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2024.03.21
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​​ 鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 7 」(文藝春秋社)
​​​​​​  愉快な仲間 トラキチクン が毎月運んでくれる 「マンガ便」 ですが、 2024年 3月 「マンガ便」 に入っていたのは 鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 7 」(文藝春秋社) でした。​​​​​​
​​​ 江戸で剣術修業をしていた 竜馬 の、土佐への帰国途上のエピソードが描かれていて、幕末の風雲急な時代の始まりを予告する、 「竜馬がゆく」 という物語の節目の 第7巻 でした。​​​
​​​​​ ところで、このマンガの原作は 司馬遼太郎 ​「竜馬がゆく」(文春文庫・全8巻)​ ですが、実は 1962年 から 1966年 にかけて 産経新聞の夕刊 に連載された 新聞小説 なのですね。思えば半世紀も昔の作品ですが、作家を、時代を越えた流行作家にした出発点になった作品ですね。​​​​​
​​​​​ で、もう 一つの特徴 ですが、一般には、この作品が 「歴史事実」 に対して 「ウソ」=「作りごと」 のない 「歴史小説」 であるかのように読まれてきているのですが、実は
​「ウソ、偽り」で面白さを担保した「時代小説」​
 ​ ということですね。​​​​​
​​​ たしかに、歴史上の人物の伝記的事実を柱に描かれていて、いかにも歴史事実を忠実にたどっているかに見えるのですが、実は、 司馬遼太郎流 といえばいいのでしょうか、想像上の人物を登場させたり、こうであっただろうという、まあ、想像を書き込むことで 新聞小説の読者 を喜ばせる、あるいは、飽きさせないことを狙ったのだろうと思われる 「ウソ」 が随所にはめ込まれていて、作家の思惑通り、だから面白いのですね。​​​
​​​​ この 第7巻 で、 竜馬の一の子分 として活躍する 寝待の藤兵衛 は、 司馬遼太郎 の創作した最も優れたキャラクターの一人でしょうね。​​​​
「このろくでなしが」
「・・・・」
「・・・・」
「竜馬どの」
「旦那だって人殺しの術を使う剣客でしょうが」
「盗賊の人殺しと一緒にするな」「武士の剣は千年の・・・考えぬかれた義と理と法とがある武士道じゃ 武士はその道によって人を斬り時には己も斬る」
「な~に勝手なことを言ってんだい 殺しは殺し…一緒だろ」
 ​ ​​​​​​​​このシーンそのものが、かなり 作り話 的だと思うのですが、 藤兵衛 はもちろんのこと、同席しているのが、三条家で見習いをしている、土佐藩の家老だかの娘 お田鶴 というのもすごいのですね(笑)。
 で、 司馬遼太郎 のえらいところは、まあ、会話をお読みください、この席で、やがて、
​「武士道」を相対化して新しい世界を作り出してゆく坂本龍馬誕生!​
の、産婆役として 藤兵衛 「殺しは殺し、一緒だろ」 とと、実の重要な発言させているのです。​​​​​​​​
​​​​ 坂本龍馬 という歴史上の人物の、 歴史的改心、 あるいは、 武士からの脱皮 の瞬間をこうして描いてみせるのが 「司馬史観」 に特有のテクニックですね。​​​​
​​​​​ さて、この巻後半、 ​68話​ から、 70話 、土佐に帰った 竜馬 が出会うのは アメリカ です。まだ出てきていませんが、この時代の 土佐 には、あの、 ジョン万次郎 がいるのですね。楽しみです。​​​​​
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最終更新日  2024.07.20 20:45:32
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