青森の弁護士 自己破産 個人再生 

青森の弁護士 自己破産 個人再生 

2012.12.27
XML
カテゴリ: 商事
非上場会社における自己株式の処分について、著しく不公正な価額によって行われたものではないとして、取締役らの損害賠償責任等が否定された事例

非上場会社における第三者割当による新株発行について、旧商法280条の2第2項所定の有利発行に関する株主総会の特別決議を経ないで行われた法令違反があるとして、取締役らに公正な価額と発行価額との差額を賠償する責任があるとされた事例(東京地裁 平成24年3月15日判決)

「事案の概要」

補助参加人の株主である原告が、<1>補助参加人が平成15年11月に被告Aに対して自己株式を1株1500円で譲渡したこと(本件自己株式処分)及び<2>補助参加人が平成16年3月に被告らを割当先に含む第三者割当の方法により1株1500円の発行価額で新株発行を行ったこと(本件新株発行)に関して、著しく不公正な価額により行われたものであり、取締役である被告らには「特に有利な価額」による発行に必要な手続を経ていない法令違反等があると主張して、被告らに対し、旧商法280条の11に基づく通謀引受人の責任ないし同法266条1項5号に基づく損害賠償として、公正な価額であると主張する金額(1株3万2254円)から上記金額(1株1500円)を控除して算出した22億5171万5618円等を支払うよう求めた株主代表訴訟である。

「判旨」

本件自己株式処分について

補助参加人の株式は、役員や社員持株等の関係者の間で、1株当たり1500円で取引されていたものである上、本件自己株式処分は、実質的には、補助参加人が同族会社認定を受けることを回避するために被告Aから取得した株式の買い戻しにすぎず、取得から処分まで僅か1年程度しか経過していないこと等に照らすと、本件自己株式処分における公正な価額としては、過去の類似取引における取引価格ともいい得る、補助参加人の取得時における取得価額と同額の1株当たり1500円とするのが相当であり、本件自己株式処分が著しく不公正な価額によって行われたものであるということはできない。

本件新株発行について

本件新株発行に当たっては、専門家による株式価値の算定は行われていないが、補助参加人は、補助参加人は、平成12年5月、監査法人が類似業種比準方式、純資産方式、配当還元方式を基礎に算定した株式価値の算定結果基づき、行使価格を1万円とする新株引受権付社債を発行し、平成18年3月には、時価純資産額を基礎として、発行価額及び行使価格を1株当たり900円(株式分割前の9000円相当)とする新株及び新株予約権を発行したことからすると、補助参加人の株式は、少なくとも、平成12年5月時点では1株当たり1万円程度、平成18年3月時点では1株当たり9000円程度の株式価値を有していたというべきである。

補助参加人の財務状況は、平成12年度以降悪化し、平成13年度を底として平成14年度にはやや上向き、平成15年度以降、順調に改善していくという経過をたどったものであり、本件新株発行が行われた平成16年3月当時の株式価値は平成12年5月当時の株式価値を大きく下回ることはないとみるのが相当である。

補助参加人から提出されたDCF法による平成14年度の実績値を基礎とする株価算定結果について、本来加算すべき遊休資産の価値を加算し、平成14年度の有利子負債ではなく、平成15年度の有利子負債を控除するという修正を施すと、平成16年3月時点の株式価値は7987円と算定されること等を考慮すると、本件新株発行における公正な価格は、少なくとも1株当たり7000円を下らないというべきであり、本件新株発行は、著しく不公正な発行価額であるというべきである。

判例タイムズ1380号170頁






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.12.27 14:11:59


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: