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朝一番の映画を一本観て、お昼前に町に出てみると行くところが思いつきません。 元町商店街 を東に歩いて、どこかで食事でもと思うのですが、 大丸 を通り過ぎて、とりあえず 朝日会館 にやって来ました。プログラムを見ると、ちょうど 30 分ほど時間をつぶせばいい映画がありました。 「お名前はアドルフ?」 です。題名から見て ヒトラー を茶化して笑っている映画のようです。
「ああ、これでもみるか。」
というわけで、そこから サンチカ
に回ってパン屋さんを探しました。お目当ては最近ハマっているフィッシュバーガー風サンドイッチなのですが、入ったお店にはありません。仕方がないので、メロンパンを一つ買い込んで
朝日会館=シネリーブル
に戻りました。
哲学者で大学教授のモジャモジャヒゲの夫 シュテファン
、小学校で教えている妻 ベッチャー
、 ベッチャー
の弟で、投資家の トーマス
。口髭の男前です。そして幼馴染の音楽家 レネ
という、気の置けない幼なじみの四人が、 シュテファン
と ベッチャーの家
に集まってディナーというのが映画の始まりです。
出産間近の恋人アンナも参加する予定らしいのですが、まだ到着していないのをいいことに、 トーマス
が調子に乗って、そのお腹にいる子供の名前を 「アドルフ」
にすると発表したことで「事件」が勃発します。
さすがにドイツ映画ですね、「ナチス」の評価をめぐる議論は徹底しています。 「アドルフ」
を口にした トーマス
に対する シュテファン
の攻撃は執拗を極めます。
ディナーの前に、もはや絶交宣言かという様相です。
「どうなることやら、興味津々。」
そんな気分で楽しんでいましたが、おなかの大きな アンナ
が登場するに及んで、話題はどんどん広がります。「言葉尻」を捉えることで、一人一人がターゲット化されて、全員が「人格否定」されていく展開で、見ているぼくは、一体どういう決着にたどり着くのか、字幕から目が離せません。
典型的な 会話劇
で「ことば」というか、揚げ足取りから本質論まで論理の応酬が迫力満点で、とても演劇的です。舞台の実況中継を見ているようです。
見終わってチラシを読むと、ここのところドイツあたりで、大当たりをとっている舞台の映画化だということですから、ナショナルシアター・ライヴを見ている感じだったのも当然でした。
結果的にということですが、登場人物の人格設定もよく練られていました。映画ですから、クローズ・アップで映し出される表情の変化がとてもよくわかって、演劇の面白さが「映画化」される感じでした。
「最後には笑えるオチが待っているはずやな。で、どんなオチやねん?」
途中からそういう期待で結末を待ち始めました。
「なるほど、そう来ますか!」
きっと、笑えるという予想は当たりましたが、なかなかシャレた、関節はずし的な「オチ」で締めくくられていて、よくできたウェルメイド・ドラマだと感心しました。
演劇の舞台では珍しくありません。映画でも見ていそうなものですが、案外、見たことのないタイプのだったで得をした気分でした。こういう発見も楽しいものですね。
監督 ゼーンケ・ボルトマン
製作 トム・シュピース マルク・コンラート
製作総指揮 マーティン・モスコウィック
原作 アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール マチュー・デラポルト
脚本 クラオディオス・プレーギング
撮影 ヨー・ハイム
美術 ユッタ・フライヤー
編集 マルティン・ボルフ
音楽 ヘルムート・ツァーレット
キャスト
クリストフ・マリア・ヘルプスト(シュテファン・ベルガー・ベッチャーの夫)
カロリーネ・ペータース(エリザベト・ベルガー=ベッチャー)
ロリアン・ダービト・フィッツ(トーマス・ベッチャー・ベッチャーの弟)
ユストゥス・フォン・ドーナニー(レネ・ケーニヒ・幼なじみ)
ヤニナ・ウーゼ(アンナ・トーマスの妻 妊娠中)
イリス・ベルベン(ドロテア・ベッチャーとトーマスの母)
2018
年・ 91
分・ドイツ 原題「 Der Vorname
」
2020
・ 07
・ 17
シネリーブル神戸
no57
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