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「事案の概要」
Aは、自筆証書による遺言を行い、X弁護士を遺言執行者に指定した。遺言の内容は、Aの子どもであるBに5分の1、同じく子どもであるC、Dに各5分の2を相続させる等の内容である。Aは、平成23年4月に死亡し、BCD以外の相続人の内3名は、相続を放棄した。
Aは、Y銀行に普通預金口座を有しており、372万円余の残高があった。Xは、Yに対して遺言執行者として本件預金の払い戻しを請求したが、Yが相続届への相続人全員の捺印を求める等して、これを拒否した。
XがYに対し、第1次的に、本件払い戻しの拒否が不法行為に当たると主張し、損害賠償、第2次的に、本件預金の払い戻しを請求したのが本件訴訟である。
「判旨」
債務者が債権者からの支払請求に応じるか否かは、債務の存否及びその確実性、任意の履行に応じた場合の事実上の不利益等の諸事情を考慮して判断するものであり、法は、その不履行によって生じた損害については債務不履行責任により債権者を救済することを予定しているところ、特に金銭債務は民法419条に照らし、その履行拒絶が不法行為に該当するといえるためには、履行拒絶自体が公序良俗に違反するとみるべき事情が存するなどの高度の違法性が認められる例外的な場合に限られるとしたこと、本件の諸事情によると、金融機関が遺言執行者からの払戻請求に慎重に臨み、事案に応じて相続人の全部又は一部の意思確認を求めることにも一定の合理性が見出せること等を判示し、本件のYの対応が債務不履行と評価されることがあり得るとしても、直ちに不法行為としての違法性を有するとはいえないとして不法行為責任を否定した。
判例時報2147号66頁
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