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今年の夏休みの話に戻ってしまいますが、小5のりんは、好きな宿題はさっさと済ませたのですが、いやな漢字と計算ドリルだけが残ってしまい、8月26日頃からおおあわてで、一人で図書館通いをして無我夢中でやっていました。
その図書館は、公民館と小さな公園が、隣接されています。疲れたら、公園でブランコに乗ったり、滑り台で遊んだりしていたそうです。
そこに、27日頃から1匹の猫が公園に居ついたそうです。すごく人懐っこく、抱っこしても逃げなくて、いつの間にか、りんの大のお気に入りになりました。
私も迎えに行ったときに見たら、誰にでも寄って行って、いやに痩せているという印象がありました。
よく話を聞いてみると、その猫はペットフードらしきものを食べている様子はなく、公園に来ている子どもたちが投げる、チョコレートやスナック菓子をもらっているだけで、食いつないでいるらしいとか。
りんは、可愛そうになったらしく、紙皿と一食分のキャットフードを持っていってあげたら、すごい速さで食べたそうです。
妙に人懐っこいのは、食べ物がほしくてほしくてたまらないからなんだと思いました。そして、この猫は置き去りにされた猫なのでは、と感じました。
とにかくその公園から離れた形跡はなく、住み着いているという感じでした。
そうこうしているうちに8月29日のことです。
なんとりんが、その猫をうちで飼いたいと言い出したのです。かなり、せっぱつまった表情で、鉛筆買って~、とか、メモ帳買って~とか言っておねだりする時の顔と全く違うんです。
ペットショップで欲しい欲しいと言ってるような、可愛い猫とまるっきり正反対の、まさに、ボロ雑巾のように痩せて、汚れた猫なのに・・・私は最初、冗談かと思いましたが、りんの顔をみたら、こりゃ本気なんだ!と、わかりました。
「猫がかわいそうでかわいそうで、助けたいんだ。おなかいっぱい食べさせたいんだ」と、私に訴えるんです。
「それじゃ、夜図書館行ってみて、まだいるようだったら飼い猫じゃないと思うから、とにかく、見てこよう。もしいなかったら、飼い猫だからね。」と、言い聞かせて、2日間真夜中に行ってみました。
するとやっぱり、いました。2日間とも公民館の像の下で目を真ん丸くして、りんを見ていました。捨て猫だね、と2人で判断しました。
こうなると、りんは家に連れてきたくてたまりません。私も、りんのことも猫もかわいそうになってしまって、飼ってもいいかなと思うようになったのですが。
問題は同居している私の両親です。お客様第一の2人は、猫嫌いのお客に嫌味言われるとか、毛が落ちて家が汚れるとかで、絶対だめ、そんなことばかり言ってました。これは無理だな、と思い、りんにそれを言ったら、自分の部屋でうつぶせになり、しくしく泣き始めました。
いつもの私に対する甘え泣き~ではなく、心の底から悲しい、という泣きかたで、見ているわたしのほうも切なくなってしまいました。
両親にりんがずっと泣いてることを言うと、さすが、孫の涙には弱いらしく、母親のほうが、家の外で飼うならいいと言ってくれたではありませんか。外ならいいと、父も。
それを聞いたときのりんの喜びようったら、すごいもので、今鳴いたカラスがって感じでした。
そして、8月31日、晴れてそのぼろぼろ猫ちゃんは、我が家に連れて来られました。名前は「くう」で、名付け親はもちろんりんです。いつもおなかを空かせて、くうくういってたからだそうです。
1週間ほど、外で飼っていましたが、近所の愛猫家の人たちに、「猫を外で飼うなんて」と、母が怒られてきて、ある台風の夜、家に上がることができました。
今ではすっかり、みんなに可愛がられ、すっかり家族の一員です。あんなに痩せていたのに、まん丸になってきました。
もともと猫が大好きだった私は、可愛くてしかたがありません。りんに感謝です。
私はりんに、手紙を書きました。
「りん、お母さんはくうちゃんが来てくれてとてもうれしいよ。くうちゃんを助けてくれてありがとうね。きっと、くうちゃんもそう思ってるよ。」と。
りんは、照れてるのか、それを読んで「ふ~ん」とか言っただけでした。
今回のことは、大人の思惑とか見栄とかそんなことより、りんの、ただかわいそうな猫を助けたい、というまっすぐな心と強い熱意がはるかに大きかったことを物語っている出来事でした。子どもの純粋な心を、大人はいつ失くしたんだろう、と、寂しくもなりました。
お菓子を投げるだけで、誰も助けようともしなかった猫を、りんだけが、助けたんだと思うと、親バカながら、心優しい子どもに育ってるんだなあと、感激しました。
今でも図書館に行くと、家にいるはずのくうちゃんが、どこかにいるような錯覚に陥り、なぜか切ない気持ちになります。りんもそう言ってました。
今日は寒いので、こたつの中で、ピーピーいびきかきながら、気持ちよさそうに眠っています。