示し、ついで、

 「店員が外の騒音に気をとられている最中に容疑者が万引きしたのを証人は見たと言った。」

という改善例を示して、この一文で一番重要な主語・述語関係である「証人は」→「見た」というつながりをなるべく近づける形で書くことが、分かり易い文を書く上での重要なポイントである、と教えてくれるんですな。なるほど、なるほど。

 また「具体的・客観的に伝える」という項目では、



という原文を、

 「納期が3日後に迫ったので、徹夜の生産態勢に入った。」

と改善し、「数値などを出すと、話題になっていることの程度が読み手によく伝わる」と教えてくれるわけ。

 とまあ、こんな調子で、「専門用語は初出時に説明する」「「が」は逆接のときしか使わない」「「~だろう」を多用しない」「何でも「こと」「もの」で片づけない」「難しい言葉と易しい言葉を交ぜない」「比喩表現を避ける」「「~したいと思う」を使わない」・・・といったノウハウを伝授してくれる。

 で、第1章から第3章までは、上に述べてきたような一文ごとの文章改善ノウハウについて述べているのですが、第4章に入ると、今度は一文ではなく、(小)論文など、ある程度起承転結のあるまとまった文章を書く時のノウハウとして、「必要な材料を集める」とか「書く前に徹底的に考える」といったことを伝授しています。そして続く巻末特集では、「表現・表記の基本ルール」「同音同訓異義語一覧」「言い換え表現一覧」「書き終えた後にすること」といったトピックについてそれぞれ例示があると。


 で、本書を通読した上での感想なんですが、「いい本か、悪い本か」と言われたら、間違いなくいい本だと思います。

 ここに指摘されている80項目のノウハウは、ほとんどどれももっともなことばかりでありまして、しかもそれが分かり易く指摘され、シンプルな改善法まで示してある。本書を必要とするような人にとって、この一貫した明晰さは、とてもありがたいものでありましょう。その意味で、数多ある類書の中でも、かなり上位に位置する良書だと思います。

 強いて瑕瑾を挙げるならば、ごくごくたまに、改善例より原文の方がいいじゃないか、と思われるようなものがあること、かなあ・・・。

 例えば第36項「「まず」「そして」を極力削る」というところで、

 「私がこの仕事に向いていると思う理由は、以下である。まず、人と接するのが好きなこと。そして、人の役に立つことに喜びを見出せること。さらに、相手の立場を想像できること。」



 「私がこの仕事に向いていると思う理由は、以下である。人と接するのが好きであり、人の役に立つことに喜びを見出せ、相手の立場も想像できる。以上である。」

となっているのですが、この改善例、そんなにいいですかね? こんなに短い文の中に「以下である」と「以上である」が出てくると、何だか変な感じじゃないでしょうか。私だったら、逆に改善例を原文のように添削しちゃいそうです。もちろん、私も「「まず」「そして」を極力削るべし」という著者の指導方針については反対しないので、ただこの原文と改善例をもう少し工夫すれば良かったのではないか、ということなのですが。

 この種の、ちょっと変だなと思うようなところが、本書には他にも何ヵ所かあります。しかし、そういうのは、先ほども言ったように「瑕瑾」なのであって、全体としては非常にいい本です。


 で、本書を読みながら思ったのですが、私のような天性の文章家(エッヘン!)からすると、本書が扱っている80個のノウハウは、全て当たり前のことというか、まったく考えもせずに実行していることなわけ。子どもの頃から。だから、個人的に私が本書から学んだことなんか一つもない。



 だけど、別に文章のことに限りませんが、「無意識にやっていることを、敢えて意識の上に上せる」ってのは、大変なことだと思うんですよね。自分は一体なぜ、正しい文章を書けるのか。それを改めて考え、自分が無意識にこなしている添削過程を一旦バラバラにして、それを80個のノウハウに還元するってんですから、こいつは骨だ。

 で、その骨の折れることを小笠原さんはやったと。だから、シリーズ累計20万部の恩恵を受ける資格があると思うんですな。

 ま、そういうことです。

 ということで、本書、教授のおすすめ!です。文章書くのが苦手、でも書かなくてはならない立場にある、というような人がいらっしゃいましたら、一読して損はない本ですよ。


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Last updated  April 30, 2012 07:26:50 PM
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うちにもあります  
風の男 さん
その本。

相方が持っているのですが、読んでみればと
言われたのですが、その手の本が必要とも
思っていませので。そのようなことを言ったら
相方はふ~んと言った感じでしたが。
職場でも持っている人(かなり年配の方)が
いましたが、仕事中にそれを使って文書を
作成してしていたりするなら何とも言えない
気分になります。
売れている本なのですから誰でも納得できる
内容だろうと思いますので、今度よほどの
余裕があるときに自分の文章構成方法と照らし
合わせてななめ読みしてみようと思います。
でもその前にやらなければならない書類添削や
読みたい本は山積みですが・・・ (April 30, 2012 11:05:05 PM)

Re:うちにもあります(04/30)  
釈迦楽  さん
風の男さん

まあ、抜群の文章センスを持つ君には必要のない本ではあるけれど、斜め読みでも益するところがないわけじゃないと思うよ。悪文のメカニズムを明確に理解するという意味でも、ためになる。悪文を書いている人に、「(この本にも載ってましたけど)こういう風に直すといいですよ」というのが言い易くなるからね! (May 1, 2012 11:48:01 AM)

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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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