話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2021年05月04日
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これは比較的近年の記事です。今、読み返してみると、ちょっと内容がネガティブにフレすぎていますね。今さらながら、ワイン雑誌に書くような内容ではなかったですね。今はもっと気楽に、肩の力を抜いて楽しめればそれでいいと思っています。

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「生きがい」という言葉を最近よく目にしたり耳にしたりします。
本格的な高齢化社会が到来して、60歳もしくは65歳で多くの勤め人は定年となりますが、日本人の平均寿命が80年を越える今、そこから数十年間の人生をどう生きていくか。経済的な課題とともに、精神面の課題、すなわち、それまで仕事に子育てにと邁進してきた人たちが、引退後に何を生き甲斐にしていくのかということがクローズアップされているわけです。
多くのコラムやエッセイで、「心の支えとなるような趣味を持つこと」が推奨されています。ああ、そういうことなら、と読者の多くの方は思うでしょう。「自分にはワインという趣味があるから、その心配は無用だ。」と。
私も長らくそう思っていました。
しかし、最近「ワインは、老後の心の支えとなる趣味にはなりえないのではないか」と、半ば自虐的に考えるようになりました。今回はそう思い至るようになった理由をつらつらと書きたいと思います。

*これまでのワインとのつながり
30代前半あたりからワインに凝り始め、多くの時間とカネと労力を注ぎ込んできました。当時は仕事のプッシャーがキツく、残業も今とは比べ物にならないほどこなしていましたが、余暇の時間にひたすらワインにのめり込むことで、結果的にオンオフを上手く切り替えられました。

その後、2002年に上の子、03年に下の子が生まれてからというもの、ワイン会やテイスティングなどへの参加頻度は激減し、子育てや家庭生活とワインをどう両立させるかが大きなテーマになりました。一方で、子どもの生まれ年のワインを収集したり、記念日に少し贅沢なワインを開けたりと、それまでとは異なった愉しみも生まれました。
40代前半は職場環境に恵まれず、ストレスから鬱状態になりかけたこともありました。そんな時に、最終的に私の心の均衡を保ってくれたのはワインという趣味でした。この点、あらためてワインと出会えて本当に良かったと思います。
その一方で、酒量が増え始めたのもこの頃からでした。そもそもワインに凝り出したころの私はボトル半分も飲めませんでした。それがだんだんと酒量が増え、40代半ば以降は晩酌でボトル一本開けることも珍しくなくなりました。純粋にワインを愉しむということ以上に、気づけば日常のストレスから逃れるための手段としてワインを毎晩飲むようになっていたという側面は否定できません。

*健康面の問題→健康酒といっても所詮は…?
そんなわけで、多分に自業自得的な側面もあるのですが、ワインを引退後の趣味の柱に据えることを躊躇うようになった最大の理由は「健康問題」です。
「酒は百薬の長」とも言われますが、同時に「命を削るカンナ」であるとも言われます。
γ-GTPや血糖値、コレステロールその他の健康指標、あるいは持病との兼ね合い。いかにしてこうした問題と折り合いをつけていくか。私の場合、先に挙げた血液指標以外に経過観察を続けなければならない懸案事項があって、それが心に重くのしかかっています。経過次第では、想像以上に早いタイミングで、ワインライフに終止符を打たねばならなくなる可能性もあります。
 そもそも「フレンチパラドックス」という言葉に代表されるように、ワインは健康によい酒ではなかったのか?いやいや、それはあくまで「適量を守る限り」であって、では適量とはどの程度かといえば、おおむね「グラス2杯程度」、ボトルでいえば三分の一ぐらいまでというところだそうです。
残念ながら、当誌の読者でこの量を守れる方はあまり多くないのではないでしょうか。私も前述のとおり、晩酌では最低でもボトル半分、ワイン会になれば、ボトル1本分ぐらいは開けてしまいます。つまみには脂っこい料理や食品を摂取しがちだし、ワイン会などでコース料理を頼むとそれだけで一日分以上のカロリーを消費します。それらのツケが回ってきたのかなと思っています。
結局のところ、この先ワインを趣味の柱に据えようとすれば、まさに「命を削るカンナ」であることを実感しながら飲みつづけるか、あるいは「一日グラス二杯+定期的な休肝日取得」という(今の私にとっては)ひどく禁欲的な飲み方をしなければならないということになります。
さらに健康が悪化して、ワインを飲めない体になってしまったらどうでしょうか。仕事や子育てに追われている今のうちはまだよいけれども、それらが一段落したときに、果たしてポッカリと空いた心の穴を埋めてくれるものがあるのでしょうか。これが最近、自分がワイン以外の趣味に比重を移そうとしている大きな理由です。


