りぃー子さんへ

 面白い本ですよ。例えば、萩尾さんは日本を舞台にした漫画を描くのが苦手だそうで、そうなると必然、舞台はヨーロッパとかになるのですが、ネットが使える今と違って、1970年代初頭に、ヨーロッパの街並みや、家の作り、店舗の作りなどがどうなっているのかがなかなか分からない。街路樹ひとつをとっても、何を描けばいいのか分からない。そういう苦労話など、非常に興味深いものでした。
 例えばヨーロッパの四季に気温がどのくらいになるのか、などというのが案外重要な情報で、それによって登場人物に着せる服装などが決まるんですって。
 そういう創作現場の実態って、部外者にとっても興味深いものですね!
  (December 27, 2021 12:33:27 AM)

教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
December 26, 2021
XML
カテゴリ: 教授の読書日記
今年ちょっと話題になった(マンガ好きの間では「ちょっと」どころではないざわつきだったかも知れませんが)萩尾望都さんの『一度きりの大泉の話』という本を読みました。

 まあ、私はマンガを読んだ経験がほとんどないので、萩尾望都のなんたるか、そして竹宮恵子のなんたるかを良く知らないのですが、二人ともすごい漫画家だ、というのは知っている。その程度の知識で読んでいるので、この本の内容について踏み込んだことは何一つ言えません。

 しかし、ざっと言えば、事実として一時期、東京の大泉というところに、竹宮・萩尾をはじめ、何人もの若手漫画家が集い、互いに刺激を与えあったり、もっと具体的に締切にあわせて助力し合ったりした時代が2年ほどあったと。で、そのことをもって、手塚治虫の「トキワ荘」の女性漫画家バージョンとして、「大泉サロン」というのが注目されるのだけれども、そのことを大々的に取り上げるには、主役の一人である萩尾の証言がどうしても必要になるのに、なぜか萩尾は堅く口を閉ざしている。一方の竹宮の方はまんざらでもないらしく、萩尾がその気なら自分としてはいつでもどうぞ的なスタンスらしい。となると、畢竟、「なぜ萩尾は、大泉サロンのことを語ろうとしないのか」ということに注目が集まり、それで萩尾のところに取材が殺到すると。

 で、それに業を煮やした萩尾が、なぜ自分が大泉時代のことを封印しているのか、その理由を一度だけ明かす、だから以後、私にその話を持ち掛けないでくれと。そういうつもりで筆をとったのが、本書『一度きりの大泉の話』ということになるんですな。

 で、萩尾が大泉のことに触れたくないと思っているその理由とは、萩尾が『ポーの一族』の一エピソードとして『小鳥の巣』を発表した時に、竹宮(及びその参謀の増山という人)から、『小鳥の巣』は自分の『風と木の詩』の盗作ではないかと詰問され、これからは距離を置こうと言われたことだったと。

 そもそも盗作などという事実はかけらもない上、先輩としてリスペクトし、仲間として心を開いていた竹宮からいきなりそういうことを言われた萩尾としてはこの出来事が大ショックで、そのまま体調を崩し、以後、竹宮の作品は一切読めなくなったし、竹宮とは一切関係を断ってきたと。だから、それから50年近く経ったとはいえ、今更、大泉のことを懐かしく語ろうという気になるわけがない。(一方の竹宮は自伝を2016年に出して、その中で萩尾のことを好意的に書いているらしい)。

 ま、そういうことですな。

 もちろんこれらの証言はすべて萩尾サイドのものですから、竹宮側の言い分は分かりません。しょせん、他人の喧嘩だからね。本当のところは当事者にしか分からないし、多分当事者にも分からないのでしょう。

 だから、この本を読む限りでは竹宮さんが悪い人で、萩尾さんが被害者なんだけど、そのことについて私が読者としてどちらかに軍配を上げるというようなことは出来ません。そもそも両方のことをよく知らないんだし。



 それは、萩尾さんという方が、漫画家として明らかに超絶的な天才であるにも関わらず、文才はない、ということですね。私は、漫画家というのは作家みたいなもので、当然、文才があるのかと思っていたのですが、どうも漫画を作る才能と文才は関係がないらしい。そのことは、私には意外でした。

 でも考えてみれば、萩尾さんに文才がない(=自分の感情をうまく相手に伝わる言葉にすることができない)からこそ、竹宮からいわれなき非難をされた時に即座に言い返すことが出来ず、その反論できなかった思いが沈殿して、萩尾さんを追い詰めたんじゃないかしら。

 いや・・・。そんなことはないか。私は文才はあるけど、喧嘩となると、言いたいことも言えない方だからなあ。その点では萩尾さんとおんなじだ。

 まあ、喧嘩ってのは、どの道、悲しいね。悲しいけど、人の世ではそういうことはしばしば起こる。

 だからこそ、生涯の友ってのは、猶更奇跡だよね! 大事にせねば。

 ま、そんな感じ。


これこれ!
 ↓

一度きりの大泉の話 [ 萩尾 望都 ]





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  December 27, 2021 12:24:03 AM
コメント(2) | コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:萩尾望都著『一度きりの大泉の話』を読む(12/26)  
りぃー子  さん
こんにちは!当時萩尾さんの大ファンだったのですが、最近の作品に余り興味を感じないのでこの本のことを全く知りませんでした。

当時、一緒に大泉に住んでいらしたのは知っていましたし、何故か別離されたのも聞いてました。
私も漫画を描いていたので、やはり才能に対するお互いの気持ちってのは非常に大きな問題だから・・・
難しいよなあ。。。ってのはなんとなく理解してましたね。

正直言いまして、当時は竹宮さんが萩尾さんに強い影響を受けているように思い込んでいたので、竹宮さんもそういう誤解に対しイヤな思いをされることが多かったと思われます。

どちらがどちらに、ってのは誰にも分りませんし、どちらにせよ平穏で居られる人は少ないでしょうね。

とはいえ、早速買って読んでみようと思います!
ご紹介ありがとうございます♪ (December 26, 2021 11:19:30 PM)

Re[1]:萩尾望都著『一度きりの大泉の話』を読む(12/26)  
釈迦楽  さん

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: