話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2021年02月17日
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前回に引き続き、20年近く前に書いたコラムです。今となっては、いろいろと突っ込みどころもありますが、自身の備忘録の意味も兼ねて掲載しておきます。

*********************
「ワインの保存」をテーマにすることの難しさを実感している。

この連載を始めてからというもの、読者の方々やワインを通して知り合った方、さらには日ごろの飲み友達などからも、ワインの保存やコンディションに関して、多くの意見やアドバイスをいただいた。

中には実験や検証の方法が非科学的で話にならないとか、テイスター(すなわち私自身)の資質に問題があるのではないかというような手厳しいご意見もあったが、多くはご自身の経験に照らし合わせて、確かにその通りだとか、いや、そんなはずはないとか、あるいは、もっとこういうことを試して欲しい、というものだった。

それらを聞いたり読んだりしていて、若干戸惑いを覚えたのは、保存やコンディションに関する認識にずいぶんと幅があるという事実だ。知り合いからの意見だけでも、ある方はセラーを使わずに夏場を越させるなど「論外」だと断ずる一方で、別の方はひと夏ぐらいセラーに置いておかなくても全く問題ないよと一笑に付す。しかも、どちらの御仁も私よりもずっと経験豊かな方だったりするのでややこしい。
まあ、前者については、ある意味、ワインに造詣の深い方々の定説というかマニアの本音を代表するものだと思うし、私自身、セラーの優位性や存在価値については疑問の余地はないと思っている。「セラーなし」を前提としたこの連載とはそもそもの出発点が違うということだ。

後者については、そもそも劣化に対する許容度とか、ワインのコンディションに対する考え方に温度差がある場合もあるのだろうが、私に意見を下さった方はむしろセラーに入れなかった場合の影響を経験的に把握した上で、1年程度なら最大公約数的な読者層が気づくほどの劣化には至らないという意味合いで言っていたように思う。たしかに、この先検証を進めていけば、そのような結論にたどり着くかもしれないし、あるいはそこまで楽観的にはなれないという結論になるかもしれない。この連載で行おうとしていることは、それをより客観的系統的に検証してみようということにほかならない。

いずれにしても、ここでもう一度この連載の主旨とスタンスを整理しておきたい。
この連載の出発点は 、「ひと夏かふた夏程度」、「緊急避難的」に、セラーを使わず、はたまた特殊な装置や設備に頼ることなく、手持ちのワインを保存しておくには、どのような方法がベストなのかを探ること である。

愛好家といえども高価でかさばるセラーをお持ちの方は少数派であろう。またお持ちの方とて、所有するワイン全てがセラーに収まっているとは限らない。家庭内で常温保存されているワインは相当の数にのぼるはずだ。
加えてもうひとつの出発点は、これまで様々な文献に書かれてきたことや、一般的に言われているワインの保存に関する事柄が、現在の実態にそぐわないのではないかと思われる部分がいくつもあることだ。これらを我々愛好家の視点から、現実に即して検証してみようということである。
ワインの入門書などでは(いや、入門書以外でも)、判で押したように、「北向きの押し入れに保存」と書いてあるが、現代の住宅事情はずいぶんと変わってきている。密閉度や断熱性は大幅に向上しているし、エアコンも飛躍的に普及した。 そもそも最近の住宅事情を鑑みると、洋間ばかりで「押し入れ」自体がないという家も多い。
他方で、地球温暖化により、今や夏の気温が35度を超えることも珍しくなくなり、エアコンを稼動させていない部屋は夏の日中、相当の高温になることを覚悟しなければならない。こうしたことを考えあわせると、押し入れや北向きの部屋にこだわるよりは、(直射日光にさえあたらなければ)むしろエアコン稼働率の高い居間などにおいたほうが結果は良好なのではないか。

ただし、リビングに置くというからには、エアコンのオンオフによる温度変化や、家を留守にしたときに高温にさらされるリスク、さらにたとえエアコンを効かせたとしても、セラーに比べればかなりの高温環境下におかれるであろうことなど、ワインにとって不利な要素がいくつかあることは否定できない。

では、補助的に冷蔵庫を利用したらどうだろうか?
ワインの世界では、冷蔵庫はワインの保存に適さないというのは半ば常識として語られている。その理由としては、いわく温度が低すぎるとか、コルクが乾燥するとか、振動がよくないとか、臭いが移るとか、といったことが挙げられている。しかし、本当にそうだろうか。最近の冷蔵庫はよく出来ていて、野菜室などは湿度も高めにキープできるし、温度も低めとはいえ7~8度位には固定できる。加えて振動もずいぶんと少なくなっている。そもそもひと夏、ふた夏程度の期間で臭いが移ったり振動の影響がでるものなのだろうかという本質的な疑問もある。冷蔵庫のリスクをすべて否定するつもりはないが、短期間の使用、すなわち、ふだんはリビングに置いておいて、夏場だけ適宜冷蔵庫に入れるといった用途であれば、冷蔵庫は便利なアイテムとして活用できるのではなかろうか。
こうした疑問について、「論より証拠」ではないが、実際にさまざまな環境にボトルを設置して検証してみよう、というのが創刊号の主旨だった。

■ 2号(前号)の結果
2号ではさっそく検証を実施、ブルゴーニュとボルドーそれぞれ以下の4種のボトルについて、半年経過時点、すなわちひと夏過ごした段階でテイスティングを行った。   
   1.エアコンの効いていない常温で保存したボトル(いわゆる押し入れ保存)
   2.冷蔵庫の通常のスペース(以下「通常室」と呼ぶ)で保存したボトル
   3.冷蔵庫の「野菜室」で保存したボトル
   4.セラー内で保存したボトル。
1~3の各条件のボトルを4のセラー保存した基準ボトルと比較した。

<結 果>

ブルゴーニュ(ミシェル・グロ/ニュイ・サン・ジュルジュ '99)

違いがある わずかに
違いがある
わずかにあるが気に
するレベルでない
ない
冷蔵庫
(通常室)
●● ●●● ●●
冷蔵庫
(野菜室)
●● ●●● ●●
常温保存
●●●●●●●


<ボルドー (シャトー・タルボ '99)>

違いがある わずかに
違いがある
わずかにあるが気に
するレベルでない
ない
冷蔵庫
(通常室)
●● ●●
冷蔵庫
(野菜室)
●● ●●●
常温保存
●●●●● ●●


※  はセラー保存より美味しい、と答えた回答

エアコンの効いていない常温の部屋での保存は、夏場の最高気温が35~36度まで上がったこともあり、顕著に熱劣化の様相を示していた。それに比べれば、冷蔵庫に保存していたボトル(正確には6~10月の4ヶ月冷蔵庫に保存し、11月からの1ヶ月半リビングに保存)は、一部で違いを指摘する声もあったが、セラー保存との違いを「ない」とした回答も2件ずつあったように、通常室、野菜室とも、概ね良好な状態を保っていた。

■ 今回のテーマは「リビング」
以上のような経過を踏まえた上での今回の検証である。
「夏以外の季節はリビングに置いておき、夏場は適宜冷蔵庫に避難させる」ことが、セラーを使わない保存方法の本命ではないかということは前にも述べた。前回の検証では、とりあえず「夏場冷蔵庫に保存しておくこと」に関して大きな問題はなさそうだということになったので、この号では次のステップとして、「夏場冷蔵庫に保存し、それ以降の季節はリビングで保存したボトル」を検証してみたい。実験の開始からすでに丸1年が経過している。今回の検証でセラー保存と大きな違いが見られないようなら、とりあえず本誌が提案した方法で1年は乗り切れたということになる。
なお、夏場冷蔵庫に保存したボトルについては、前回と同様、「通常室」に保存したボトルと「野菜室」で過ごしたボトルの両方を用意した。
前回の検証では、この二つの違いは全くといってよいほど見られなかったが、今回はいずれのボトルも冷蔵庫から取り出してから半年経過しており、当時感じられなかった小さな傷跡が大きな差となって現れている可能性もある。よって、今回もあえて「通常室」と「野菜室」の2パターンを取り上げることにしたのだ。

■ 通年でリビングに保存しておいた場合は?

さて、夏場にエアコンのない部屋に保存しておくのは避けたほうが良い。それは前回の検証で思い知らされた。夏場冷蔵庫に緊急避難させておくのはとりあえず有効らしい。それもわかった。では、その中間ぐらいのシチュエーション、すなわち冷蔵庫に頼ることなく、1年を通してエアコンの効いたリビングに保存しておいた場合はどうなのだろうか。今回、その検証のために、ずっとリビングに保存しておいたボトルを用意することにした。

まあ順当に予想すれば、「リビングに保存していたボトル」(以下「リビング保存」)の状態は、基準となる「1年中セラーに保存していた場合」より劣るのは致し方ないし、「夏場冷蔵庫に避難させて、その他の季節はリビングに保存していた場合」と比べても不利だと思われるが、おそらく「1年中常温で保存していた場合」よりはずっとまともな状態をキープしているのではなかろうか。
その場合、夏場もリビングに置かれていたボトルと、夏場だけ冷蔵庫に避難させたボトルとの違いは具体的にどの程度のものなのだろうか。日常飲むには問題ないようなレベルに収まっているのか、それとも許容しがたいような違いなのか。
この点が今回の検証におけるキーポイントだと言ってよい。
というのも、現実的な視点で考えたとき、たとえ夏場だけとはいえ、そうそう数多くのワインを冷蔵庫に避難させておくのは難しいと思われるからだ。おそらく一般の家庭では、冷蔵庫のキャパシティや家族とのあつれきなどから、ワインのために開放されるスペースはせいぜい5~6本分程度までではあるまいか。
したがって、夏場に冷蔵庫を使わなくても大きな違いがないというのであれば、高額なワインや大事にしているボトル以外はあえてリビングに置いておくという割り切りもまた「あり」だといえるわけだ。


■ 「リビング保存」は8月中旬以降
・・・ところが、ここで、痛恨の失態を犯してしまったことをお詫びしなければならない。
「リビング保存」のボトルを実際にリビングに設置したタイミングが、8月中旬にずれこんでしまったのだ(8月中旬まではセラーに保存)。【(編集部注)編集長徳丸が忙しさにかまけて、なんと設置をすっかり忘れていた・・】
「それじゃあ、ひと夏をリビングで過ごしたとは言えないじゃないか」
ごもっともである。まったく返す言葉もないのだが、ではこのボトルについては全く検証に値しないかというと、そうでもなさそうだ。というのも、昨年の気象をふりかえってみると、8月は言うに及ばず、9月、10月初旬に至るまで30度前後に気温が上がる日が続いたからだ。
ちなみに、日本気象協会のデータから昨年の東京地区の最高気温を調べてみると、
                   6月~10月末     8月16日~10月末
最高気温が25℃を超えた日       101日             58日
最高気温が30℃を超えた日        43日             17日

8月中旬以降25度を超えた日は6月から10月末までのおよそ半分。これでは、さすがに「ひと夏を過ごした」とは言えないが、「ひと夏の半分を過ごした」ぐらいは言えそうである。よって、「ひと夏を過ごしたボトル」の検証は、必要ならば次回以降改めて実施するとして、今回はとりあえず、「『半夏?』リビングで過ごしたボトルの状態を検証することとしたい。

■「リビング保存」の条件
ところで、リビングといっても、その使われ方は家族構成や生活スタイルによって千差万別なのは言うまでもない。特に問題となるのが、エアコンの稼働率であろうかと思う。夫婦共働きの家庭で、週末出かけがちであれば、条件的には「エアコンの稼動していない常温保存」と大差ないし、専業主婦や家人が常に在宅している家庭で、夏場に泊りがけの旅行もしないのであれば、かなりの時間エアコンが稼動していると考えられる。
今回、実験に利用したのは、なにを隠そう徳丸編集長宅(マンション)のリビングなのだが、その環境は以下のとおり。いろいろ想定される「リビング保存」の中では、エアコンの稼働率は低めのシチュエーションだといえそうだ。

●ボトルはリビングの直射日光の当たらない場所のキャビネットの中に設置。
 ●夫婦共働きのため、平日の日中はエアコンを切って出かけている。ただし、互いの勤   
務時間がずれていることから、エアコンが稼動しない時間は概ね平日11時半頃~19時までの7~8時間に収まっている。
●就寝時はエアコンを切っている。そのため夏場、夜間のリビングの温度は平均27度~28度程度になる。
●休日は留守がち。ただし、昨年の夏は本誌の編集作業が忙しかったので、長期旅行はしなかった。したがって連続的にエアコンがオフだった時間は最長でも24時間程度であろうとのこと。
●夏だけでなく、冬場の暖房用にもエアコンを使っている。
●エアコン稼動時のリビングの温度は夏場25度、冬場24度。エアコンを切ったときのリビングの温度は最高(夏場の日中)で32度。最低(冬場の夜間)で15度。

検証において問題となるのは、留守中30度前後、在宅中でも23~25度になる夏場の高温と、エアコンのオンオフによる温度変化だろう。たとえば、夏場の平日、リビングの温度は、昼=最高32度←→帰宅24~25度←→夜=27~28度という温度変化に見舞われていたわけで、これがどの程度香りや味わいに影響を及ぼしているかがポイントだ。なお、「夏場は冷蔵庫に保存して、それ以外の季節はリビングに保存」したボトルも同様に編集長宅のリビングに置かれていた。こちらは夏場は関係ないものの、真冬には、在宅時=24度、外出時=18~20度、就寝時=15~18度 という温度差をほぼ毎日経験していたということになるわけで、その影響があるのかないのか、気になるところである。

