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「あるキング」伊坂幸太郎
天才が同時代、同空間に存在する時、周りの人間に何をもたらすのか?
野球選手になるべく運命づけられたある天才の物語。
山田王求はプロ野球仙醍キングスの熱烈ファンの両親のもとで、生まれた時から野球選手になるべく育てられ、とてつもない才能と力が備わった凄い選手になった。
王求の生まれる瞬間から、幼児期、少年期、青年期のそれぞれのストーリーが、王求の周囲の者によって語られる。
わくわくしつつ、ちょっぴり痛い、とっておきの物語。
王になるべく生まれてきた男・王求(おうく)。
彼の王たる野球人生が、ギリシャ悲劇と「マクベス」の趣で描かれます。
つまり、終始ギリシャ悲劇みたいな宿命論的視点で描かれ、「マクベス」の3魔女が何かと登場し、迷惑なまでに不吉な予言を撒き散らすのです。
やたらに長い「オデッセイヤ」などを読む必要はないと思うけど、「マクベス」は未読であるなら、読んでから本書に向かう方が楽しめると思われます。
「マクベス」のストーリーすら知らなかったうちの夫は、パロディーだったことも気付かず展開の唐突さに「??」だったようです。
王は王ゆえに孤独。
それは、唯一無二の存在は、だれとも何かを分かち合うことはできないから。
王は王の定められた人生を歩むだけで、そこには、何の喜怒哀楽も感慨もない。
また、人は天賦の才能を切望するものだけど、実際にその天才に出会ってしまったら?
王を求める民衆なら、問題はない。
だが、王を目指していた者が、生まれながらの王に出会ってしまったなら?
天才として生まれることが果たして幸せなのかどうか、そんなことも考えさせられます。
従来の伊坂作品とはテイストが違うけど、これはこれで結構好きです。
読了日:01月05日
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