健康との向き合いを抜きにしても、ワインという趣味は、いろいろな面で老後の趣味の柱に据えるにはふさわしくないのでないかと思いはじめています。
 まず、向き合わなければならないのは経済的な問題です。
我が家は家族四人。妻は専業主婦で、子ども二人はまだ学生、住宅ローンの残債を抱えるニッポンの典型的なサラリーマン家庭です。子育てについての手間はあまりかからなくなった一方で、教育費の負担が重くなって、今やワインにかけられる費用は独身や共働き時代の数分の一程度になってしまいました。また、50歳を越えて、勤め人としての終着点もおぼろげに見えてきました。一線を退いた後は、収入も大幅に減って、高騰した著名生産者のワインを揃えるような経済的な余力はもはやなさそうです。
 もっとも、経済的な事情については、個々の置かれた状況があまりに違いすぎるので、十把一絡げに扱うのは難しいかもしれません。自由業や自営業の方の場合は定年など関係ないでしょうし、資産家だったりDINKSだったり独身だったりで、ワインに潤沢に資金を投下できる方もいることでしょう(そもそもワイン愛好家というのはそういう方が多いように見受けます)。
また、この問題は、私が主に「ブルゴーニュ中心の」ワインライフを続けていることによるもので、たとえば「旨安ワイン」探しに集中するとか、発展著しい国産ワインに宗旨替えする、というように、今と違った形でワインとの関わりを持ち続けるということは可能でしょう。


コレクターの方々から見れば大した本数ではありませんが、我が家には飲み頃でないボトルやワイン会持参用のボトルなど、自宅のセラーとレンタルセラーとあわせておよそ400本のワインがあります。
ところが最近は、生来の貧乏性が災いして、セラーのボトルを自宅で日常的に消費するのが惜しくなってきました。といって、ワイン会への参加頻度も減っている今、セラーのワインを消費する機会はますます限られています。一方で、日常消費用のワインは常に枯渇気味なので、結果としてセラー内のボトルに触れることなく、デイリーワインだけを常に買い足し続けるという、なんとも本末転倒な構図になっています。
今はともかく、将来収入が減ってもこんな形で寺田のレンタルセラー代を払い続けていくのはさすがにナンセンスな気がします。そもそも、私がポックリと逝ってしまったらどうなるのでしょうか。カミサンはワインのことなど何もわからないし、子どもはまだ10代です。セラーのストックは、きっとどこかの買取屋に安く買いたたかれて処分されるのがオチでしょう。(いずれこのような形で、国内でも「元」愛好家が収集したバックビンテージのストックが出回ると予言しておきます。)
そう思うと、手持ちのワインに関しては、あまり躊躇せずにさっさと開けるなり処分するなりして、身軽になった方が、家族に余計な負担や心配をかけずにすみそうです。以前はセラーのワインの心配といえば、地震などの災害や停電への対策ばかり考えていましたが、最近はそんなことを考えるようになりました。

*交友関係の問題→交流の輪はもはや広がらない?
これまでワイン会やブログなどを通じて、職場の同僚や学生時代の友人とは違った、多くの方々と交流をもつことができました。しかし、最近はみな多忙だったり、健康を害したり、音信不通になってしまったりで、築いてきた交友関係は停滞気味です。
十数年続けているホームページにしても、コメント欄などから想像するに、読者は初期のころとはガラリと変わってしまったようです。
 私自身、年とともに保守的になってきたのか、知らない方ばかりのワイン会に参加することは正直億劫に感じますし、貴重なワインや高価なワイン飲みたさに、生活レベルの違う方々と無理してご一緒しても楽しいと思えなくなってきました。ネット上でも、(他の方のブログやHPは定期的に巡回しているものの)コメントを残したりコミュニティに参加するといったことはめったにしなくなりました。
 そう考えると、私の場合、老後のワインを通じた交友関係は、過去に知り合った親密な友人たちと同窓会的に会う程度に留まるような気がします。それすらお互いワインを飲み続けられる健康体であることが前提となる話です。

*ワインを学ぶモチベーションの問題 →老後も研鑽を積む意味はあるのか?
ワインに対して求道的な姿勢を貫き、日々研鑽を積んでいる方々を揶揄する気は毛頭ありません。私自身も99年にワインエキスパート、07年にシニアワインエキスパートを取得するなど、それなりに体系的に学んできたという自負はあります。テイスティングの勉強会などにも足繁く通いました。
しかし、業界人でもなく、将来的にもプロをめざしているわけでもない私が、この先、ワインについての研鑽を積み続ける必要があるかといえば、その理由を見いだせなくなっています。ワインについて学んだり知識を深めることに何となくしらけてしまった、というところでしょうか。よく「ワインの上級者」とか「中級者」という言葉を見かけますが、本質的に人を酩酊させるためのアルコール飲料であるワインに上級・中級・初級といった区分けが必要なのだろうか、品種や醸造、コンディションなどに関する基礎知識は無いよりはあったほうがよいけれども、あとは飲み手と対象との向き合いだけで十分なのではないのだろうか。自宅でひとりで杯を傾けることが多くなったせいか、最近はそんな醒めた見方をするようになりました。