■ 今回検証するボトルと実験方法 改めて今回の検証について整理してみよう。設置の期間は2002年6月初めから2003年5月末までの1年間。テイスティングするボトルは、ボルドー、ブルゴーニュそれぞれについて、以下の4種類、計8本である。

1.セラーにずっと保存していたボトル
2.夏場(6月~9月末)冷蔵庫の通常室に保存し、以降はリビングに保存していたボトル3.     〃   冷蔵庫の野菜室             〃
4.8月中旬までセラー、8月中旬以降ずっとリビングに保存していたボトル

実験に用いた銘柄は前回同様、ボルドーはシャトー・タルボ '99、ブルゴーニュはニュイ・サン・ジュルジュ '99(ミシェル・グロ)。輸入元はラックコーポレーション、購入店は東急吉祥寺店。冷蔵庫は3ドアタイプで、通常室の温度は5度、湿度40%、野菜室の温度は8度、湿度60~70%。テイスティング方法は前回と同様、INAOのテイスティンググラスに上記の4種類を並べ、1番目のグラスを基準グラスとして、2番目以降のグラスの違いを見ていく。ただし、テイスティングの時点では、テイスター諸氏にはこれらがどのような条件で保存されていたボトルなのかは知らされていない。テイスティングは、ブルゴーニュ、ボルドーの順で、それぞれについて抜栓直後と30分後の2回ずつ行う。なお、当日の参加者は7名だった。

■ 集計結果ブルゴーニュ(ミシェル・グロ/ニュイ・サン・ジュルジュ '99)

違いがある わずかに
違いがある
わずかにあるが気に
するレベルでない
ない
冷蔵庫
(通常室)
●● ●●●●
冷蔵庫
(野菜室)
●●● ●●
リビング保存
●●●● ●●


ボルドー (シャトー・タルボ '99)

違いがある わずかに
違いがある
わずかにあるが気に
するレベルでない
ない
冷蔵庫
(通常室)
●●
●●●
冷蔵庫
(野菜室)
●●● ●●
リビング保存
●● ●●●

 ● は、基準グラスより美味しいと回答したケース

1.「ずっとリビングに保存していたボトル」
テイスター全員が、多かれ少なかれ、セラー保存のボトルとの違いを指摘。ボルドー、ブルゴーニュとも、「違いがある」「わずかにある」が過半数を占め、「違いがない」という回答はゼロだった。
違いの内容はおおむね以下のようなものが挙げられていた
●色調に熟成したニュアンスが見え始めている。
●汗っぽい香りやジビエ香が出ている。
●果実感がやや乏しく、味わいがフラット。
●焼けたような味わいや木質的な味わい。
●フィニッシュに苦みを伴う。イガイガ感がある。
ただし、テイスティング終了後のディスカッションにおいては、「前回のエアコンのない常温保存ほどの激しい変化ではない」「変化はあるが、こちらも十分美味しい」という声が優勢だった。

2.「夏場冷蔵庫保存、それ以降はリビングに保存のボトル」
こちらは、やや回答がバラついたが、「わずかにある」「わずかにあるが気にするほどではない」という回答が過半数を占め、はっきり「ある」という回答は一件もなかった。
違いの内容は、
●わずかに熟成した印象を感じる
●今飲むならこちらのほうがやや美味しいかもしれない
●わずかに酸が尖った印象がある。
●やや閉じ気味。
●かすかにアフターにエグミがある。
といったところ。全般に、セラー保存のものより、やや熟成した印象や尖った印象を感じるが、ボトル差といわれれば、ああそうかと納得してしまう程度の違いだった。

■ 結果をふりかえって
予想通り、「リビング保存」のボトルについては、前回行った常温保存のボトル(押し入れ保存)と、夏場冷蔵庫を利用したボトルとの中間位の変化におさまった。しかし、セラー保存していたボトルとの違いは(それほどネガティブな内容ではなかったにせよ)誰もがそれと判るレベルのものであり、少なくとも私個人の印象としては、検証前の予想より大きかったと言わざるをえない。しかも、今回の検証はひと夏まるまるではなくて、ひと夏の半分程度の期間なのだ。そう考えると、今回の条件のようなリビング、すなわち日中留守がちな環境においては、ひと夏が限界かな、という気がしてくる。個人的には、いみじくも、あるテイスターが言った「ショップで売られていても驚かないが、自分がお客に出すとしたらやや躊躇する」という発言が、これらのボトルの状態についての的を射た表現だと思った。「劣化」とまではいかないが、「変化」は明らかであり、これらのボトルが「99年のタルボ」「99年のグロのニュイ・サン・ジュルジュ」のスタンダードな姿を示しているとは言いづらいからだ。
ただ、繰り返しになるけれども、今回の検証にあたっては、リビングのエアコン稼働率がかなり低めだったという事情を大いに勘案しなければならないだろう。リビングの使用形態は各家庭によって大きく異なるわけで、特に専業主婦など常時家に人がいる家庭では、より良好な結果となることが予想される。いずれにしても、夏場常温で保存する(押し入れ保存)よりはエアコンが稼動している部屋で保存した方が良いということだけは、はっきりと言える。

