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Esprit*

Esprit*

2007.08.11
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台風がちょうどこちらに向かっている時で、
外が風が出てきて山の木がざわざわとしていた。

夜9時過ぎ・・。
私は先輩の部屋の電話だけを鳴らした。
前に先輩が教えてくれた「じきじきコール」。
特殊な掛け方をすると、先輩の家の親機・子機のなかから、
先輩の部屋の子機だけを鳴らすことができる。
その掛け方を知っているのは先輩のいちばんの友人と私だけ。

その子機が鳴るということが、誰からの電話であるかは、
受話器を上げる前から先輩にはわかっているはず。

私はこの電話にかけた。
先輩が自分の部屋にいることを信じて。
いつもより少し長くコールがして、ガチャッと受話器が上がった。

「・・もしもし。」

「先輩、私・・マキです。・・今晩は。」

「・・うん。こんばんは。」

私のテンションが下がる。どんどん下がっていく。
言葉が喉の奥からでてこないのだ。
先輩も何か感づいたのか、何も言おうとしない。



「あの、今日はちゃんと先輩に大事なお話があります。
申し訳ないけれど、少しの時間、お付き合い願えますか?」

「・・何?外に出て行こうか?」

「・・いえ、顔を見て話ができそうにないので電話にしました。
電話でいいので話を聞いてください。」




「先輩、実は私、・・・結婚が決まったんです。 
11月に結納することになりました。
 今まで、先輩のことをずっと追い掛け回して、迷惑をかけてばかりで
すみませんでした・・・。
いろいろありましたけど、私、本当に先輩のことが大好きでした。
自分の今までを振り返ってきて、先輩のことを考えない日はありませんでした。
でも、私のことを好きだといってくれる相手ができて、
私もようやく先輩のことをあきらめられる、と思ったんです。
今日は、最後に、今まで先輩が私のことをどう思っていたかどうかをお聞きしたいんです。
しつこかった・・でもいい、なんとも思ってなかった・・でもいい、何でも構いません。
先輩の本当の気持ちを私に教えてください。
それを聞いたら、完全に先輩のこと吹っ切って結婚します。」


本当の本心だった。
今まで、中学のときからずっと、先輩だけを想い続けてきた。
そんな私を先輩はどう思っていたのか。
聞きたくても聞けるわけもなく、ずっと片思いしてきたのだから。
最後に、最後に先輩の本心が知りたかった。


「ふぅ・・・・」

先輩がひとつため息をついた。
面倒なオンナだな・・と思ったに違いない。
長い、大きなため息。


「結婚おめでとう。俺にはそれだけしか言えないよ。」


先輩がそう言った。


「・・先輩、お願いです。どんなこといわれても傷つきませんから。
こっぴどく先輩に振られたいの・・!!」

最後の方は声じゃなく嗚咽に近かった。
頭の後ろのほうからぐあああああっとおしよせてきて、
涙がボロボロとあふれ出た。
いつも取り乱さないように我慢して我慢してきた先輩との節目。
でも決着をつける最後だと思うと卑怯だけど涙が止まらなくて。


それでも先輩は何もこたえようとしなかった。
「幸せになりなよ」とだけ言っただけ・・・。
泣きじゃくる私の声だけが電話を通じて先輩のほうに聞こえていた。



「・・・あー!!!もう!!!」

・・・いきなり先輩が声を荒げた。







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Last updated  2007.08.11 01:29:07


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