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そう思いついたのは、なかなか殊勝な態度なのですが、残念ながら受験参考書の類は自分自身が30数年前、必要に30迫られて読んだ、「ある参考書」以来まじめに見たことがないからよく知らないのです。
皆さんが「そんないい加減なことでいいのか!」と怒るのももっともです。しかしね、時々本屋さんが「見本に」といって持ってくる最近の参考書の類はみんな、あの頃読んだ「ある本」の換骨奪胎に見えるのですよ、ぼくには。
「肝」になる文学思想は捨て、外観は似せているが、全体を支える「骨」はありません。やればとりあえず点は取れるようになりますが、古典に対する教養はせいぜい枝葉しか身につきません。クイズに強くなる豆本化しいて、パターンと頻出例を繰り返すだけで味も素っ気もありません。結局、面白いのは、面白くもないゴロ合わせだけという始末です。みんな「当てもん」に強くなるためのテクニックなのですね。
皆さんを試そうと待ち構えている「センター試験」や「模擬テスト」が、要するに「当てもん」なので、そうなるのはよくわかります。世間のパターンもそうなっているようですから、ある意味「合理的」なのでしょうね。でも、それって 「バカじゃない?!」
ってことじゃないでしょうか。
極論かもしれませんが、センター試験の古典で点を取るのは、実は簡単です。一年生で使った教科書がありますね。あれで、漢文はすらすら書き下せること。だから、読めればいいわけですね。古文はすらすら訳せること。それだけ八割は大丈夫です。あの薄い教科書一冊、本文だけでいいです、すべて暗唱できれば、センターなら満点は確実です。
ウソだとは思うが、一度だけ シマクマ を信じてやろうという人は、この夏休みがチャンスです。せっかくですから、課題の問題集で試してください。
古文、漢文それぞれ 15
題ありますね。一日、一題づつ、計二題、ノートに本文を写してください。訳や解説は、適当に読んで、線でも引きながらで結構です。これを二往復してください。
狙いは古典の本文を丸ごと頭に入れることです。二度目に口語訳がつっかえるようならもう一度やってください。その結果 10
月のマーク模試で、あなたの古典の偏差値は 10
点アップしています。もとが30点台の方は15点から20点上がります。すると文法で説明したくなります。
でもね、点数が上がって勘違いしてはいけないことがあります。模試の数値は古典文学読解の実力を保証しているわけではないということです。それは忘れないでください。放ったらかしてしまうと、すぐに下がります。
で、話を戻します。読む練習ができて、さあ、ここから必要になる本を参考書と呼ぶのです。ぼくが受験生の時に出会ったある本とは 小西甚一 という人の 「古文研究法」 という本ですが、本物の参考書でした。
小西さん
のその参考書は 「古文とは何か」
という大胆な問を設定して受験生に説明しようとしていました。ぼくは読んでいて眠くてしようがなかった記憶があります。アホバカ高校生が 「古文とは何か」
なんて考えるはずがないわけで、考えたとしても 「退屈である」
という答えしかなかったはずですから、眠いのも当然でした。しかし、ずっと後になって、この参考書のすごさに納得するのです。
ぼくの場合は大学生になって、この人の 「日本文学史」(講談社学術文庫)
を読んアレっ?と感じた時でした。
「古文研究法」
は受験参考書の面(つら)はしていますが、実は日本古典文学概論だったんです。気付いた結果、この人の 「俳句の世界」(講談社学術文庫)
とか、その他の著作を探したりしましたが、要するに、お弟子さんにしてしまうん本だったんです。
実をいえば、 小西甚一
という人は中世文学のエライ学者で、なぜか受験参考書もたくさん書いていますが、例えば 「俳句の世界」
なんて、素人にもとても面白い本です。受験参考書で。そういう参考書もあるということを忘れないでください。
とか言いながら、この本は手に入らないでしょう。古すぎます。学術文庫の方でも読んでみてください。
いつものように 「なんのこっちゃ」
という話でした。
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