次に、本命である「夏場冷蔵庫に保存してそれ以外の季節はリビングに保存」していたボトル。こちらは、通常室、野菜室を問わず、概ね良好な状態を保っており、とりあえず、セラーなしで1年間乗り切ったといってよいと思う。しかし、安心してばかりもいられない。今回の結果を前号の結果と比べてみると、前回4~5件あった「違いはない」という回答がそれぞれ1件ずつに減っており、軽微とはいえ、明らかに変化を指摘する回答が増えていることに気づく。
原因としては、夏場冷蔵庫に保存した影響が一年経過するうちに顕在化したか、もしくは、秋以降リビングで保存していた際の温度変化の影響があったかだと思われるが、おそらく前者の冷蔵庫の影響よりも、秋以降のリビング保存による温度変化の影響が大きかったのではあるまいか。というのも、前述のとおり、実験場所となったリビングでは、冬場もエアコンがフル稼動しており、そこに置かれたボトルたちは冬の間中めまぐるしい温度変化に見舞われていたからだ。
このことをどう評価すべきだろうか。頻繁な温度変化はやっぱりボトルに悪影響を与えるのだ、という見方も出来るかもしれないが、逆に、高温にさえならなければ、温度変化の影響というのはこの程度のものだ、ということもできる。今回の検証結果は、まさにどちらでもとれるレベルだけに難しいところだ。ただし、この兆候は今後の「ワインの保存」の考え方に大きな意味を持ってくる可能性がある。というのも、この先さらに半年一年と検証を継続していく中で、温度変化の影響が否定のしようがないほど顕著になった場合には、「冬場はエアコンの稼動しているリビングを避けて、温度変化の少ない北向きの納戸やクローゼット、押し入れのようなところに保存した方がよいのでは?」という風に、当初の仮説そのものを見なおす必要が出てくるからだ。

ということで、温度変化の影響については、次号以降でも引き続き重点的にウオッチングしていくことにしたい。なお、「通常室」「野菜室」の違いについては、今回もハッキリとした違いは見られなかった。こちらの検証のためには、もっと長期間、冷蔵庫のそれぞれの部屋に保存したボトルを検証する必要がありそうだ。

■次回のテーマ
さて、次回以降のテーマは、発刊予定との兼ね合いにもなるのだが、しかるべきタイミングできっちりと、今まで登場していない「1年中冷蔵庫に入れておいたボトル」を取り上げたいと思う。冷蔵庫の温度はやや低温すぎるとはいえ、ワインにとって最も危険な要素である高温のリスクは皆無であり、温度変化も少ない。しかしその一方で、振動や雑臭が移るという別のリスクが存在する。「一年中冷蔵庫に入れておく」ということは、一般家庭にとってはかなり負担であり、本数的にも通常はあまり収容できないことから、「あふれたワインの緊急避難」的な用途への最終回答とはなりにくいが、結果如何によっては、これぞという一本は、ずっと冷蔵庫に入れておくべきだ、という結論になるかもしれない。
そしてもうひとつは、引き続き粛々と「リビング+冷蔵庫」を継続してウオッチングしていくことだろう。とりあえず1年間の保存は合格と言えるレベルにおさまったが、1年半、2年となるとどうだろうか?今回の検証でわずかに見られた、冬場の温度変化によると思われる兆候が、今後どのように推移するのか、気になるところである。これらを重点的に検証していくとともに、創刊号で列記したうち、まだ取り上げていない項目についても随時取り上げていきたいと思う。

それにしても、ここまで2度目の検証を終えて、ひとつだけ、心からほっとしていることがある。それは、今までテイスティングしたワインの中にブショネや明らかなダメージワインがまだ一本も見られないことだ。まあ、ブショネについては、比率から言えばそろそろ出てきそうなイヤな予感もするのだが・・・。 






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Last updated  2021年02月17日 19時00分06秒
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