*では老後にふさわしい趣味は?
私自身は、そこそこ多趣味な方だと思います。ワイン以外では、クラシック音楽鑑賞、アクアリウム(熱帯魚、金魚)などを長年続けていますし、最近おざなりになっていますが、写真や絵画鑑賞に凝っていた時期もありました。学生時代はスキー、独身時代は海外旅行に入れ込んでいましたた。ただ、いずれも今となっては「暇つぶし」にはなっても、「打ち込む」というほどのものではありません。
 以下は、とある趣味のサイトで検索した「中高年者向けのおすすめの趣味」です。
登山、ウォーキング、読書、刺繍、ボウリング、チェス、ゴルフ、家庭菜園、デッサン、歴史(史学)、将棋、囲碁、盆栽、書道、油絵、ガーデニング、お菓子作り、活花、ゲートボール、バイク、写真、サイクリング、神社仏閣めぐり、登山、温泉めぐり、パソコン、武道、映画鑑賞、語学、エクササイズ、ヨガ、水泳、ダイビング、DIY、楽器、ボランティア、旅行、釣り、料理、コーヒー、紅茶、食べ歩き、パン作り、漬物つくり、ハーブ栽培、手打ちソバ、バーめぐり…

私の実家の母親は長い事「書道」をやっていて、香典袋などを母に代筆してもらうことがあります。これなどは実益をかねた良い趣味だと思います。
私の上司は「家庭菜園」に凝っているそうです。私自身も、アクアリウムやガーデニングを通じて、経験的に土や水をいじることはよいストレス解消になることを実感しています。ボケ防止を兼ねてあらためて「語学」に打ち込むのもいいかもしれません。「料理」を趣味にして、自ら健康食を極めるというのもありでしょう。
考え出すといろいろと面白そうだったり、奥の深そうな趣味の候補はありますが、とはいえ、老後の趣味というのは、カタログギフトの商品をチョイスするようにあれにしようこれにしようと選んで決める類のものでもない気がします。それに、自分の中で、今まで積み重ねてきたワインにとって代わるポジションを得るには相応の年月や経験も必要でしょう。やはり私のように骨の髄までワインに浸かってしまった愛好家は、いきなりワインを切り捨てるのでなく、ワインを軸に趣味の幅を広げていくというのというのが現実的で自然な姿なのかもしれません。たとえば、以下のようなことならあまり抵抗なく始められそうです。

・旅行とのコラボ
今年の夏は家族で長野や飛騨高山をクルマで観光しましたが、せっかくなら小布施ワイナリーなどを見学すればよかったなと悔やんでいます。発展著しい国内の生産者を見学して回りながら、近隣の名所旧跡などを観光をするのは、家族サービスとも両立する良いアイデアかもしれません。ただ、クルマだと試飲できなくなるのが問題ですね。
・ガーデニングとのコラボ
我が家でも中央葡萄酒のワインを買ったときにオマケでいただいた穂木が、玄関のプランターで毎年葉を茂らせています。場所などの問題はありますが、自宅でもっと本格的にブドウ栽培をしたり、日ごろ香りの表現に使うハーブや草花を実際に栽培してみる、なんていうのも面白いかもしれません。
・文筆活動とのコラボ
長年ホームページやブログを続けてきましたが、最近は多忙にかまけて、飲んだワインの記録をやっつけでアップするだけになっています。おまけに酔っぱらって書くので、文章や「てにをは」が目茶目茶です。時間的な余裕ができれば、ワイン関連情報を軸に情報発信のバリエーションを広げたり、ホームページのクオリティを上げることもできそうです。
・語学学習とのコラボ
かれこれ10年以上欧州には行っていませんが、いつの日かドメーヌやシャトーめぐりをする時のために、フランス語や英語を一から勉強する、というのもありでしょう。海外に行く機会がなかったとしても、「クールジャパン」が喧伝される昨今、外国人観光客のためのボランディアなどに役立つかもしれません。
・教育・啓蒙活動とのコラボ
ややおこがましいのですが、たとえばボランティアやちょっとしたカルチャースクールの場などで、ワインのことを全く知らない人たち(愛好家ではなく)にワインの魅力を教えるぐらいなら、少し背伸びをすれば私にもできそうです。もちろんそのためには、自分があらためて学びなおさねばならなくなりますが、それが前に書いた「知識欲の問題・モチベーションの問題」への回答にもなるのではないかという気もします。

今回のコラムはなんともとりとめのない内容になってしまいました。結局のところどうなのよ、と言われると何のオチもないのですが、とりあえず、今のうちから、少しずつ視野を広げていろいろとトライしてみようと思います。駄文におつきあいいただき、ありがとうございました。





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Last updated  2021年05月04日 20時06分40秒
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shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…
shuz1127 @ Re[1]:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) maki5417さんへ コメントありがとうござ…
maki5417 @ Re:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) スパゲッティーは、材料費が安くお店にと…
shuz1127 @ Re[1]:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) Henryさんへ なんと、そうだったんですか…
Henry@ Re:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) アスリート食堂は、昨年8月に親会社(バル…
shuz@ Re[1]:2024年あけましておめでとうございます(01/01) Sugar7さんへ 本年もよろしくお願いしま…
成山裕治@ Re[1]:柴又帝釈天~その2(12/30) ダイアパレスさんへ

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